エリア突破・ラクトの錬金術の玩具
エルゼの言う通り。
キーストーンが関係している可能性がある。
モンスターが活発に動き出す影響。
それは前の神殿もそうだった。
キーストーンを回収して神殿から出ようとした矢先に関わりたくないモンスターが一気に押し寄せてきた。
もしかしたらこのキーストーンはモンスターを怒らせる何かがあるのかもしれない。
「キーストーン。本当にそれだけが影響しているのかな?」
「どう言う事ですか?」
「キーストーンを守らないといけないなら予めこの一帯をモンスター達が門番みたいな事をしているんじゃないの?憶測だけど、別で動かされているとかあったりしない?」
「そうだとしても…モンスター達をうごかせる何かの力が必要となります。釣られる餌が何かによるかもしれませんが…原因は不明です。変な憶測をたてるよりかは一刻も早くここを出た方がいいでしょう。」
「けどそれが無理だって話をしてんだよな?」
「そうです。だからこのペンダントが要になるんですよ。僕はただ単にこのペンダントを持ったままこの神殿の中に入ったわけじゃありません。あちこちに道標をつけてきました。」
「ひゅーやるじゃないのよ。さすがは未来のあるアトリエ師ね。」
「まじかよ。用意周到すぎじゃないのか。アイツがお前の事を気にかけるのも何となくわかった気がするぜ。」
「ワクワク。私にどんな装飾品を作ってくれるのか楽しみ。」
若干1人だけ別の事で期待に満ち溢れてる言い方をしているがひとまずそこは気にしないでおく。
しかし…
「ふぅ……すみません。今のは確実に出られるという手段とかじゃありません。あくまでも可能性と思ってください。僕の錬金術でも万能じゃありません。このつけているペンダントはある場所を指してくれるだけの物…確実しも正しい道順を指してくれるわけじゃありません。」
「え?それじゃあ絶対に出られるわけじゃないって事なの?」
「出られるには出られます。主に80%の確率で出られます。しかし…」
ここにいる全員が助かる保証がない。
もしかしたら誰かが犠牲になる場合もある。
ここからはモンスターに捕まれば即即死。
だからヤバいんだよ。
「しかし何?」
「皆さんここからは自分の事だけに集中してください。いいですか…周りの事は気にせず自分にだけ集中するようお願いします。」
「おうよ!勿論に決まってるだろ。」
「当たり前。人を助けるなんて余裕なんかないよ。私達のコレからがあるんだからね。」
よしコレなら自分達の命が重要だと言う事を認識してちゃんとここから出られるようわかってくれている。
心配はないというのが分かっただけで少し気持ちが楽になった。
「ラク君。」
「ふぅ……いきますよ。皆さん絶対に自分の命を守るだけ集中して僕についてきてください。」
俺は3人にそう告げ閉まった扉を開ける。
開けた瞬間背中に凍り付くほどの悪寒がしヤバいという感覚がひしひしと伝わる。
「………」
くっやっぱりそうだ。
迷路に変わってやがる。
この段階ではまずないと思っていたのに…こんな事になるとは思ってみなかった。
というよりもキーストーンがトリガーでこうなったのなら色々とキーストーンについての対策が必要になるぞ。
今ここ一帯…いや7つのエリアでは地獄と化している。
俺は3人を何としてでも脱出させないといけない。
例えこの命に代えても。
ラクトはペンダントがしるす矢印の方向に沿って道を進んでいき…即死級のモンスター避けて進む。
しかしあくまでもそれはモンスターと鉢合わせるのを避けて進むのではなく、どうにかして避けて進むという一か八かの賭けでエリアを抜けていく。
第7エリア…
ペンダントが指し示す場所はあくまでもモンスターの気配のみ…鉢合わせたらその場で即終了だ。
そうならない為にもひとまずモンスター達からなるべく気配を辿られないようにそそくさとこの場所から出るぞ。
「………」
ラクトは壁にそりながらモンスターの気配をどうにかペンダント頼りにして抜けようとする。
しかしそこでモンスター達を見かけ3人に小さな声で止まれと言う。
「皆さん一旦止まってください。」
「何どうしたの?」
「なんだヤバいやつでもいるのか?」
「あれは……リザードマンかしら。」
「ええ。ただの普通のリザードマンですね。」
普通に見かけるダンジョンとかにいる敵…リザードマン。トカゲの印象がもの凄く際立ってそこまで凶暴性はない。
凶暴性はないのだが……何やら目の色がおかしい。
「……とりあえずここから近い出口はひとまず進められそうにありませんね。」
「それなら迂回してどうにかして進む?」
「いやこの迷路をどうやって迂回するんだよ。」
「出口付近に立っていられるとやたらと迷惑よね。それにこんな所で手こずってられるわけにもいかないでしょう。」
「その通りです。なので皆さんここからは僕の錬金術でどうにかして第七エリアを抜け出せるようにあのリザードマンを回避させます。」
「そんな事ができるのか。」
「はい。でもそれには誘導が必要です。だから…」
「それは私がやるわ。」
「いえ大丈夫です。その為にコレをポジェットの中に入れてあるんですから。」
ラクトはポジェットの中に入れていた道具を1つ取り出す。
「ね、ネズミか?」
「何だか愛着があるネズミだね。」
まぁ俺の世界ではハムスターと言われているからな。ここでは不思議なんだろう。
それにここではこいつが1番有効打になる。
「それいけサクリファイス1号」
「サクリファイス1号?」
「サクリファイス1号?」
「サクリファイス1号?」
ギギー!
キュキュ!
俺が錬金術で作ったサクリファイス1号。
3人は何でそんな名前なんだと疑問に思っているが、それが何故なのか一目瞭然となる。
リザードマンが3体周りを警戒しながら注意しつつ中…下から1つのハムスター型の錬金術で作ったラクトのラジコン型のハムスターが近づく。
それに近づいてきたハムスターに3体のリザードマンが顰めっ面をしながら首を傾げる。
するとハムスター型のサクリファイス1号は笑顔を見せつつニヤっとしながら。
キュピーーーーん!
ドッカン!
「よし!派手に爆発したぞ!」
「………そう言う事。
「………そう言うことかよ。」
「成る程ね。」
爆発したサクリファイス1号。
それに3人は何でサクリファイス1号とラクトは名付けたのかすぐさまに察しとんでもない錬金術師なんだなと改めて実感した。
「ほらいきますよ。このエリアを抜けたら第7エリアからの追手は来なくなります。このまま突破し続けていきましょう。」
「囮って今のがもしかして…」
「そうです。誘導という意味では少し離れた場所で爆発してもらう。なんともまぁいい作戦だと思いませんか?」
「それが装飾品を作るアトリエの錬金術師かよ。ただの得たいのしれない何かを作る爆発魔だぞ。」
「結果よければそれでいいんですよ。」
「いやそうかもしれないが…」
「そうだよ。お兄ちゃんに文句は言わせないからね。」
「お前も俺達側でコイツ大丈夫?みたいな反応してただろう。」
「……」
「目線を逸らすな逸らすな。」
「でもコレならどうにかして脱出できそうね。今の威力だけでもあのリザードマンは相当参ってるみたいだし…」
今のが何度も通じればの話しだけれどな。
次が同じく通じる相手がどうかはわからない。
正直2度3度までならいけるかもしれないが…そう易々と上手くいく保証なんてない。
このままどこまでいけるかだな。
俺たちはそのまま各エリアをどうにかして、サクリファイス1号を使って門番と思われるモンスターたちを爆破させ切り抜いていきながら乗り越える。
そしていくつかのエリアを切り抜けながら俺たちが到達したエリアは…
「ふう~どうにかして第2エリアまでこれましたね。」
「なんだかあまりにも突拍子すぎて、わけがわからねえ。リザードマンが意味の分からない爆発した鼠にやられてどうリアクションしたらいいか反応に困る。」
「そもそもお兄ちゃんが優秀すぎるんだよ。きっと私たちみたいな凡人には理解の得られない領域なんだよきっと。」
どういう理屈で話してるのかしらこの子。
この子自身が私よりも優秀みたいな発言をしていたのに最早自分が劣等扱いで話してるわね。
神経どうかしてんじゃないのかしら。
「………妙ですね。流れが変わった気がします。」
「流れ?どんな流れが変わったの?」
「ここまできて思ったことが2つ。……1つはここまでリザードマンしかでてこなかった事…」
「え?ここにはリザードマンしかいないんじゃないの?」
そんなわけあるかよ。
リザードマンしかでてこない場所とかどんだけ糞ゲーなんだよ。
普通は各エリア毎に色々なモンスターがでんだよ。
なのにこうも同じモンスターだとこの神殿には嫌な気配しか漂っていない。
じゃあその気にするべき点はなんだという話になるわけだが…
「リザードマンしかでないなんてことはまずないわよ。少なからず色々なモンスターがいるわよ。ここだとケンタ―とかゴルテスとかね。」
エルゼが言うケンターとゴルテスという名前はケンタウロスとゴーレムという略称だ。
よく出てくるゲームのモンスターであるためそんな名前なのかと突っ込まれる奴もいたりするが……大抵の小説と漫画とゲームにはよく似たような名前ででる。
※ケンタ―=ケンタウロス
※ゴルテス=ゴーレム
「ふーんそうなんだね。別に興味ないからいいんだけど。」
「本当に興味なさそうだな。どいつも強敵モンスターだと思うんだがな。」
「無銘のギルドからしたら強敵に見えるんじゃないの?」
「いやかんけねえなだろう。てか別に俺たち無銘じゃねえからな。」
「あははは笑える冗談だね。今のはさすがに笑っちゃうね。」
「いやガチなんだが…」
「………え?マジ。」
あまりにも衝撃的だったのか真顔のままガイウスの言葉に驚愕する。




