ドクターのちょーヤバな副作用。
さて、やってまいりました。
最初のダンジョン!
ここは、ドクターが担当したダンジョンで、
と、その前に、復習しておきましょう。
担当者と、ダンジョンの特徴を!
『ドクター』
洞窟迷路型の、探索系ダンジョン。
モンスターもトラップも配備しない。
アイテムを集めて出口に設置するだけ。
ただし、クリアアイテムは圧縮金属によって、限りなく重く硬くした、厚み5m mの10000ピースパズル。
1ピースの大きさは1cm、1kg。
模様のないパズルで、総重量は10トン
迷路を探索し、ピースを見つけてルートを進んでいく。
ルートは、時間によって変化していく自立型。
自立型の迷路が自在に姿を変えるので、同じ場所にあるとは限らない、埋まる可能性もある。
出口までたどり着いたら、褒美(?)として、ドクターとのバトルができる。
勝ったらクリア。
「最初の1kmは、何もないように言ってあるんだ」
とドクターは言います。
つまり、入り口からは、どんなダンジョンかはわからないと言う事。
最初に自分のダンジョンを選んだのは、1番進みやすく、話しやすいから…だそうです。
つまりはおまけ。
本題は別にあるようです。
「俺の視力なんだが…見える物が変わってきたんだ」
「…といいますと?」
「元素が見えない…魔力は見える…悪意も見える…人の殺意も死期も見える」
「は?」
いったい、どういう事でしょう??
「各世界で封印された、魔王や死神、邪神などは、普通なら、その世界で封印術を施され、ひと目につかないようにするのが一般的なんだよ」
「は、はぁ…言ってる事は理解出来ますが…」
「でな?次元牢獄や無限牢獄に封印される輩は、現世での封印では手がつけられないから、別次元に封印されるわけだ」
いつになく饒舌なドクター。
しかも、ネタの類も、おかしなテンションもなく…です。
普段なら、悪ふざけをしているか、研究や実験が成功して、上機嫌な時にしか饒舌にはなりません。
ドクター曰く、
そのように次元に封印された個体は、例外なく『上級種』であり、放っておけば、単体で世界を破滅させるほどの力がある
のだそうです。
「試しにな…俺の『死神メス』で、この世界の死神を切ったら、瞬殺できた…俺の取り込んだ死神も、そのカマを加工して作ったメスも、かなり上位の物だったわけだ」
なんと!
つまり、地獄送りになっているすべての物は、現世では捕える事も、封印する事も出来ない《《代物ばかり》》だという事。
「でだ…その副作用が目にきた」
「は?」
「あえて名付けるなら『死眼』、任意で見た物を殺せる右目」
「へ?」
「俺の右目が疼くぅー!とかは、やらないけどな…ハッハッハ!」
あー!
冗談を言えるぐらいには余裕なんですねっ!
☆☆☆
「そして、左目が『邪眼』、邪神を取り込んで発症した」
「発症とは?」
「だから、副作用なんだって…」
「………」
ドクターの計算では、能力に反映されるはずが、目に副作用が出てしまったために、本来の手術ができなくなってしまったと言います。
大気中の元素を見極めて、大気毎切り裂いていたのが、悪意や邪念、殺意や死期が見えるようになってしまったため、今までのような判別が出来なくなってしまった。
手術中も、その人の『死期』や、怪我をさせられた相手に対しての恨み…つまり、邪念が見えてしまうために、視界が邪魔され、施術が遅れ気味になってしまうとの事。
「………」
確かに、とんでもない副作用です。
「でな?それだけに留まらず、死んだらええねん!って奴の魂を喰らうようになった」
「は?ドクターは医者ですよね?魂は輪廻に返すのが信念ですよね?」
「たから、副作用なんだって…」
こ、これは不味いのでは??
「ただな…俺が医者であると自覚しているうちは、助けたいと思う人の『死期』まで喰らうようになった」
「つまり?」
「瀕死の状態でも死なないから、呼吸が止まろうが、心臓が止まろうが、手術が終わって助かるレベルになるまで、手遅れになる事はない」
「すごいですね!それ!」
「いやいや、今まで瀕死の人でも、手遅れになる前に手術は成功させてきたからな?」
「あ、そうでしたね」
これは、ある意味、よし悪しがあるだけで、案外、副作用とは言えないのでは?
「人の殺意や死期を喰らう目に、人の悪意や邪念を喰らう目…それが、頻繁に蓄積されていく、とんでもない副作用が出たもんだ…」ボソッ
は?今なんて??
「ドクター?もし、ドクター自身が、医者であるという自覚がなくなったら?」
「え?それ、俺に言わすの?だいたい想像できるだろ?」
「殺人鬼と化す…とか?」
「なわきゃねーだろ?ハッハッハ!」
「へ?」
「答えは、『神に近くなる』だ」
「は?」
「死期を喰らうから、どんな人でも死なない体にしてしまう…まぁ、魂はその場で喰らってしまうから、アンデットだな…他から魂を持ってこないと蘇生させられない!そして、殺意や悪意を喰らうから、世の中から悪人が消える!」
「………」
「これを、制御できないと、とんでもない事になる」
「でしょうね…」
霊魂の切除、縫合ができなければ、蘇生はできません。
仮に、漂う魂を繋いだとしても、まったくの別人になってしまう。
「せめて、殺意や悪意を持った魂を、任意で取り込めるようにしなきゃだわ…」
「その実験はしてないんですか?」
「え?ちょっとだけやったよ?魔の森で…」
実験対象は、凶暴な虎。
キバを使わず、常に爪だけで攻撃してくる、ある意味『格闘系』の虎。
その虎の殺意と悪意を取り込み、穏和にしてから脳を開き、人体構造と任務を記憶に植え込んだ。
その後、爪をチタン合金のメスに変えて、解体専門の虎に仕上げた…らしい。
(それって…まさか!)
カイタイガー!!
私の予想通りの『解体ガー』!!
やっぱり、改造してたんだ!!
☆☆☆
「俺な…死神と邪神を取り込んで、考えが変わったとこがあるんだよ」
カイタイガーは無視ですか?
「悪人は、死ねばいいと思うようになった」
「へ?悪人は、地獄送りにするんじゃなかったんですか?」
「地獄も、手一杯なんだよ…悪人が多すぎて…だから、攻めてきた軍隊は解体して素材にしたし、魂は俺が喰らった」
「えと…国そのものを切除したって言ってましたよね?残りは?」
「全員、仕分けして、6ケ国に配分した…魂だけな…」
ドクターは、目の前にいない魂までは喰らう事が出来ないと言います。
つまり、何万人居たかは知りませんが、体は素材に、魂は6ヶ国に分配した…という事になります。
もちろん、罪もない人、生まれたての赤ちゃんなどは、記憶を消して、そのまま《《住人》》として迎え入れたとの事。
そのための『土地拡大』であり、支配されない住処の確保だったようです。
私はまだ見ておりませんが、広げた土地には、すでに建物が立ち並び、誰1人として、路頭に迷う事なく、生活ができるように段取りしているとの事。
「訓練はいるだろうけど、悪意や殺意、取り込んだ魂を、発射できるようになったら、俺の自我も保たれて助かるんだけどな」
とか言ってます。
それは、裏を返せば、いずれ《《自我をなくす》》おそれがあると言う事。
そうなった場合、誰が止めるの?
え?
もしかして、私??
うそん!!




