迷子になった幽霊船で自己紹介?
魔法使いっぽい女の子? サディスティン・エルゼファアール
ひとまずよく分からないこの状況で俺は…いや俺達は自己紹介する事になり彼女に言われるがまま言う通りにする。
「ふむふむ。アリシアちゃん、セピリアちゃん。そしてラクト君ね。うんじゃあもう一回改めて私の名前を言うわね。サディスティン・エルゼファアール。長いからエルゼって呼んでくれていいから。」
「そうですか。ならエルザさん。」
「ああ、でも男の子のあなたに略称される名前は言われたくないかな。ちゃんとエルゼファールさんと呼んで頂戴ね。」
め、めんどくさ。
「す、すみません失礼致しましたエルゼファールさん。」
「うむよろしい!歳下は歳上に敬意を示すものだからね。ちゃんと弁えるように。」
お互いの年齢を確かめていないのに何で俺が歳下という認定にされたのか意味不明なんだが。
「というか自己紹介なんかしてる場合じゃなくないですか?何だかさっきより寒気してきたんだけれど…」
アリシアはそういいながら俺の服裾を握りながらカタカタと震える。
「大丈夫ですか?寒いなら僕が着ている上着お貸ししますよ。」
「い、要らないわよ!なんで大嫌いな男から上着を借りないといけないのよ。調子にならないでくれる!」
その嫌いな男の裾に藁にでもしがみつくお前はいったいなんなんだ。
言ってる事と行動が合わないぞ。
「はぁ〜セピリア。クローデルさんにセピリアの羽織1つ貸してやってくれないか。」
「嫌です。その人私嫌いなんで。」
個人的理由で断った。
単に子どものワガママじゃないか。
「はぁ〜もう見るに耐えないな。」
俺は無理矢理自分が羽織っていた服を脱ぎそれをアリシアに着させる。
ものすごい文句と罵声を浴びさせてくるが、相手が弱っている姿を見るのは見るに耐えない。
「……ふん。余計なお世話よ。」
そう小さく呟きながらアリシアは暑い羽衣をギュッと握りしめながらラクトへ聞こえないように文句を言う。
「にしてもここからどうするかだよな。肝心の目印となる宝石はもう役にはたたない。かといってこのままあちこち歩いていてもどうしようもない。」
「完全に万策が尽きたみたいな話にはなっているけれど、少し歩きながら話しましょうか。実はここから面白い話になるから。」
面白い話し?
俺達はお互い首をかしげながらエルゼの後へとついていきこの幽霊船の中を探索する。
「君達ってさ、本当にこの世に幽霊なんてものは存在しないみたいな考えってあるかな?因みに私は存在するって答えになるわね。」
「じゃあそれでいいんじゃないですか?」
「はい。私もそれでいいと思います。」
「ちょっとちょっと!少しは私の話に乗っかって頂戴よ!」
「ふ、ふん!い、いるわけないでしょう!だいたい今この寒気差だって、単に船内が冷えきってるだけでしょう。そんな非科学的根拠私は信じないんだから!」
非科学的根拠ならもう目の前に起こってると思うんだがな。
「まぁいる派そうでない派がいるのは勿論の事分かっていたけれど、流石にこの状況で全員いるって答えてくれたら面白い話がだせてたのにね。」
「………」
「あの〜いるいないという話の前にどうして船は迷子になってしまう状況に陥ったのでしょうか。何かに巻き込まれたという線が1番妥当だとは思いますけど…手当たり次第に巻き添えにさせてしまうというのは納得いきませんというか。」
「そ、それもそうよね!誰かが自発的に煙を海に撒き散らしてあたかも幻覚をみせようとさせているというのもあるのじゃないのかしら。ほら錬金術師だったらできない事でもないんじゃない。」
まぁ確かにできない事ではないな。
でも海を範囲にしてはあまりにも規模がでかすぎる。巻き添えにさせるならばテリトリーやら周りを囲む為の土台が必要となる。
でも並大抵の錬金術師にはそれは不可能な事だ。
ましてやルミナが超一流の錬金術師になったとしてもそれを実行できる保証はない。
「まぁそれに関しては私も疑問に思ったわね。どうしてこんな事が起こって、意味の分からない現象が起こっているのか…正直私にも分からなかったわ。でも頼まれた以上原因を突き止めるのが私の仕事なのよ。」
何だか使命みたいな形でいうけれどこの人何者なんだ?まだ名前しか言われてないからピンとは来ないけれど……まさか。
「はぁ〜それでエルゼさんは何か原因を突き止めたのですか?」
「さっき船が戻らなくてすむようになったって話を覚えてる?実はアレの原因を解消したのは私なのよ。」
「そうなのですか?てっきりたまたまかと思いました。」
「そう思われても仕方がないよ。だって特に何が原因としてわかったというわけじゃないから。単に船の行く先の進路を変えたらどうかなって話をしただけだからね。そしたら案の定進路を変えたら船が迷子にならずにすんだって事なのよ。」
「因みにどうしてかは分かるのですか?」
「船が迷子になるという事はその行き先を止めてる何かがある。その何かというのを私はある仮定を導き出したのよ。……錬金術と魔法。コレらが関係しているんじゃないかってね。」
「は!?じゃあやっぱり幽霊とは無関係って事なんですね!」
「そうとも言い切れないのよね〜」
「え〜〜〜」
露骨に嫌そう顔をするアリシア。
まぁ言わんとする事はわからんでもないが…
「そうとも言い切れないという事はコレら全てに何かしら仕組みがあるという事ですか?」
「仕組みがあるか…そうも思っていたんだけどね〜」
「もう!さっきからハッキリしませんね!面白い話をすると思えば何かしら遠回りな言い方ばかりして!何ですか!嫌がらせですか!そんなに怖がらせていったい何の得があるというのですか!」
そんな興奮気味で話したら向こうが面白がるだけだろうに…それに気付かないというのがまぁアリシアらしいというか…
「ああ別にそう言った意味で話してるわけじゃないから。それに確かに面白い話があると言っておきながらやたらと遠回しな事ばかり話して悪かったわ。」
「で?面白い話しというのは結局なんなのですか?」
「……おっと。その話をする前にたどり着いたみたいね。」
面白い話をしだす前に妙な扉の前に辿り着く俺達。この扉に何か面白い事があるというのか?
「じゃあ扉を開けるけど、皆んなは絶対に大きな声をあげないようにしてね。」
「は?それってどういう…」
エルゼの言葉の意味に疑問を抱きながら説明を聞こうとした瞬間扉を開け出すエルゼ。
するとそこから…
ギャギャギャ!
キキキキキ!
ひょえ!ひょえ!
「ひっ!…」
ガシ!
俺は慌ててアリシアの口元に手を塞ぎながら大きな声を出させないようにする。
てか思いっきり幽霊みたいなのが出てきてるんですけど。
「わあ〜コレはコレはお化けさん達がたくさんですね。」
なんでセピリアは平気でいられるんだ?
お化けの類いとか女子って苦手じゃないのか?
「きゅ〜〜〜」
「あ、ちょっとクローデルさん。しっかりクローデルさん。……だ、駄目だ完全に気絶してしまった。」
「全くあの人のお仲間さんって、どうしてこうもまぁお兄様の足を引っ張るのでしょうか。どうします?ここに置いていきますか?」
とんでもないことを言い出す我が妹。
我ながらたくましいというか何というか……
「いやひとまずこの状況をどうするか考えよう。エルゼファールさん何でここへ入ったのですか?って!エルゼファールさん何してるんですか!」
「うう〜ん?探し物かな?え〜と、多分ここら辺に……あ!あったあった。」
何かを見つけたのかエルゼは思いっきり部屋にあったクローゼットを押し倒し埃が舞う中で何かを発見する。
「よいっしょっと!」
エルゼは何やら発見した物に何かの粉を振り撒ける。
すると振り撒けた場所にある何かの魔法陣みたいなのがスウーと消えていきこの部屋から幽霊っぽい物も消え出す。
「き、消えた。というか今のって…」
「お化けでは無いみたいですね。幻覚みたいなのもって感じしましたね。」
「あらお嬢ちゃん意外と察しがいいわね。」
「幻覚?今のが幻覚とすればこの船も幻覚に因んだ何かに関係があるって事ですか?」
「幻覚だけれども、それ全てが幻覚というわけじゃないわね。船が迷子になってしまっているのも私達が勝手に迷子になっているだけ…つまり」
「思い込みという錬金術もしくは魔法錬金のどちらかという事でしょうか。」
「へ〜本当に頭がいいのねあなた。お姉さん少しビックリだわ。そう私が完全に理解していないのはそのどちらかの関係性があったから不確かな答え方はできなかったの。ましてや私という存在がありながらこんなできそこないのマジックを行われると少し腹がたつのよね。」
今マジックといったか?
マジックという単語を発する人物はもう大まかに縛られる。というかこの人絶対にそうだ。
「マジック?と言いますとあなたは魔法関係の何かですか?」
「そう。実は私魔法使いなのよ。」
「………は?」
出たよ。魔法使い…いやいてもおかしくない世界なんだけれどこの世界では稀にしか存在しない魔法使い。と言っても根本的な部分では錬金魔法と対して変わりはしないんだけど…この世界での魔法使いという自称する奴は大抵ロクなやつじゃない魔法使い……錬金術という名前を冒涜するような批判する類いの一部だ。それがまさかこんな直ぐに現れるなんてな。いやその辺に関してはひとまず後回しだ。魔法使いがここに現れたというなら今あるこの現象は…
「魔法使いと言いましたか?つまり今起こってるこの現象は錬金術じゃなくて…」
「そう単なるお化けとかの仕業じゃない。コレは私と同じ境遇の人間が起こしている。つまり他者の仕業だって事ね。」




