エスカからの助言…エスカの目論見
何処かしかコルデリアは俺の方へも向いて何やら微笑ましい顔を向けていた。
辛そうな顔をしていたのは間違いないが…今の微笑ましい笑顔に対して俺は彼女の意図を汲み取る事はできなかった。
「………」
「やれやれ…何も根性の別れってわけじゃないのに事を荒立てしすぎなのよ。もうちょっとラフに捉えても良かったんじゃないかしら。」
「な!お前!人間の命をなんだと思ってるんだ。」
「はあ?何?もしかして私に怒ってるわけ?たかが人間風情が私に怒りを向けていると?…は!大きく出たわね童。あの時の魔法使い小娘もそうだったけれど、あまりにも無礼がすぎるんじゃないかしら。」
「無礼がなんだろうが。状況を考えろって言ってんだよ。お前みたいな非常識な精霊と俺達みたいな人間は心のレベルが違うんだよ。」
「ちょ、ガイウス。相手は精霊なんですよ。契約とかその辺に関して余計な事を言えば…」
「ああ!そんな事関係あるかよ!コイツは人の命を舐め腐った言い方をしたんだ。そんなの誰だってキレるだろう。」
ガイウスは未だに涙を流しながら凍らせたコルデリアのから離れずにいる姿を目にして苛立ちを覚える。
「……」
「全くコレじゃあお話しにもならないわね。今までの助言を否定されたみたいで本当嫌になるわ。少なくとも私はその子を別に死なせてもいいと思っていたのよ。でもそんな事をしてしまえばお前達はこの先のキーストーン集めをやめる可能性がある。だから仕方がなく横入りした。寧ろ感謝してほしいぐらいだわ。」
「お、お前……」
まずい。このままじゃコイツらの仲間内で一触即発が起こる。
いやもう起こってはいるんだが…さすがに用途はできないか…
「エスカ。流石に空気は読んでちょうだい。いくら何でも度が過ぎているわよ。」
「!?」
ルミナがエスカにマジレスした。
あのルミナが……怒る所は確かに見た事はあったけれど…ルミナがエスカに対しては珍しい。
こんな展開あったか。
「あらあらあなたまで私に指図をしてくるのかしら?本当ここの連中は困ったものね。」
「空気を読んでって私は言ったのよエスカ。私の言ってる意味わかるわよね?」
「………」
「………」
「はぁ〜まぁいいわ。とりあえず一応は役目を果たしたから後は好きになさいな。」
そう言ってエスカは舌打ちをして空間に穴を開け捻じ込ませる様にして中へと入って消えていく。
「………えっと、大丈夫ですかマーシャさん?」
「ぐす、ぐす。」
「マーシャさ…」
「クリューダルさん。あなたの目は節穴ですか?目の前に辛そうに泣いてる女の子がいるのにも関わらず大丈夫ですか?という言葉だけで解決できるとでも思っているのですか?」
「いや、そんな事は思っていませ…」
「まぁあなたにこんな事を言っても無駄でしょうけどね。散々ルミナのお願いりを断ってるあなたなんかにそんな生優しいお声かけなんてそもそもできないでしょうから。」
俺の何を知ってるって言うんだ。
ルミナの仲間入りのお願いを断ってるのはただ単に関わりたくないっていう意味での断りなんだよ。
お前だって俺と似た様なもんだろうに…
「何ですかその顔は?まるで私に言われなくても分かってるかのような反応ですね。」
「いえそんな事はありませんよ。あなたの言われた通り事実そうなんですから。」
「……本当腹が立たちますよ。あなたを見ていると昔の私を見ているみたいで嫌になります。」
「はい?」
「いえコチラの話です。何でもありません。」
何でもないって反応じゃないんだよな。
…俺を見ていたら昔の自分を見ているみたいで嫌か……そうか。そう言えばそれを言われて1つ思い出したことがあったぞ。
……いや今はその事は後回しだ。
「ぐすん。お兄ちゃんコルデリアはどうしたらいいの?」
「え?ああそうですね。先程言った通りコルデリアさんは僕のアトリエで預ける事にします。しかし僕はコレからやる事がありますので皆さんは先に戻っていただけますか?」
「え?じゃあ私もここに残るわよ。ラクト君1人じゃ色々と大変じゃない。」
「おお。それなら俺も残るぜ。何かしら力入りが必要だってんなら俺がいたほうがいいだろう。」
「ちょあなた達。流石に状況を理解しなさいよ。凍らせたコルデリアさんはいったいどうするのですか?」
「………」
ラクトは少し思い悩みながら2人がラクトの為に残ってくれるという言葉に意図があるかもしれないとちう疑惑がありつつラクトはこう決断する。
「ありがとうございます。しかしクローデルさんの言う通りコルデリアさんの体を運ぶ必要があります。それに至ってはガイウスさん。力のあるガイウスさんが1番適任だと思っています。」
「ぐっそりゃあそうかもしれないが…」
「後その道案内…いったい誰が僕のアトリエまで道案内してくれるかという話にもなります。まぁ普通だったら僕も一緒に戻らなければならないんですが…少しの間だけやらないといけないことがあるんです。だから道案内とその護衛という言い方も失礼かと思うのですが…クローデルさんとプレデシアさんが適任だと思っています。」
「そ、そんな事ないよ!それならアリシアに任せるだけでも大丈夫よ。」
「る、ルミナ。」
ルミナの猛烈な拒否権に対してアリシアは少しいたたまれない気持ちな顔をする。
「はぁ〜僕がどうして2人を選考したのかちょっとぐらい理解してほしいものですね。」
「え?」
「……全く理解したくはないけれど察してしまわないといけないのが嫌ですね。」
「何!何!どう言う事なのよ!」
「ルミナあなた…さっきの錬金術。制御しきれない力を使って、力ほとんど残ってないんじゃないの?」
「うっ…」
「そんな状態で一緒に来られるよりかは私達と一緒に街に戻ったほうがいいとその人はそう言ってるのですよ。」
「ぬぬぬ!……き、気付いていたの?」
「寧ろ気付かない方がおかしいですよ。僕もそれなりにではありますが、錬金術に関しては熟知していますので…」
「ううう!わ、分かったわ。大人しく戻るわよ。」
不貞腐れてブスっと膨れる面をするルミナ。
まだ錬金術に関しては色々と勉強不足なんだ。
そこは致し方ないってやつだよ。
「お、お兄ちゃん。私はどうすれば?」
「マーシャさんもそのまま帰っていてください。僕が戻るのが遅かった場合氷の復元はあなたにしかできないはずなので…」
「う、うん。分かった。」
「ありがとうございます。それと今回のクエストの件なのですが、僕がひとまずこのクエストを押し付けた義務もあるので、皆さんは気にせずそのまま帰っておいてください。」
「ああそれなら問題はないと思うぞ。一応俺とアリシアがモッグマッグの拠点からレアアイテムを入手したはずだからな。コレを鑑定してもらって後はどうなるかだが…」
「ひとまずそこは帰ってからでも問題はないでしょう。私達だけじゃなくてももう1人ぐらいはレアアイテム入手してる人もいないはずがないと思いますしね。」
「ははは…」
苦笑いする他なかった。
アリシアの言い方は完全にコッチの言葉を意図して理解してやがる。
本当洞察眼だけは立派だよ。
「不確かな笑いが気持ち悪いったらありゃあしませんね。行きますよガイウス、ルミナ。」
「あ、ああ。じゃあラクト俺達はアトリエで待ってるからな。早く帰ってこいよ。」
「ぐぬぬぬ。く、悔しいわね。私がラクト君の側にいてサポートしたかったのに…はぁ〜絶対に帰ってきなさいよ。じゃなきゃラクト君のアトリエ私が貰うんだから。」
「それただの強奪!」
ルミナ達は俺の帰りを気をつける様に言い残しながら凍らせたコルデリアの氷体を……
「………ええ!そのまま持っていくのですか。何かしらで運んだ方がいいのでは?僕が言うのもあれですが、いま台車みたいなのを作りますよ。」
「いや別に大丈夫だ。ほれコレ見てみろ。」
「……あ、軍手。」
「おう!しかも温度差変換できる軍手だ。コレでコルデリアが凍ったこの氷体を持てられるってわけだ。」
「な、なるほど。」
た、確かにそう言った道具があったな。
完全に使う要素がないと思ったからすっかり忘れていたな。
主に装備をして攻撃力を上げられただけだから、関係性はないなと思っていたけれど……ゲームとこういった世界では関係ないらしい。
「じゃあまた後でな。」
今度こそ本当にこの場所から離れていくガイウス達。
この場に残されているのは俺1人になるわけだが…
「さて…クエスト目的もありつつ…エスカいるんだろう。出てきたらどうなんだ。」
ぐわ〜〜ん。
「ふふ、私と2人っきりになりたかったのかしら?」
「だとしたら?」
「あら意外にも可愛い気があるのね。さっきは私の事を門前払いしたルミナにちょっとイラッとしたはけれど…あの子もまぁまぁ成長しているのかしらね。」
「その話については道中聞くよ。それよりもお前の言っていたレアアイテム。いったい何のやつか教えてもらってもいいか?」
「あら?そう言えばそう言った話をしてたわね。」
「ついさっきまでの話しだろう。誤魔化されると思うなよ。」
「まぁそうね。……え〜と反応からして……ああコッチね。」
エスカは何かに反応してなのかそのままモッグマッグのいる拠点っぽい所へと飛んでいく。
「………」
「何か言いたげな顔をしているわね。黙ってないで話したらどうなのかしら?」
「……少し個人的にはなるけれど…それでもいいか?」
「内容によるわね。話してもいい内容であればそうでない内容もあったりするわ。…まぁ話だけは聞いてあげる。」
「……何であの時ルミナとマーシャが死んだらこの世界が終わるみたいな発言をしたんだ。」




