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受付嬢の定め

しかし磁電鉄鉱石がまさか光の鉱脈石と相性がいい形になるとは……いやまだ分かりませんね。

正直な所鑑定材料が足りません。

光の鉱脈石は主に何かに反応するのではなく一部の場所での発生で役に立つ物…もしくは自身による強化…或いは相手へのデバフ…その他でもあるにはあるのですが…


「あ、あの〜先程僕が言っていた話なんですけど…」


「はい?どの様な話でしたでしょうか?」


「僕がその石である物を作るから先程言った事を撤回して欲しいと言った事なんですけど…」


「え?あ、ああそうでしたね!………ふむ。鑑定もしつつそちらでの証明もするですか……コレはある意味では少し裏事情で込み入った話になりそうですね。」


いやそうだろうか?

単に価値がある物なんだぞって気軽に思ってくれればそれだけでいいんだが…

そんなに深掘りする話でもないぞ。


「分かりました。ひとまずこの案件に関しましては保留に致しましょう。それと私があなたのご自宅にご訪問させていただいてもよろしいでしょうか?」


「え?よろしくありませんが?」


「………いや、えーと…その、あなたの家に行かなければ情報やら証明やら色々とできないというのもありまして…」


ラウラはコチラに向かって内緒話をするかの様にヒソヒソと話してくる。


「この話をあなたにだけしたいのでギルド受付では少し込み入った話は避けたいのですよ。」


「え?しかしそんな複雑な話でもない気がするのですが…」


「事情を察してください。私余計な荒事に首を突っ込みたくないんです。なので諸事情と言った形であなたの家に訪問したいんですよ。」


そんな事を耳元で囁かれてもな。

というよりもう厄介事に関わってしまっているんじゃないのか…俺が思うのもあれだけど…


「………分かりました。ひとまず委任します。僕は僕であなたに認めてもらうように善処するだけなので。それじゃ失礼します。」


「ありがとう。じゃあまた今度お願いします。」


ラクトの後ろ姿を見送るラウラ。

お辞儀をしながらありがとうございましたといい本日の業務を終了する。


「さて、本日の業務は終わったけれど…コレからどうしたものかな。……あっまだ残りの鉱脈石の事についてあの人に説明していなかったわ。……まぁどうせまた会うだろうしひとまずはいいとしますかね。」


ダダダ

ダダダ

ダダダ


「な、何?何?」


ようやくひと段落したと思いきや当然ラウラに向かって走ってくる人物。

しかもやたらと前のめりになって質問攻めを喰らう。


「せ、先輩!さ、さっきのいったいなんなんですか!」


「ちょっと!ラウラちゃん。さっきのお客様とはどういった関係なの!説明して頂戴!」


「え、え〜と…その…」


しまったわ。

完全にやらかしてしまった。

さっきの鉱脈石で周りの受付の娘達が押し寄せてきちゃったわ。


「先輩って男の人とあんな親密に話せてたんですね。驚きましたよ。」


「え…あなたが私に聞き迫ってきた理由ってそれなの?」


「はい?その他に何かあるのですか?」


いやてっきり、鉱脈石と磁電鉄鉱石が接触した後の事を言ってきたのかと思っていたんだけれど……この子仕事には懸命だけど…違う事に対して集中散漫だったわ。


「ふふ、それも確かに気にはなるけれど……コレ、欠けた磁電鉄鉱石よね?」


その傍らで今度は逆にクテュラが先程起こった事故に関して磁電鉄鉱石の方に気にかける。


「え、ええ……そうだ。クテュラあなた私とまではいかないけれど、それなりに鑑定スキル得意わよね?」


「うん?まぁそうね。だって鑑定観なんだもの…でもそれを言うならトリュフちゃんだって同じだと思うけど?」


「はい!私も得意ですよ!私だって受付嬢且つ鑑定嬢でもあるのですから。」


「はは、そうよね。……それなら二人にお願いがあるのよ。」


そう言われて、2人は顰めっ面な顔をするが、ラウラがこの磁電鉄鉱石の事について説明をしながら2人に頼み事をする。


「ふむふむ。コレを鑑定してほしいですか。見た目はただの黒い石ですけどね。」


「う〜ん。……でも何かしら意味がありそうよね。例えば…」


クテュラは磁電鉄鉱石に軽く指でコンコンとしながら叩く。

すると磁電鉄鉱石の欠けた部分から僅かな磁場が発生する。


バチ!バチバチ!


「は!今光が出ましたよ!」


「光というより雷かしらね。」


「その両方とも言えますね。」


あの人が持ってきた石には当然ながら何も価値のない石です。

しかし、鑑定スキルをそこそこ磨いてる人であるならばちょっとした形で弄る事で反応を上手く起こさせる事ができる。

……まぁそれはあくまでもその石にちょっとした微力があるならばの話しですがね。


「光と雷が備わってる石なんて初めて聞きますよ。もしかしてコレって相当なレア物なんじゃないんですか?さっきまで冒険者がモッグマッグの寝ぐらから取ってきたアイテムを鑑定してくれって言われてはいましたが…そこまで価値のあるような物は何1つありませんでしたからね。」


「私もよ〜……あ、でも一つだけ高価な石炭を持ってきた人がいたわね。と言ってもほんの美味たる価値でしかなかったけれど…」


「あくまでも私の予想なんだけど…もしかしたらこの磁電鉄鉱石…近々とんでもない価値を見出すものになるかもしれないわよ。」


私自身もさっきはああいったけれど、可能性としたら相当な価格になるかもしれないわね。

……でもそれをちゃんとした形で売り出せるようにならなければならない。

そうすると誰かがその証明をするしかなくなるって事だけど……!?


「あの人まさかそれを考慮してまで私にあんな事を…だとしたらとんでもない商業スキルをもってるわねあの人…」


「ニマニマ」

「ニマニマ」


「な、何2人とも。」


「あの人って、もしかして…先程の男性の事ですか?やっぱりそういう御関係なのでしょうか?」


「ふふ、まさかあの堅物なラウラがね〜」


「はい!そこニマニマと笑わない!そんなじゃありませんし、私にそういった縁はありません。そもそも今の仕事をやってる最中でそういった上部の話しはできないのはあなた達だって知ってるでしょうに。」


「そうなんですよね〜色々なお客様が来られるからもしかしたら良い出会いみたいなのがあったりするのかと思ってたのに……制服だって可愛いのに…」


「そうよね〜こんなにフリフリした制服での受付嬢中々いないわよ。まぁ女性からしたら大人気なんだけどね。」


「私はガッカリですけどね。今の仕事に関して…」


クエストが長引いて報告する輩が多いと残業するハメになるというのを冒険者達はまだ知らない。

なのに当然のようにクエストをこなしたから受理を頼むやらなんやら…


「クソ!私の貴重な時間を返しやがれ!!!」


「何をどう返してほしいのかしら?」


「ぎ、ギルド長!」

「ギルド長!」


ラウラ達に声をかけてくるギルド長。

その姿は周りとは裏腹に小さな体をしており、目立つというわけではないが違う意味で目立つ。


「す、すみません〜!!」


「失礼しますわね。」


トリュフとクテュラがギルド長に突き詰められそうになるかもという雰囲気を辿ったのか急いでその場から離れる。


「あ!ちょっと2人とも!」


ぐぬぬ。

に、逃げられたか…


「それで何を返してほしいんだい?」


「え〜とギルド長コレはその…」


「周りに迷惑をかけつつ…仕事をそのまま蔑ろにする。そしてあまつさえ仕事の内面での文句…はぁ〜最近の若い物にも困ったものよね。」


ギルド長。

見た目に関してはあなたも十分お若いですが…


「はいそんな風にみてくる辺り自分の見た目はどうなんだって顔…本来なら首扱いになりますが…あなたは優秀な人材なので首にはしないであげましょう。」


「あ、ありがとうございます。」


笑顔の作り笑いをしつつ何とかお礼を言うラウラ。

既にいたたまれない気持ちになる。


「色々と妙な騒ぎが起こってみたいだけれど、優秀なあなたの事だから私が何を言わずともわかってくれるわよね?」


「あ、はい。」


そう。私は一応このギルド嬢の中ではトップ3位入りぐらいの中でも唯一仕事をこなしてる率が高い一位を誇る順位に入ってる。

この前なんか別にしたくもない表彰式であなたがトップですなんていう紙をもらったりもした。

不本意甚だしいったらありゃあしないわよ。

好きでやりたくてやってるんじゃないわよ。

自分の未来…お金の為にやってるんだから。


「このギルドに厄介事は持ち込んではいけない。尚且つ私情であっても許されない。……なんで私がこんなにくどくどと言ってるのが分かるかしら?」


「は、はい。皆さんのやる仕事を少しでも緩和する為ですよね。」


「そう〜ただでさえ、雑務やら残業やらで働かせてしまってる子達が多いんだもの…その辺を減らしてやりたいのよね。」


そう言われて未だにまだ仕事に没話している者やダンボールを抱えながらやたらてんやわんやで忙しなく働いているトリュフをみつつ…ギルド長に言われた通りコレ以上の厄介事は回避しなければならないと私の心の中で色々と蠢めく。


「にしても今日はなんだ騒がしいじゃないの…確実に残業をせざるを得ない形になってる子がいっぱいいるわね。」


「………」


そんなの言われなくても雰囲気だけでも察せるわよ。と言うよりも何か言いたげな形で言葉を濁らせてニュアンスしてくるわねこのギルド長は…


「はぁ〜人手も足りないわけだし…残業してくれる子がいたら早く終われるのにね〜」


「ははは、そ、そうですね。」


「ねぇ〜」


お互い顔を見合わせながら察しろと言わんばかりの愛想笑い…そして圧みたいなのを感じ…ラウラは形を項垂れさせながら覚悟を決めた。


「はい。残業させてください。」

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