思いがけない鉱石入手・モッグマッグの凶暴化
今更だけどエスカの発言には色々と妙なところがある。それが単なる偶然なのかそれとも必然なのか…もし俺の予想が当たるとすればエスカの中身は俺と同じ異世界の人間だという予測ができる。
そうであってはほしくないんだが……
「あら?そんな事が聞きたいの?まぁ別に何か裏があるわけじゃないからいいのだけれどね。……まぁ強いて言うなら私の為になるかもしれないという予想が得られるという事かしらね。」
「エスカの為になる?」
「そう。だってそうじゃない。錬金術と魔法使い…この2人が組み合わさって私が求めるキーストーンが早く手に入る可能性があるのよ。その事を考えたらあの子にとって私とって利益になる余地があるかもしれないってそう思ったのよ。」
「ただの勘だろう。そんなのただの思い込みにすぎない。」
「かもしれない……けどお前の反応を見る限り間違ってはなそうにみえるけれどね。」
「……は?何でそんな事が…」
「わかるわよ。少なくとも私はお前達人間から溢れてるドーパミンみたいなのを感じ取れる事ができる。それはつまり嘘の味…ふふ、舐めてみたら余計にわかるかもしれないわね。人間という必死に誤魔化そうとする蜜の味が…相手を誤魔化す…嘘をつく味だっていうのをお前達人間は愚かで面白いという事がね。」
精霊には相手が嘘をついているという…そういった物を感じ取れる事ができる。
けどそれは実際に嘘の話だったはず……それがそうやって嘘だと言う事をわざわざ相手を挑発するような言い方。
……エスカは俺に試しているだけだという事を俺に悟られないように嘘をつく。
……やっぱりエスカとはあまり深煎りはしたくない関係だな。
「……俺の考えを読み取った所で何かが変わるわけじゃないぞ。それにお前が俺が嘘をついているという事に対しても単なるハッタリをかましてるかもしれない。そういった腹の探り合いはやめてほしいけどな。」
「ふふ、ごめんなさいね。ちょっとからかってみたくなっちゃったのよ。あまりにもおかしな質問をしてくるから少し驚かそうと思ってね。」
だとしても俺の意図を読み込みすぎている。
あの2人が死ねば今後の進行状況に対して負荷が出るって言うならエスカはやっぱりイレギュラーな存在なのか…
「驚かすね。……それで今ここまできて他に驚かせる事はあるのか?」
「ええ。お前にとってはきっと驚くと思うわよ。」
エスカはモッグマッグの根城の場所まで移動してこの祠の片隅にある壁にちょこんと触れる。
するとそこから大量に溢れ出てくる黒い鉱石。
「こ、これは?」
「さぁ〜何かしらね。でもその中に一つだけキラキラ光ってる物があるでしょう。」
「た、確かに…このピンク色に光ってる石。コレはなんなんだ。」
「それが私が求めていたものよ。次の神殿を開いてくれる物…所謂扉の鍵と言った方がわかりやすいかもしれないわね。」
「な!?」
しまった。
完全にやられた。
わざわざ次の神殿を切り開くための手伝いをさせられていたなんて……けどまぁそこに関しては今更か…手伝わないっていった反面…エスカはコルデリアの命を救った恩人でもあるわけだしな。
「ふふようやく一心報いた顔を見れたわ。ここまできて騙されたという顔を私は見たかったのよ。」
「チッ…まぁいいさ…お前にはコルデリアの件で助けてくれたというのがあるからな。今回は騙されてやるよ。」
しかしこの黒い鉱石…なんか見た事があるんだよな。
コレって何かの燃料材とかじゃなかったけか?
でも使えるのって火とかその辺に使う物だったような……ん?待てよこの鉱石もしかして…
「今のレベルでできるか分からないけれど久々にやってみるか。」
ラクトは小さい頃にやっていた鑑定スキルを使い黒い鉱石が何なのかを確認する。
「!?こ、コレは!磁電鉄鉱石じゃないか!」
「うん?それって凄い石なの?」
「ああ、これだけの石だ。当然錬金術師には有難い石でもある。コレなら今やってるクエストはクリアも当然だぞ。」
それにこの鉱石でアトリエのランプとかそこら辺の電気問題が解決する事ができる。
……いや可能性としてはコルデリアの事も…
「……ひとまず全部は持っていけないからある分だけ持っていこう。向こう側にも鑑定してお金をもらっておく必要があるしな。」
「な〜に。やたらとウキウキに採取するじゃないのよ。あんだけ嫌そうにしていたのに、すっかりやる気に満ち溢れちゃって…現金な奴なのお前は…」
当たり前だろう。
そもそもこの辺地帯では絶対に手に入らない鉱石なんだぞ。
このゲームをしていた人間としては誰しもがこの鉱石を必要としていた事か…おかげ様で電気系統の武器を作るのにも苦労したぜ…何時間かかったか。
「それよりも早いとこここを出た方がいいわよ。さっきまでドンパチしていたんだから、ここら辺の魔物が押し寄せてくるわよ。」
「………え?なんだって?」
そう言ってエスカはスッと闇の中へ消えていき。
その言葉の意味が俺にとって悲劇になるとは予想だにしなかった。
ぶるるるるるる!
「嘘だろう。モッグマッグの狂化版じゃないか。そんなの俺1人でどうこうできやしないぞ。」
※モッグマッグは基本的には温厚な小動物モンスターではあるのだが…一部特定として凶暴化する事が稀にある。
主にねぐらのあるアイテムや冬眠する為の物が取られたりすると切れる傾向がある為1番危険視とされている冬は避けている。
しかし夏場は別な為…物が傷んだりして使い物にならないアイテムがあったりしたりする為モッグマッグは夏場に関しては色々と動き回る傾向である為主に怒る暇がない。
「でも…目の前にこんなレアアイテムを取ろうとしている奴がいたら話は別だよな。」
ぶるるるるる!
モッグマッグは怒る時鼻息を鳴らしながら怒る。
地味にウサギとそっくりなんだよな。
けどそんなの別にいいとして…
「モッグマッグの集団となればこの後起こる事は…」
ゴゴゴゴゴゴ!
「地割れだよな!クソ!やっぱりモグラの仲間じゃないかよ!」
俺は急いでモッグマッグが地面に潜ってこの祠を崩し落とそうとしているのを分かりながら磁電鉄鉱石をひとまずしまえるだけポジェットの中にしまう。
「クソ!10個ぐらいが限度か!惜しい気はするが命に変えられる程まだこの石は貴重じゃない。」
ラクトは頭上から落ちてきそうな岩を予測しながら出口付近までワイヤーガンを使って飛んで逃げる。
しかし予想するのとは裏腹に落ちてくる岩じゃなく先にその予想超えた場所にモッグマッグが地面から顔を出しそのままウニョンと首を長くしてコチラを迎え撃つ態勢に入る。
「嘘だろう!どんだけ執着心があんだよこのモグラ野郎達は…」
しかしそんなモグラ達が押し寄せてきてもラクトには先程作っていたものを懐から取り出しモッグマッグに向けてなげる。
「食らえ癇癪玉だ!」
ヒューーーン!
バチバチバチバチバチ!
直接モッグマッグ達に当たったわけじゃないが、音と火花にビックリしてモッグマッグ達は穴に引っ込みラクトはそのまま出口まで移動して脱出する。
「ふぅ…どうにか危機一髪だな。……てか最近多くないかこう言う展開。俺何かに呪われてんのかな。」
そう不信感を抱きつつラクトは愚痴をこぼしながら自分のアトリエへと戻っていくのだが…先にギルドへと足を運ぶ。
………ギルドハウス
キーンコーンカーンコーン!
「う〜ん!!定時だわ!ようやく帰れるわ。」
「先輩お疲れ様です。」
「ああ、トリュフちゃんじゃないのよお疲れ様。」
「お仕事終わりですか?」
「そう定時だもの…そっちも終わりでしょう?」
「えへへ、そうなんですけど…あちら見てください。」
「ゲッ…何あれ?」
「さぁ…何でもモッグマッグからのねぐらにあるアイテム鑑定でコチラに来るお客様が多いみたいなんですよね。」
「え?そんな話きいてないけど…なんでそういった話になってるの?」
「分かりません。先程コングール・レッカーエリアで相当大きな爆発音と共にモッグマッグ達が凶暴化したみたいなんです。それで討伐してアイテムを手に入れたから鑑定してほしいとかで…」
「ああ〜なるほどね。確かにモッグマッグ達が採ってくるアイテムって、ごく稀に当たりがあるやつがあるものね。でもそんなの今に始まった話じゃないんじゃないの?」
「え〜と、さっきも言ったんでけど、どうやら大きな爆発が原因らしくて…監査しにいった人達からの情報ではスパーク現象が起こっていたみたいなんですよ。」
「は、はい?スパーク現象ですって?どうしてそんな事が?」
「原因はひとまず追跡中との事なので、コレが終わり次第コングール・レッカーエリアでの対処に入るみたいですよ。」
「おい姉ちゃん!こっちの鑑定みてくれねぇか!」
「あ!はーい!直ぐにいきます。それじゃあラウラ先輩お疲れ様でした。」
「え、ええ。お疲れ様。」
トリュフは忙しなくそのまま鑑定をしてほしいという客の受付にまで走っていく。
「は〜やれやれ鑑定の受付をやってなくてよかったと心からこんなに思った事がないわね。まぁトリュフの場合は心が広いからだとは思うけど、人手が足りない所は尽力するタイプなのよね。私だったら定時に退社できない会社なんて、ただのクソしか思わないけれど…」
そう言って立ち上がり帰る支度をしようと受付の周りを片付けようとするラウラ。
「あ、すみません今まだやってますか?」
チッ定時だっつってんのにどのタイミングで受付にきてんだよ。
少しは空気読みなさいよね。
「申し訳ございません。本日はもう受付終了でございましてって…あなたですか。」




