闇へと堕ちて、目覚めるまで
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
これでお終い。全てお終い。恐らく。
普段、品行方正な奴程、心に爆弾抱えて生きているものである。そしてその獰猛な本性が浮き彫りになった時、周りの輩が止める事は不可能であると思ってもいる。
最初にあったのは違和感だった。普段花を愛でる様な柔らかな視線が、肉を見つけた猛獣の光に変化していた。鷹揚な微笑みを浮かべる口元はとうになく、半開きになった口から零れるのは、一筋の唾液。
「ごめんね。飢えてるの。口が痒くて仕方ないの。治まらないの。脳内麻薬がずっとずっと、ずっとずっとずっとずっとずっとずっと止まってくれないの」
彼女の呼吸が荒くなる。白い綿菓子の様な、真冬に見る吐息が量産される。逃げなくてはと思った。けれども彼女の見開かれた目が、開き切った瞳孔が其れを許してはくれなかった。
彼女はそのままに俺に覆い被さると、思い切り俺に口付けを施した。驚く間もなく、舌先を捩じ込んで、荒し回る。乱暴に、乱雑に、好き勝手に蹂躙を繰り返す。
「あが……っ……ん……」
苦し紛れに目を見開くと、未だに治まる事のないギラギラと目が合った。此方を見ている癖に焦点は合っておらず、相手が気狂いである事を示している。
しかし数秒間させるがままにしていると、漸く落ち着いたのか、動向が柔らかく蕩け出す。
「ねぇ、気持ち良い? 気持ちいい? 気持ち良いよね? だって私が気持ち良いだもん。君が気持ち良くない訳が無い。ふ……ふふふ……あはははははは!!」
そう言って、そう叫んで、喉笛に噛み付いた。当然、痛い。生暖かい感触は恐らく自分の血であろう。けれどもそんな事さえどうでも良くなる程、俺は彼女の狂気に染まりつつあった。
俺はこの女を止めたいのだろうか? それとも飲み込まれて堕ちたいのだろうか? 分からない。ただ意識が朦朧とする。そうしてゆっくりと闇へと堕ちて行った。
次に目が覚めると、何時もと同じ花を愛でる女の瞳の柔らかな微笑があった。俺と目が合うと、こてんと首を折る。
「君、お寝坊さん。ずっと眠っていたよ」
思わず首に触れる。痛みはなく、血が流れた感触もなく、ただ温い柔肌の感触があった。
俺は弾かれた様に飛び起きると鏡まで走る。鏡の前には何時もの自分がいた。ただ一つの異変を残して。
首元に二つの穴があった。ちょうど吸血鬼に血を吸われた様な丸こい孔。けれども其れは瘡蓋の様に固くなり、血が流れる事はない。
「俺はどれくらい眠っていた?」
その問い掛けに、彼女はこてんと首を折って、鷹揚に答えた。
「二週間くらい。私が襲いかかってから、ずっとお寝坊さん」
そう言ってまた蠱惑的な笑みを浮かべた。白亜の犬歯だけが鈍く輝いていた。
発作と脳内麻薬が治まるまで、何時間だろう。
三時間? 四作品? まぁ些細な事です。
今は治まったので。
不思議な事に上がる時も一瞬。堕ちる時も一瞬。
その三角関数を延々と繰り返して普通に戻るんです。
そうして平常に戻ると、気が狂ってる時の事は何も覚えて居ないんです。
ただ薄ぼんやりと覚えているのは、口の中が痒くて仕方が無かったこと、叫びそうだったこと、それらを諌める為に、延々と書いていた事。
頭おかしいキャラを書く時は、自分が頭おかしくないと駄目だとおもうんですよ。