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ドクターの辞書に自重という文字はない 4

「よし!やるぞ!!」


復活のドクター!

と、どこかのサブタイトルみたいな雰囲気からスタートしてみました。


さて、何をするのでしょうか?

私は、すでに観客化しております。


ドクターが言っていた、《《外科医の本気》》が微塵も感じられないからです。


「腕や足が切断された時、短時間であれば、神経すら繋ぎ合わせて、復元は可能だ」

「はい」

あれ?医者《《みたい》》な事を言い出しましたよ?


「しかし、その断面を焼いてしまえば、良い意味で止血となるが、復元は限りなく不可能になる」

「あ、はい…まぁ…」


「という効果が、この『死神メス』にはある!このメスで切り取った魂は、繋ぎ合わせられないんだ…つまり、蘇生は不可能!」

「なるほど!」

ドクターが、恐ろしく物騒な代物を手にしているのは、良く伝わってきましたよ!


「で?そのメスで何をなさるおつもりで?」

「切除手術…この森は、地獄における癌のような物…腫瘍を取り除かないと、取り返しのつかない事になる!」


って、正義感満載で語っておりますが、これを次元牢獄から解き放したのは、ドクターですからねっ!!


「亜空間次元ごと切除する!うなれ!死神メス!!」


ズッバァァァーーーン!!


何やら変なポーズをつけ、技名っぽく何かを叫んでおりますが、特に意味もクソもありません。

ただ、メスの名前を叫んだだけです。

お間違いなく…。


しかし、その叫びに合わせて、魔の森が空中に浮かんだのには驚きました。


更に、森の樹々から伸びている根っこ…ウネウネ動いてて、めっちゃ気持ち悪いです。


25000坪…間近で見たら、結構な大きさです。


そして、そんな大きさに匹敵する、ところ狭しと、地中からはみ出てウネウネする根っこが気持ち悪い!

間違いなく、この森自体がモンスターです!


(どこの世界のモンスターかしら?)

ってなります。


こんなものが、もし、地球に出現したら、凶暴なモンスターを生み出す、『森型モンスター(仮)』に、人類はなす術なく滅ぼされるでしょう。


ドクターが、《《地球を見限ってくれて》》本当に助かったと安堵したのは、言うまでもありません。


ドクターの目的は、ほんの少しでも、森型モンスターの欠片を残さずに切除する事。


「これで、空間ごと《《捕縛》》完了だ」

「あのぉ…外科医の本気は?」

「え?今、切除《《手術》》見てたよな?地獄の病巣を、まるっと切除したんだ、これが外科医の仕事でなくて、何に見えるんだ??これだけの病巣を一片の欠片も残さず、切除するには、本気で挑まなきゃ無理だ…な?納得できたか?」

「あ、はい」


切除というより、『掘り起こし作業』、つまり、土木作業に見えたのは納得しました。


☆☆☆


「で、この物騒なモンスターを、どうするんですか?」

「魔王領で飼う」

「は?」

「いや、こいつ、植物じゃねーから、植え直すとか、おかしいだろ?」

「いやいやいやいや!おかしいのはドクターです!!言い方なんか問題じゃありません!!」

何言ってんの!この人!!

「ん?」

ドクターは首を傾げ、私が何を言わんとしているのか、まったく理解している様子がありません。


「いや、冗談だよ…」

「ですよね…」

「根が繁殖して、世界を飲み込まないようにしたら問題ないだろ?」

わ、分かってない!何も!!


ドクターは続けます。


魔族領の敷地の地下に、『死神結界』を張り巡らすと。

そして、魔族領全土には、『死神結界』に『アンチ死神結界』を重ねがけし、入れるが、出る事はできない『森型モンスター(仮)』の檻にするとの事。


「ヨーコもミーコもやる気だし、ダークエルフは、強くなっているし、良い狩場になると思うんだよ」

「………」

こうなったドクターは、もう止められません。


「あ、魔王城にも『死神結界』を張らなきゃだな…」

そうでした!魔族領は壊滅させたのに、魔王城だけは残すように指示を出していたんでした。


ドクターが、魔王城を残し、『魔の森モンスター(決定)』を、魔族領内に解き放つ理由。


「まず、アンチ死神結界で体をコーティングする…で、死神結界はすり抜けられるわけだ」

「で、反対に出ようとしたら、死神結界に阻まれる…と?」

「そうそう…即死…あははは!」

いやいや!

また話をすり替えられた!!


「いや、それはわかりました!聞きたいのは、何故、それを魔族領内に展開するんですか??」

「え?魔族領に入りたがる奴も居るだろうからさ…実質、魔族領は《《もぬけの殻》》だ、魔の森があれば、凶悪なモンスターが徘徊する《《魔族領っぽく》》なるだろ?」

魔族領っぽくって何?


「一部、解放しておけば、良い狩場になるしな…」

「なりますかねぇ…」

「樹木自体がモンスターなんだ…魔石を狙えば、良い素材…いや、資材になるだろう」

「あ、そこね…つか、そんな所に入りたがる人いるんですかね?」

「え?ヨーコにミーコ、レイコにチーコ、ダークエルフに、ダーク精霊、獣人族もはいりたがるだろうな…」


ちょっと待って!

ダーク精霊って誰??


いや、言わんとしている事はわかりますよ?


でも、勝手に命名しちゃ、ダメじゃないんですかね?


かくして、『魔の森モンスター』は地上へ送られ、結界を展開したのち、魔王城前に移植されました。


ドォォーーン!!


移植は、物凄く簡単でした。


地獄から転移させて、魔王城の前に落としただけ…。

「…と言っても、魔族領の広さに比べたら、公園並みの森だな…一気に増殖させるか?」

「やめてください!!」


勝手に増殖するモンスターの手助けをする必要はないです!!


☆☆☆


しばらく観察していると、魔の森モンスターは、まず魔王城を狙い、根を伸ばします。

それに合わせて、無数のモンスターも魔王城に…突っ込んで、消滅してしまいました。


「あれが、死神結界な…触れたら死ぬ」

また、物騒な結界を張ったものです。


早々に、危険を感じたモンスター達は、魔王城に近寄らなくなっていました。


「これ、魔王城に入る事はできないんじゃ。」

「できないようにしている…けど、入りたがるヤツは居る」

「え?居ます?そんな人…」

「まぁ、そのうち分かる」

「………」

私は、その《《そのうち》》を待つ事にしました。


ドクターが、それ以上、答えてくれそうになかったから…。


で、ただ今、森は急激に繁殖中…。

視認できる範囲ででも、森に生息するモンスター達は、順調に数を増やしていっています。


そこは、ドクターが指摘したメンバーが、能力確認をするために、こぞって魔族領…改め、魔の森に入っていきます。


ちなみに、獣人族領の石化は解除され、予想通り、一瞬で獣人族すべてを屈服させ、実質、ドクターは大樹海すべてを掌握した事になりました。


大樹海を掌握した事で判明した事実と、ドクターが一方的に定めたルールはこちら。


①各領の領境りょうざかいは、5mほどの街道で区切られている。

各領への干渉は侵略とみなす。

改訂後

街道は3mに縮小、各領は仲良く交流を持つ事。


②3種族には、それぞれに管理する国々がある。

龍族の管理、監視範囲は、三王国。

精霊族の管理、監視範囲は、自然を愛する村々が集まる集落。

獣人族の管理、監視範囲は、軍事国家2国。

改訂後

山脈はドクターの領地とし、山脈を取り除いて、すべての国や街や村の公益を発展させる。


③3種族が管理していた理由は、その背後にある大帝国の脅威から守るため。

もっと文化水準を上げ、大帝国に対抗できるようにする。


④運河を挟み、背後には、魔族領と同じだけの強大な国がある。

管理種族は神族、つまり信仰国。

国王は大司祭。

ぶっ潰す


こちらの3種族は、神族のやり方に反発し、同じく神族や信仰国に反旗を翻していた民衆を保護し、独立国を作って守護してきた。

危害を加えてくる奴らは、全員処刑。


「防衛手段も確立する!」

と、ドクターは宣言しました。


そういう経緯なら、尚更、山脈はとっぱらい、3種族が力を合わせるのは良い事かもしれません。


まぁ、ドクターが絡むと、こうなりますよね?


はてさて、どうなる事やら…。

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