お互いの錬金術での腕前比べ
昨日と今日の不法侵入に対して無かった事になる事を喜ぶルミナ。
こういった小悪魔的な彼女の存在に対して周りに人気なのもやはり主人公補正なのだろうか…その辺あまり悪い話を俺は聞いた事がない。
単に馬鹿な性格だからなんじゃないかという話もある為、確かにそうかもしれないとなんだかそう思い始めている自分がいる。
「ねぇねぇラクト君。この錬金釜なんだけど、コレって使えたりするのかな?」
「そりゃあな。わざわざ地下を作って錬金する為の場所を作ったんだ。こんな所の他になにがあるというんだって話になるだろ。」
「いや別にそこまで酷い言い方はしてないんだけど……それじゃあお詫びにと言っちゃあれなんだけど、ラクト君が私に不法侵入という疑いがあるからその疑いを晴らす為に1ついい物をみせてあげるよ?」
不法侵入という疑いを晴らす為にいい物をつくるだって?……不法侵入以外の他にいったいなんの疑いで俺はお前に疑いの眼差しを向けなきゃならないんだ?
もしかして自分は何もしてないというアピールをしたいのか?
だとしたら無意味な気もするんだが…
「え〜とそれじゃあ最初にまずは私がやる錬金術を見てもらうわけだけど…驚かないで見ててね。」
そう言われてはい簡単に驚きません。
と言いたいんだが…ただ混ぜ混ぜする錬金術に俺はいったい何に対して驚けと言うんだ。
「まぜ〜まぜまぜ〜まぜ〜♩」
何を混ぜているのだろうか。
何やら鉱石や部品?みたいな物を入れて混ぜている。マジで何を作るかは予想できない為ルミナがどういったものを完成させるのかを待つ他にない。
「よし!後は出来上がるのを待つだけね。」
「どれぐらいで出来上がるんだ?」
「う〜んとね。ざっと2時間って所かしら。」
「な、なんだって?」
「だから2時間よ。2時間。今とっておきのものを作ってるんだからそれぐらいかかるのよ。」
「簡単な何かを作ってたんじゃないのか?」
「勿論それもできるけれど、やっぱしいい釜があるといい物を作りたくなるじゃない。」
「なるじゃない?じゃないよ。勝手に人の錬金釜を使用して何勝手に長時間する物を作ったりしてるんだ。違う意味でびっくりだよ。」
「ムム!じゃあラクト君は何か凄い物を手早く作れる事ができるのかしら?できないわよね。何せ錬金術は高度な物を重ねれば重ねるほど時間がかかるんだもの…どんなに優れた錬金術師とてそれはどんな壁でも乗り越えられないものなのよ。」
そう並大抵の錬金術はそう簡単には良いものは作れない。
恐らくラクト君は良い物を作る為にこの錬金釜で念入りに混ぜ混ぜさせながら作ってるに違いない。
彼には何かそういった特別な力みたいなのを持っている。
私はそう思ってるから彼に…ラクト君を仲間として必要としているんだ。
「……いや俺その錬金釜使ってないんだよな。」
「……へ?使ってない?ど、どど、どう言う事!!」
「落ち着け、動揺し過ぎて言葉が乱れてるぞ。……うーん何と言えばいいのか、俺の場合錬金術で物を作るというのはあまりしていないんだよな。本当に何か必要な物を作る時はしているんだけど、主に使わずに錬金しているんだよ。」
「ど、どう言う意味?それじゃああなたはどうやって、あんな意味深な物を作ったりしているの?」
「う〜ん……まぁ見てもらった方が早いか……」
俺は近くにあるテーブルに腰掛け試作段階であるアイテムを引っ張りだす。
「それは?」
「ただの骨董品か何かだと思うかもしれないけどちょっとした細工をするだけでこんな見た目でも日常品的な物が仕上がるんだよ。今はまだ試作段階だけど……多分この世界にとってはとても珍しい物になると思うぞ。まぁ日常品と言ってしまったのは少し違うな…危険な物での日常品かな?」
ラクトは試作段階であるアイテムに自身の錬金術を使いみるみると形を生成させながら1つの物へと変形させていく。
なんだろ。
何かコンパクトみたいな物に変わりつつあるみたいだけれど…いったい何ができるのかしら?
「よしできた。完成だ。と言っても使い捨てではあるけどな。」
「コレは何?」
「よーく見てろよ。」
俺は壁に的当てのハリボテを貼り距離をとって完成した物をそのハリボテに向ける。
「……狙いを定めてっと。」
カチャ!
バン!
ズドン!
シュ〜〜〜
「………い、今のはいったい…って言うより何でナイフがそこから飛びでたの!?」
「ナイフを仕込ませての遠隔型錬金術とでも言えばいいのかなこの場合…ああそうじゃないよな。単にどう言う仕組みかを聞きたいんだっけか?それを説明するのは少しばかり難しいかな。俺とルミナではまず錬金術での構成が違うからその辺説明しても無理だと思っている。」
「もう!勿体ぶらないでちょうだい!説明しにくいならそれを見せてちょうだい。」
そう言ってルミナは俺から無理矢理まだ完成とは言い切れないナイフ銃を取り上げる。
「う、う〜ん?……どう言う構造なのコレ…物を中に仕込ませる技術もそうだけど、単純にナイフを飛ばす構成が全くわからないわ。ベースはいったい何から作り上げられてるのよ。」
まぁそう言ったのはトリモチガンをイメージして作っただけだからな。
俺の場合必要な素材をどうにかしてかき集められればある程度の工程差で1つの物が出来上がる。
釜で錬金術を使用でも勿論作れるがそれは時間がかかる為ちゃんとした物を売りたい時や閃いた何かがあればそうする。
じゃあ今売り出している物は不良品なのか?って言いたくなる奴がいるだろう。
その疑問はすぐに明白になる。
「う〜ん…理解をしたわけじゃないけれど、あなたにしか作れないのがあったりするのね。でもコレをあなたは試作品と言っていたわ。完璧な物を作るのだったら今のあなたの工程差は未熟な物を作ってしまうんじゃないかしら?」
「鋭いな。さすがは未来で優れた錬金術師様は見る目が違う。」
「そ、そんな風に褒められても嬉しくなんかないわよ。……えへへ〜未来の錬金術師か〜顔がニヤケまくってて笑顔が止まらないないわ。」
どんな言葉なんだよそれ。
顔がニヤケまくってて笑顔が止まらないって…最早病気にしか聞こえないぞ。
「は!?そうやって誤魔化そうとしても駄目なんだからね。ちゃんと説明してちょうだい。」
「いや別にはぐらかしてねぇし…今それを言おうとしたんだよ。」
俺は未完成である銃を釜の方へと持っていく。
「ちょっと今私がまだ錬金している最中なのよ。何をする気なの?」
「ああ大丈夫大丈夫。途中までの物でももう一つぐらいならちゃんと作れるように構成してあるから。それにここはアトリエ工房なんだ。たった1つしか作れないアイテムなんてもってのほかだろ?」
「た、確かにそう言われればそうかもしれないわね。……そうなのかしら?」
そんな事で頭を抱え込むルミナ。
そんなルミナを無視して俺は釜に銃を放り込む。
「ざっと30分って所かな。その間に朝飯ができてるはずだから食べにいくぞ。」
「え?私よりも短い時間で完成するのですか?」
「ああ。俺のはちょっと特殊な奴だからな。」
特殊だからと言ってそんな短時間で完成するのはどうかと思うのだけれど……
釜で製作されている間に俺達はセピリアが朝ご飯を作ってくれているのを迎えにいき食する。
「う、うわ〜!!こ、コレ、セピリアが作ったの!とても美味しそうだわ。」
「美味しそうではありません。美味しいのです。」
「いいきった!そんなに自信があるの!?」
「当たり前です。コレでも私は料理に関してはお手のものなんです。将来お兄様のお嫁さんになる為にもいっぱい努力を嗜んできたんですから。」
「ええ!!?あなた達ってそう言う関係だったの!」
「そんなわけあるかよ。妹の単なる悪ふざけな言い方だ。セピリアも妙な事を言ってルミナを困惑させるな。」
「え?私本気ですよ。」
「………」
目がマジすぎて反応に困る。
いやまぁ現実で本当に俺に妹がいたならヤバい話にはなっていたのかもしれないが……血は繋がっていても俺とセピリアは中身に関しては赤の他人同士なんだよな。
だからセピリアの事を恋愛対象としてみれるかどうかという話になってくると…何ともまだ言えないから困る。
はぁ〜この世界で妹と一緒になったという話があるから否定の言葉をかけられないから困るんだよな。
「そ、そうなのね。そうよね〜あなた達とても仲がいいんだものね。」
何故ルミナは若干涙目になりながら落ち込んでいるんだ。
こんな有様を見てショックを受けているのか?
それなら尚更余計にショックを受けて好感度を下げさせれば何処かへ行ってくれるんじゃ…
「……むむ、だとしたら一夫多妻とかもあるって話よね。妹ちゃんなら仕方がないかもしれないわね。」
「………」
何かヤバい事を言ってる気がするが俺はその事に触れず食事を続ける。
「お兄様達私が料理をしている間に何処へ行かれたのですか?」
セピリアはボルテにご飯をあげつつ俺達が何処かへ行っていたのかを聞いてくる。
「ああ地下のアトリエ工房にな。」
「え?地下の工房へですか?何か作られているものでもあったのですか?」
「試作段階の物を途中まで作っていたやつがあっただろう?それを完全につくらせつつルミナが自分の錬金術の自慢をしたいって言ってルミナのお自慢の腕前を披露してきたんだよ。」
「ちょっと!その言い方だと私が目立ちたかってるみたいな言い方じゃないのよ!」
「え?違うの?」
「違うわよ!私の錬金術でもっと私の事を知ってほしい為にあなたに披露したのよ。そして私の錬金術の腕前然りね!」
「………」
「………」
それって同じ意味では?




