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24ページ目・魔道具店

ギルドから出た私は、あまりにはしゃいでいたようで、カンナさんに「失くさないようにね。身分証の代わりにもなるからね」と叱責を受けました。


さて、魔道具というと、先程ギルドでもあったように魔法を誰でも使えるようになるアイテムです。

その効果は様々で、中には人間だと難しかったり、仕組みがわかっていない魔法まで行使できる物もあります。

しかし、私が1番注目しているのはその外見です。

大きさこそ様々ですが、高級な魔道具になると滅多な事がない限り使いません。なので、普段は観賞用として置けるように無駄に凝った装飾が施されていたりするのです。

これがまた随分とオシャレに思え、せっかく異世界にしかない道具なので、買いたいのです。何店舗か回ってなにか面白そうなものが無いか検討を付け、また後日買いに来ようと思っているのです。


近くに冒険者ギルドから少し離れたところに魔道具店の看板がぶら下がっている家屋を見つけました。


中に入ってみると、意外と冒険者さんや主婦と思われるおばさんも多くいました。


「あれ、結構賑わってるんですね」


「うん。ここは庶民用の魔道具店だから、安くて使い易い物が取り揃えてある感じかな。その分、見た目にはあまり拘ってないと思うよ?」


店内を眺めながらカンナさんが答えてくれます。


確かに効率を求められ、収納に困らないような形状をしており、飾りっけのない見た目です。


一通り見て回って帰ろうと思いました。

大きさや形も様々で値段を見ると、日本円換算で数千〜数万円するようです。


1番高かったのは、綺麗な水をいつでも作り出せる魔道具で、なんと50万円程でした。高いのですが、便利な家電だと思えば妥当でしょう。


一番隅の棚の、最下列に小さな石が置いてありました。何の変哲もない、強いていえば綺麗に磨きあげられたツルツルとした表面をしているだけの、直径5センチくらいの楕円の水晶のようなものです。

そのくせ値段は5万円もするので、何か特殊な効果のあるものでしょうか。

カンナさんを見やると、彼女も分からないと首を振りました。


そんな時には店員さんです。たまたま近くを店員さんが通りかかったので呼び止めます。


「すみません、この棚の一番下の……これ、なんの魔道具なんですか?」


店員さんはその場にしゃがみ込み、その魔道具を手に取って眺めています。それから少し首を傾げ、頭を下げました。


「ちょっとぉ…よく分からないです。すみません。店長に聞いてきますので少々お待ちください」


「はぁ、分かりました」


店員さんが知らないってなんなんだろうとカンナさんに話していると、眼鏡をかけた青年が店の奥から姿を現しました。


「お待たせいたしました、こちらのお客さんですよね?」


彼が振り向くと、斜め後ろで先程の店員さんが頷いています。


「これはですね、知り合いの冒険者から貰った魔道具で、大陸の外の魔道具なんですよ。他の魔道具と違って術式が張り巡らされてるんじゃなくて、直接魔法がかけられているタイプなのと、簡単に手に入らないので少し値段が高いのですが……おもちゃの類です」


そう言って店長さんが石に魔力を流すと、亀裂が入りました。その亀裂から手足と首が出来、小さな竜のレプリカに変形しました。


「魔力を流すとこのように竜の姿に変形しますし、込める魔力を増やして命令すると少しだけですが自立して動いたりもします」


すると、その竜が羽ばたき、数センチだけ中に浮かんで尻尾を振りました。


「か、可愛い…」


いつの間にかそんな言葉が漏れていました。得てして小さい物はそれだけで愛らしいのです。

なるほど、おもちゃに5万円は高いですがお金があるなら買っちゃいそうです。


お金があるなら、買っちゃいますね。間違いなく。


カンナさんを見やると、苦笑いを浮かべていました。

以心伝心と言うやつでしょうか。


「カンナさん」


「ダメです」


「まだ何も言ってませんよ?」


「そうだね、じゃあなにさ?」


「私の財布預けてましたよね」

「ダメです」


確かに衝動買いだろうとは思いますが、無性に欲しくてたまらないのです。

両の手を結び、上目遣いで懇願しますがカンナさんは首を横に振ります。


「くぅー、こんなに可愛い子がおねだりしてるんだ、少しだけなら負けてあげますよ。お姉さん、買ってあげなさいよ」


カンナさんは落ちませんでしたが、店長さんが落ちてくれました。渡りに船です。


「いいでしょ、ね、ね!それに、私の方から出すんですよ?これは数少ない私の娯楽に成りうるかもしれないのです!」


カンナさんの腕にしがみついてぴょんぴょん飛び跳ねてると、ようやく折れて財布を返してくれました。


どうせ痛むのは私の財布ですし、そもそもカンナさん序列8位とやらなんですから、きっとお金も沢山持ってるでしょうに。無駄に財布の紐が固いカンナさんに心の中でぼやきながらその魔道具を購入しました。


魔力が抜けたその魔道具は先程の光沢のある石に戻っていました。

失くしてはいけないので財布に閉まっておくことにしました。今晩自室で動かしてみようとか考えながら、足取りは更に軽くなりした。



王都には魔道具店がいくつかあるとはいえ、ほんとに何店舗があるだけなので全て回るくらいは簡単でした。

もちろん貴族をターゲットにした店もありますし、むしろそちらの方が本命でしたがあまり多くはないようで、少しガッカリです。

まぁ、それでも離れたところに散らばっているので体力的に子供に辛いですね。普段鍛えて無ければね!


魔道具店。特に貴族向けのこの魔道具店は大きなガラス窓から中の豪奢な魔道具が見えるような造りで、建物自体も二階建てで、見るからにお高くとまっています。

是非中を確認しなくては。

好奇心に背中を押されながらふらふらとその店にに入りました。


店内に入ると、綺麗な店内や凝った装飾のある魔道具や気品あるお客様達よりも早く、キツい香水の香りが鼻をつんざきました。

甘ったるく苦味のある、むせ返るような香りに顔を顰めました。


「なんですか、この臭い。私の鼻には合いませんね」


カンナさんを見上げ、そう言うと苦笑いが返ってきました。


「しー、あまり滅多なこと言っちゃあ行けませんよ。貴族の人たちはああいう香水を沢山振りまいてるの」


そういえば、何かで聞いた事があります。あまりお風呂に入らなかった中世では、体臭を誤魔化す為に香りの強い香水をかけていたとか。

なるほど、それですか。

客層が貴族だから、色んな人の香水が混ざりあって更に気持ちの悪い臭いになっているのでしょうか。

汗の臭いで充満してるくらいなら、まだ嗅ぎなれてるのに。


魔道具の方は、効果も然り見た目も良いものばかりです。とはいえ、当たり前のことですが新品ばかりでした。私は、あの金属のくすんだ感じが好きなのです。

なんというか、真っ白で綺麗な紙に描かれた宝の地図と、ボロボロで茶色く傷んだ紙に描かれた宝の地図くらい雰囲気的に差があります。

なら中古屋行けって話ですけどね。


鼻をつまみながら店内を散策していると、魔法を封じ込めてある魔道具の棚の前にアメリアちゃんが座り込んでいました。昨日の騎士さん達も一緒です。


カンナさんが手を振り、こちらに気づいたジークさんが頭を下げました。

ジークさん達が誰かに挨拶をしている事に気づいたアメリアちゃんは手に持っていた魔道具を棚に戻し、視線を上げました。


「こんにちは、アメリアさん。昨日は寝ちゃってたからなんにも付き合って上げれなくてすみませんね」


私を捉えた瞬間、先程まで純粋な少女の顔をしていたのが不機嫌そうに頬を膨らめます。


「なら今日1日一緒にいなさいよ!」


ジークさん達も少し申し訳無さそうに「お願いします」と呟きます。

もし今日も出会ったらこうなるかもとは思っていたのでカンナさんと顔を見合せ、頷きました。


「私は構いませんよ」


「ほんと!…あ、いえ、当然よ」


一瞬ですがアメリアちゃんの目が輝きます。

どうしてこんなにツンケンしてるんでしょうね。教育上の問題でしょうか?まだ6歳(まぁ明日で7歳ですが)なのですからもっと素直にしてても良いと思うんですがねぇ。


等と考えながら、アメリアちゃんに手を引かれるがままついて行きます。


どうやらアメリアちゃんは魔法が封じ込めてあるタイプの魔道具に興味があるらしく、せっかく王都に来たのだからと珍しい魔法を探していたようです。


どういう事に使うのか皆目検討もつきませんが、私が既に足を運んだ魔道具店も含め貴族向けの魔道具店を全て巡りました。

少々面倒でしたが、目を輝かせながら魔道具がどんな作りかだのこの魔法はどんな効果で術式がどうだのと語るアメリアちゃんを見ていると微笑ましくなり、あまり苦になりませんでした。

カンナさんは少し眠そうにしていましたけどね。


何か好きな事があって、それを存分に語れる事は良い事です。「なんか好きだから好き」だとか「みんな面白って言ってるし面白いじゃん?」程度の好きではこうも語れません。

昔同級生に何が面白いの?と尋ねて「面白いから」と返ってきた時には絶句しました。なんたって、そいつは私の通っていた進学校でも上位の成績を収めていたやつなんですよ?日本の未来は明るく無いなと思った瞬間でした。

ああ、話が逸れてしまいましたね。とにかく、無い語彙をふんだんに使って熱心に話しているアメリアちゃんはとても輝いていました。

こういうのは、相手が内容を理解しようがしまいが、当人が楽しいと感じているのですからそれを害さないように相槌を打ちながらいつまでもその話を聞いていました。


正直あまり話は聞いていませんでしたが、いくつか気に入った魔道具も見つけられたようで、別れる時にはアメリアちゃんは満面の笑みを浮かべていました。


それを見ているとなんだかこっちも嬉しくなってきて、つられて笑い返しました。


「え、あの話ずっと聞いてて楽しかったの?大丈夫?」


「いやいや、好きな事について喋る人って私好きなんですよ。アメリアちゃんもほら、とってもいきいきしていましたし、可愛かったじゃないですか」


「へ、へぇ……なにそれ」


アメリアちゃんが見えなくなってから、カンナさんが引き気味に話しかけてきました。

私的には別段普通なのでよく分かりませんが、カンナさん的には奇行の類だったのでしょうか。

ちょっとやらかしたのかなと思いながら、苦笑いを返しました。


いよいよ翌日は誕生日会です。いつも通りにしていたら特に何も無いでしょうが、改めて自分の目で見るわけですから、胸が高まって仕方ありません。

アメリアちゃんはどんな服で出席するのでしょうか。


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