ドクターはやはり非常識でした。
「よし、素材はこんなもんだな…」
「いったい何を…」
「まぁ、見てろって…」
私、イノリこと、ドクターの助手であるはずの私ですら、ドクターが、これから何をするのか分かりかねます。
スチャッ…。
ギルマスが、堪らず質問をします。
「それは?」
「10トンメス…これじゃないと、ドラゴンの素材は硬すぎて加工できないんだ」
「じゅ…」
あ!ギルマス、固まっちゃいました。
サクサク…。
シャッシャッ…。
グリグリ…。
「よし!骨完成!」
グチュグチュグチュグチュ…。
「「「「おぇー!!」」」」
「よし!内臓完成!」
シャッ!
スッスッスッスッスッ!
チクチクチクチク!
「骨角形成完了!」
グチュグチュグチュ…。
スッスッスッスッスッ…。
「肉体縫合完了!イノリ!次元収納から、血液を抽出、輸血開始!」
「はい!」
私は、ドクターに言われるがまま、次元収納に手を入れ、指先を男性の胸に突き刺して、輸血をしました。
(今のは、何の血液だったのでしょう?)
「よし!そのへんでいいだろう!霊魂縫合!」
「イノリ!蘇生!」
「はい!」
パン!パン!パン!パン!
「グフッ」
「お、お父さん!」
「おー!サヤ!心配して来てくれたのか?って、俺は死んだはずじゃ…」
「あのドクターが、生き返らせてくれたんだよ!」
とかなんとか、感動の再会をしておりますが…。
「ドクター?この人は、安静にしてなくていいんですか?」
「あぁ、あいつはいい。なんせ…ゴニョゴニョ」
ドクターは、珍しく、私に耳打ちをしました。
「ちょ!」
「内緒な…」ニッコリ
「………」
ドクター!マジっすか!
足りない部位を『黒龍の素材』で補填したって!!
☆☆☆
「お兄さん、明日にでも、ギルドに行って、登録のし直しをいたらいい。おそらく、ランクが変わってるはずだ」
「え、えぇ…わかりました。さぁ、帰ろうか…サヤ。お母さんが心配している」
「うん、お医者さん、ありがとう!」
「おー!頑張って薬剤師になれよー!」
「はーい!」
こうして、親子は笑顔で帰っていきました。
ドクターの目的は、タダで薬をもらうため…一瞬でも、いい人だと思ったのは間違いでした。
「まぁ、登録石は、本部にしかない貴重な選定石だ…ランクアップするかは本人次第だな…」
ギルマスは、Dランク冒険者の後ろ姿を見ながら独り言を言っていました。
本部以外のギルドでは、従来通り、功績に合わせて、ギルマスがランクを決めています。
年に一度、王国中の冒険者があつまり、登録石で判定をするそうです。
本部を含めて、6つのギルドがあり、公正を期すためのイベントだと言っておりました。
サボっている冒険者はランクが下がり、ランク以上に頑張っている冒険者は、数は少なくても、上がる可能性があるのだそうです。
それもこれも、登録石は選定神の加護があって発動する、この世界には存在しないアーティファクトだからだそうです。
そりゃ、ドクターが『ぶっ壊す』と言った時に、ギルマスが慌てたはずです。
(つか、選定神って、どこかで聞いたような…)
そんな事を考えていると、またしてもドクターが、現実味あふれるセリフを吐いています。
「で、騎士団や冒険者の治療費は、後で、それぞれに請求するからな?結構な額を覚悟しておいてくれ」
ドクターは、騎士団長とギルマスに現実を突きつけていました。
「お、王国に申請しておきます…」by騎士団長
「な、なんとかしよう」byギルマス
今回の治療は、死者まで蘇生させています。
2人とも、言い訳ひとつ言いません。
いえ、言えません。
すでに、ドクターはギルドと騎士団を掌握しているような気がするのですが、気のせいでしょうか?
まぁ、実質、誰1人として死人を出さなかった功績は大きいとはおもうのですが…。
「チョロいな…」
これですよ!
ドクター…そのわっるい顔さえなければ、救世主扱いされると思うのですが…。
☆☆☆
「さて、茶番は終わりだ!これから、ここにいる誰もが、俺をSランクだと認めざるおえない事実を証明してやる!」
ドクターにとって、死者を甦らせる行為すら『茶番』だったようです。
シュバッ!
これは、いつもの《《次元切り》》。
ドクター曰く、魔法陣を組んで次元収納を出すよりも簡単だとの事です。
普通は、そんな芸当、できないんですけどね。
「そもそも、属性魔法は、適正のある者が、大気に充満する魔素を練り上げ、魔法陣として構築し、任意の魔法を効率よく行使するためのものでしかない…水属性の魔法使いが、火属性の魔法陣を構築しても、うまく構築はできないし、発動もしない…ま、当たり前だな…属性魔法は相性があるからな…」
ドクターは、みんなを次元収納…もとい、次元空間に案内しながら、何やら講義をしています。
「うちのイノリは、光属性と水属性、あと、土属性が使えるぞ…」
え、えーー!!
初耳なんですけどぉー!!
「あれ?知らなかったか?血液を操作するのは水属性…血液中の鉄分や成分は土属性、体内で、毒や不純物を浄化するのは光属性…イノリの血液自体が、上級回復薬となるんだ」
ま、マジっすか!
「今の話を、他の者にしたら、俺の実験体になると思っておけ!自分の配下にスカウトしても、同じだ!わかったか?」
「「「「は、はい!!」」」」
もうすでに、SランクやAランクの冒険者に、最初の勢いはありません。
「ちなみに…」
まだあるんですか?
「イノリを怒らせたら、全員、体内からすべての水分が抜かれてミイラになるから気をつけてな!まぁ、体液は消毒薬に…血液は輸血用に、大量にストックできる仕組みだから、100人程度までなら、余裕でミイラだな…ハッハッハ!」
「「「「イノリ様!これからもお願いいたします!」」」」
「は、はぁ…」
みなさん、すみません…私の能力、今知ったんで、『様付け』をされても困ります!
「で、毒素はもちろん、魔物の血液も、浄化できるから、血液が赤くなった魔物は食べられるようになる…不純物の大半は魔素だからな」
「ほうほう…」
ギルマスが、今の言葉に反応しました。
「ドクター?その、不純物は、いったいどこから排出されるのでしょうか?」
「ん?…ゴニョゴニョ」
「な!まさか!」
う、嘘でしょぉーー!!
ウンコ代わりに魔石が出るとか!
人に言えないし、見せられもしません!
なんのための生殖器官ですかぁー!!
結果
不純物である魔石や毒素は後ろから、消毒液となる体液は前からと乳首から…。
私の体を弄んだわね!!
って言ってもいいですよね?
この案件!!
ドクターのバカァー!!




