見えない剣・バハムートα
まだまだ燃え盛るラクトの右腕。
まるで腕を食いちぎろうとしているかの如くどんどんと延焼が止まない。
「おいおいそんなのぶん回したら俺らにまで被害が及ぶんじゃねぇのか!」
「大丈夫。そうならないようにちゃんと微調整はしてあるようしている。」
薙ぎ払う対象はあのリザードマン達だけ。
他の3人に被害が及ばないように考えてトレースしたんだ。
だからとっととこの場を切り抜ける。
ラクトはバハムートαを両手で握りながら真上へとかざしながら構えをとり方足を一歩前へ出す。
「ギュルル!」
「ぎょええ!」
「しゃーー!」
リザードマン達が一斉にラクトへ向かって走り出す。
だがただひたすらに前へ突っかかってくるわけじゃなくて3方向へ真っ直ぐ向かってくる奴もいれば壁に貼り付けながら様子を伺う奴もいる。
しかしラクトはそんな事考えなくリザードマンがいる配置を確認し薙ぎ払う体制でバハムートαを構える。
「どんな行為や動きをしたってこのバハムートαではどうやっても回避する事はできない。くらいやがれ!!」
ラクトはバハムートαを横へ薙ぎ払い禍々しい紫色の光は形となってリザードマンを食い尽くす。
「キーーーーン!ガーーーー!」
ジューーーーー!
ジューーーーー!
ジューーーーー!
猛々しい奇怪音と共にリザードマン達は食い尽くされその姿形は焔となって消える。
「ふぅ……」
「す、すげぇ。コレがラクトの生み出した剣か…」
「魔法ではない力……こんなのまるで。」
「魔王の力かしら。」
シューーー!
スッ!
ラクトは振るったバハムートαを横へ軽く空を切るかのうようにして動かす。
まずいな。
まだ炎が滾っている。
まだ食い尽くし足りないと言わんばかりに俺の腕を持っていこうとしている。
コレが内包した力の代償か……
「………」
「ラク君。その腕…」
「え?ああまだ燃えていますね。恐らくまだ足りないんでしょう。この炎を消すにはまだ殺し足りないんだと思います。」
「そのままの状態だとどうなるの?」
「…………さてとりあえずここから早く出ましょう。いつ次の敵が押し寄せてくるかわかりませんし…何よりも熱源帯に僕らの体がどれぐらい持つかも…」
「はぐらかさないでちょうだい。後今更になって敬語に戻さなくていいわ。ここにいる私達は今のあなたと話しをしたいのよ。」
「……そうか。そうだよな。無理があるよな今更。」
しまった。
完全に気を抜いてしまったか。
いやそもそも無理があったんだ。
ギリギリになる展開で自分を装うというのがあまりにも不可能という話しなんだ。
はぁ〜まさかに続いて…ルミナの後にこの3人バレてしまったか。
「そうだぞ。何で猫を被ってたのかはわからないが今のお前の方が何だか俺的には話やすいしな。」
「うん。丁寧な言葉で話すお兄ちゃんもいいけど。やっぱり俺様口調もいいもんだよね。」
1人若干違うベクトルの感想を言われてる気がするが…まあそこはひとまず置いておこう。
「分かった。ここにいる3人の前では素の自分で行く事にする。ただ今はその話は後回しだ。ここを出るのが先…」
ゴゴゴゴゴゴ!
ダダシャン!
「な、なんだ!」
「地響き?」
「いや単なる地響きだけじゃない。……何かがくる。」
「!?来る!」
ズドン!
ズドドドン!
「モーーーー!」
「おいおい嘘だろ!ケンターとゴルテスじゃえねぇか!」
「……しかも大きい。この大きさだと私達即死になっちゃう。」
「………いや丁度いい大きさだ。」
俺はまだたえぎっているバハムートαをケンターとゴルテスに向かって指す。
「コイツらでバハムートαが喰らいつくには十分だ。」
「ま、マジかよ。それじゃあその力って最早化け物並みだよな。」
「かもしれないな。でもコレはガイウスと俺が作った得物だ。それ相応の形で試すには丁度いいだろう。」
「へ、こんな時でも試運転みたいな形で考えるんだな。正直呆れちまうよ。」
でも何か知らないが何処かルミナに似ている部分がある。
何かを試さずにはいられないという根性みたいなのが俺には分かる。
………そうか!同じアトリエという分野での魂があるから共通しているのか。
だとしたらコイツはルミナにとって相性がいいと言う事か!
「は、やっぱり気に食わねぇ奴だよお前は…」
バハムートαは雑魚処理に関しては力が大きすぎる。
そもそも俺がコレを扱う事事態間違っているんだ。
素人がこんな得物を振りまわすなんて事はあってはならない。
ちゃんと訓練やら修行をした人が扱う得物。
だから俺に合わないという意味合いでバハムートαは俺の片腕を持っていこうとしている。
早めに力を使い切らないと俺の片腕がどうなるか……変に連想して生み出すもんじゃなかったな本当に…
「3人とも悪いが力を馬鹿みたいに発動する。そのままここから離れてくれ。」
「うんわかった。このまま出口に向かう私達がいたら邪魔だものね。」
「チッ!全くもって気に食わねぇ。絶対に戻ってきやがれよ。勝手に死んだら許さねぇからな。」
ブン!
パシャン!
ゴルテスが殴ってこようとする腕をラクトはバハムートαを使ってゴルテスの腕を切り落とす。
そしてそれを養分の様にしてなのかバハムートαの炎は跡形もなく燃やし尽くし食い殺す。
「ふぅ……あんまし得物を使って体を動かさないから正直しんどいというのがあるな。」
でも俺がコイツらを守らないと物語の進行に携わる。だから何としてでも3人を守らないと。
「………お兄ちゃん。」
「何してるのマーシャ早く急いで!」
「……駄目あのままじゃお兄ちゃんが焼け死んじゃう。」
「え?何言ってるのよ。」
「お兄ちゃんの近くには熱源帯がある。あそこから放つ熱さは並大抵の人間なら耐えられないはずだよ。」
「!?そういえばそうね。でもなら何で耐えられているのかしら?」
「僅かに流れているあの紫色の炎。あれがお兄ちゃんを守ってくれている。でもあの炎がなくなったら。」
「!ラクトが死んじまうのか!」
「……多分。さっき2人が全力の錬金術と魔法の力で組み合わせた力を使ったからお兄ちゃんの中にある錬金魔法はほぼカラッカラなはず。このエリアの熱源帯に耐えられる力は残っていない。」
「じゃあどうすんだよ。俺達はこのままアイツを見殺しにするってのか。」
「………大丈夫。私が何とかする。」
「何とかってお前…」
「ガイウスは入口で敵が来ないか見張ってて。鍛冶師ならお得意のハンマーで怯ませるぐらいはできるでしょう。」
「当たり前だ!」
「うん。エルゼ…エルゼはその補填をお願い怯んだ敵がいたら風魔法で熱源帯近くにまで飛ばして。」
「ええ。」
「おいお前はどうすんだ。」
「私は……」
ドドドドド!
「………くる。」
突進してくるケンター。
コイツに立ち向かう程の剣捌きは俺にはない。
だからバハムートαでケンターの向かってくる力の引力を…
「はぁ!!!!」
ズシュン!!
ボォォォオ!
体事燃え上がる炎。
この体事の炎で向かってくるケンターの力の引力を移す。
向かってくるケンターの突進。
身体はデカいが超巨大モンスターとかではない為ほんの少しだけバハムートαを当てればそれでいい。
そうする事で今俺の体の熱がバハムートαは反応してくれる。
「け、けど!今にも溶けそうでヤバい!」
は、早く早く!奴の向かってくる力の引力そこに反応があれば……
……ピカン!
「今だ!」
ラクトは横へバハムートαを薙ぎ払う。
そうする事でバハムートαはケンターが轟寄せる力に向かって炎がくらいつきケンタを燃やしつくしながら瞬殺させる。
「くっ!」
炎が少し弱まってはいるが、さすがにこれ以上は持たな…
ヒューーーン!
な、何だ右腕の感覚が少し冷たい。
まるで誰かに冷やしてもらってるかの様な感じだ。
「いや冷やしてくれているんだ。勘違いじゃない。」
誰かに冷やされているというのは直様に分かった。
俺が逃げろと言ったのにも関わらずマーシャはまだ出口付近に留まりながら俺のサポートをしてくれている。
「あ、アイツ逃げろっていったはずなのに…」
けどマーシャがいるおかげで俺も生きながらえさせてもらってるのがあるのか……半ばマーシャの事をとやかく言えないな。
「ならもう一体とっとと仕留めるか!」
ドスン!ドスン!!ドスン!!!
歩いてくる速度は通常よりも遅い。
ゴーレムだからとは思うがそのせいで動きも鈍いんだろう。
……けど動きに関してはそこまで気にする必要はない。
ゲーム通りならコイツも同じやり方でやっつければいいはず。
「………バハムートαで奴の体を全て食い破る。そうして…」
ザシューン!
ドサ!
ドサ!
ドサ!
ゴルテスの囲まれている岩をバハムートαの炎で取剥がしていきその岩は燃えながらボロボロと地面に落ちる。
そうする事でゴルテスの身体はある部分が剥き出しになる。
「コアを発見。そこに全力の一刀両断をぶちかます!」
ラクトはバハムートαを大きく真上に掲げながら一歩前へ踏み出す。
「コレで終わりだ!」
そして、振り翳したバハムートαはゴルテスのコアを真っ二つにさき…全ての岩を燃やしつくしながらようやくラクトの右腕に取り巻いていた紫色の炎が弱まる。
「くっ完全にバハムートαの炎が消えなかったか。けどあとはどうにかして適当に冷ますやら何やらすれば大丈夫か。」
「よかった。お兄ちゃんの事をサポートする事ができて……そして私も決心がついたよ。コレからの先どうするかお兄ちゃんのおかげで自分がどうすればいいか決められた。本当お兄ちゃんとここに来られて良かったよ。」




