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21ページ目・王都に着いて

そびえ立つ城壁は天を衝くような高さと大きさを誇っており、近くで見るといっそう強固そうに見えました。


一般の人が通る門とは別に、要人等の人達用の別の門があり、私達はそちらをくぐりました。


城門の中に入ると、陽の光がいっそう明るくなったように豊かな城下町が広がっていました。


果物だの、よく分からない肉だの、薬草だの色んな露店や屋台が並んでいて、さながら何かのお祭りの日のようです。


誕生日会までは後2日あります。ゆっくり街を探索しようかと思いを巡らせていると、ジークさんが話しかけてきました。

その脚に隠れるように、アメリアちゃんがいます。


「エリザ様、アメリア様がどうしてもあなたと一緒に行動したいと申されています。もし、この後なにか用事がないのであれば、お昼など御一緒にどうでしょうか」


「べ、べつにどうしてもとは言ってないんだから!」


アメリアちゃんがジークさんのズボンをぎゅっと握りながら口を尖らせています。


ジークさんは困った顔をしていましたが、アメリアちゃんが顔を赤くして今にも泣き出しそうに顰めていたので、カンナさんの許可を得てからご一緒することにしました。


子供は可愛いですね。同級生として見ると、あまりいただけない態度ですが、歳上として見るとなんとも可愛らしいものです。


とはいえ、昼過ぎです。あまり時間もありませんし、遅めの昼食を取って、ちらっと街を観光して、明日の準備やら計画やらを立てたらもう夕飯の時間になるでしょうか。


カンナさんが美味しい店を知っているとの事だったので、今度はアメリアちゃん達に無理を言って食事場所の決定権をもぎ取りました。


大通りから少し離れ、路を歩く人も減ってきた辺りに少し寂れた料理店の看板が下げられている店に着きました。


こう言うのもなんですが、アメリアちゃんには少し似合わないような貧しそうな店で、アメリアちゃん自身も不快そうです。なんだか申し訳ない気分になりつつも店内にはいります。


扉の上に下げられた鈴がカランカランと鳴り、奥から男の人がやって来ました。


店内をチラッと見たところ私たち以外にお客さんは居ないようです。


「やぁ、ロベルト、来てやったぞ。覚えているか?」


カンナさんに声をかけられた男は一瞬眉をひそめて思考しましたが、すぐに目の前のキョウ人が誰だったか思い出したようです。


「おー!カンナじゃねぇか。まさか本当に来てくれるとはな。ここ何年も音沙汰がねぇからどこかでくたばったんじゃねぇかと思ったぜ」


中肉中背、健康そうなものの少し荒くたいような容姿と口調に、ジークさん達は平然としていますがアメリアちゃんを怯ませています。


カンナさんに目配せをします。何となく察してくれたようで、ロベルトさんに釘を刺してくれました。


「あーっとな、ロベルト。申し訳ないが口調を少し正してくれないか。実は、今私はお貴族様の護衛をしていてな……えーっと、お忍び?でここに来ているんだ」


「まじか!」


ロベルトさんは叫ぶと、私やアメリアちゃん達を一瞥しました。


「なるほど、その年齢ということは祝歳会か。申し訳ない。………え?ここに何しに来たん?」



「お前、料理店にご飯食べに来た以外でなにか用事があると思ってるのかな?とりあえず席に座らせてくれ」


◇◆◇◆


ロベルトさんが焼き鳥とお好み焼き(のようなもの)を運んできます。


「あ、あの、俺は店は持ちたかったのですがあまり腕が良くなくてですね、へへ…そのぅ……貴族様がお喜び頂けるようなものでありませんのでぇ……」



「いえいえ、カンナさんが『ロベルトの料理は昔から美味かった』と言っていました。確かに私達の普段食べる物とは違いますが、それは趣向が違うと言うだけです。喜ぶか喜ばないかは、私の好みによりますからね」


にっこりと微笑むと、ロベルトさんは少しほっとしたような顔になりました。


待っている間にカンナさんから聞きましたが、ロベルトさんはカンナさんがこちらへ来てから初めて出会った冒険者さんなのだそうです。

冒険者ランクもそこそこに、料理店をやりたいという子供の頃からの夢を叶えて今に至るのだそうです。


カンナさんは、いつか食べに行くからねと約束をしていたそうです。


荒くたいのは仕方の無いことですが、悪い人ではなさそうです。ジークさん達もカンナさんの話を聞いて「そうだっのか。カンナ殿がそう言うなら信頼できよう」と納得してくれました。


問題はアメリアちゃんです。


「ふん!こんな庶民の食べるようなもの、食べるまでもないわ!うちの料理の方がずっとおいしいもの」


ツンケンして食べようとすらしません。ロベルトさんも顔を青くしてその様子を見つめています。


ふーむ。お腹空きますよ?


お好み焼きもどきをひと切れ取って食べます。

「ん〜!美味しいじゃないですかぁ!確かに本場の料理人さん達のような繊細さはありませんが、素材の味や食感が残っていて、上にかかっているソースも力強くてとっても美味しいですぅ!ね?」


ジークさんに視線を向けると、一瞬戸惑いましたがすぐに察したように、なるほど美味しいじゃないかと呟きます。


それに便乗してカンナさんもそれを口に入れ、やっぱりロベルトの料理は美味しいねと微笑みました。


「味付けが濃くて、御屋敷では食べられないような珍しさがありますね〜。あら、アメリアさんは食べないのですか?無くなっちゃいますよ?」


畳み掛けるように私がそう言うと、アメリアちゃんは顔を赤くしながら唸っています。


「今食べないと、後でお腹が鳴りますよ?」


そこまで聞いて、ようやくアメリアちゃんがひと切れ口に放り込みました。


「…………おいしいじゃない」


眉の力を抜いて、呟きました。

アメリアちゃんは持っていたフォークで残りのお好み焼きもどきをかつかつと食べていきました。



その様子を私達は微笑ましげに眺め、ロベルトさんは胸をなでおろしていました。


「なぁ、カンナ。お前さんがあの後どんな人生を送ってこうなったのか知らねぇが、来るなら事前に言っとけよ。お貴族様も一緒なんだったら尚更な。というか、お嬢さん達が誰か知らんが護衛が少なくないか?」



皆のお腹がふくれ、アメリアちゃんに至ってはうつらうつらしている中、ロベルトさんは口をとがらせています。


「まぁ、悪かったよ。久しぶりに仕事で訪れたけど、思いつきだったんだよ。護衛については問題ない。私は、もう君の知る『そこそこ強いカンナさん』じゃないからね。めちゃつよカンナさんになったんだ」


ふふんと胸を逸らして自慢げに言うカンナさん。

ロベルトさんは半信半疑といった目でその様子を眺めているので、私からもフォローを入れてみましょう。


「ロベルトさん、料理美味しかったです。ありがとうございました。心配しなくてもカンナさんはとっても強いので私1人………子供2人くらいな1人で守りきってくれると思います。それに、私はカンナさんのこと信頼してますからね」


にっこりと笑って言うと、ロベルトさんは、ほぇー、随分と懐かれてるなぁと呟きました。



しばらくカンナさんとロベルトさんが談笑していたので、ジークさんとアメリアちゃんの方に目を向けます。


アメリアちゃんはくったりと寝こけており、ジークさんが彼女の体を抱き上げていました。

満腹になるとくる眠気と長旅の疲れとが相まって、熟睡しています。

少し早いですが、とりあえず宿に行きましょうかと尋ねると、ジークは頷きました。


2、3お別れの言葉やちょっとした助言をしてからロベルトさんの店を離れました。

ジークさんはアメリアちゃんを抱えているので両手がふさがっています。もしもの時の為に、護衛を兼ねて私とカンナさんもジークさんについて行くことにしました、


一旦大通りに戻り、そこから王城の方へ真っ直ぐ進みます。王城が近くなってきたあたりで、道が3つに別れていました。

標識を見ると、王城と学園と、貴族街へと続く道に別れているようです。


貴族街へと入ると、道を歩く人はぐっと減りました。


ちらほらと散歩している方々を見やると、いずれも気品のある煌びやかな服を着ております。


お父様も貴族なんだから、あれくらいの服を来て欲しいものだ等と考え事をしていると、ジークさんが立ち止まりました。


「到着致しましたここまで私の代わりに護衛をしてくれてありがとうございます、カンナ殿」


「いえいえ、困った時はお互い様ですよ」


「そう言って頂けるとありがたい」


ソルラヴィエ王国に属する貴族は、誕生パーティーを含め定期的に王都に行かなくてはならないので、王都の貴族街にもう一軒自分達の仮住まいを建てているのだそうです。


ジークさんの向かった場所もそういったところでしょう。仮住まいですのでうちには届くおよびませんがそれでも無駄に立派な家です。自分の家の力を誇示するために立派にしているのでしょうが、広くても寂しいのでもう少し小さくて良いのではと思うのです。


眠っているアメリアちゃんには申し訳ないですが、また明日と呟いて別れました。


そのままロードラン家の仮住まいに足を運びます。


アメリアちゃんのとこよりも少しだけ大きな建物でした。

カンナさんがノックするとその扉が開かれ、中から使用人さん達が出てきました。

主がいない間もこういった人達が住み込みで家を管理、維持してるのです。



日本人の庶民的な意見として、こんな人数をここに置いておくのは勿体ないような気がします。もっと人数減らしたらお金も浮くのでは?と思いましたがそこは侯爵家なので気にしないでいいのでしょう……


こちらの使用人さん達は私の事を知らされていなかったようで、1人しかいない見ず知らずの護衛と自分で立って歩いて喋っている私に随分と驚いていました。



部屋に案内され、カンナさんと明日の計画を立てます。

明後日がパーティで、明明後日には寄り道せずにさっさと馬車に乗る予定なので、明日で観光を済まさねばなるまい。となると、事前に回るべき場所を考えねば。



「………エリザって、やっぱりそういう所を見てると男性っぽい思考をするよね」


「なにおぅ?」


「あ、いや、気分を悪くしたなら悪かった。けどまぁ、計画なしにぶらぶらと回るのも良いもんだよ」


「んー、それでも見当くらいはつけときたいじゃないですか?」


「あまり変な所へは行かないようにね」とカンナさんは呆れたような笑い、私もそれに釣られ微笑みを零しました。


王都には珍しいお店が多くあります。ですが、そんなことはないと思いますがアメリアちゃんが顔を出して来るならば、こちらも予定を変えねばならないのである程度は適当な計画でも良いでしょうと納得し、慣れぬ館で半日過ごしました。

あっという間でした。見慣れぬ街ということもあるのでしょうが、計画を立てるのに何時間も考える癖は直した方が良さそうです。こんなだから、昔はいつも時間が足りなかったんでしょう。


ロードランとは違い、僅かながら、夜遅くまで遠くの城下町から人々の喧騒が聞こえます。

音で街の規模を感じ、人が密集している街にどことなく故郷の駅前を思い出しました。


ですが、この街の人々には灰色の男の影はありません。それぞれが人らしく、自分達の色を輝かせながら他人との繋がりを大切にしているのだと。

街のお店は物を買うための市場ではなく、人と人を繋ぐ市場なんだろうなと。

そんな妄想を思い巡らせながら目を閉じました。

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