シリアスな空気なのに場を掻き乱してくる人達
………船内
「うんコレ完全やられたわね。」
「ですね。」
船内に入った瞬間違和感を感じたけど、案の定やられたってわけか…
「お兄様ここ私達が乗ってきた船とは別の船ですね。」
「え?そんな事が分かるのか?」
「はい。コレみてくれますか?」
セピリアは首元にぶら下げていた光る緑色の宝石をコチラへ見せてくる。
「光っているな。けどそれがいったいどうしたんだ?」
「はい。このネックレスは現在地から遠く離れる位置に対して光るように作られているんです。言ってしまえば迷子になったらこの宝石がちゃんと道標として役立ってくれるという事ですね。」
「だから何かレーザーみたいなのが出てきているのか……ん?ちょっと待てセピリアはどうしてそんな物をぶら下げているんだ。それにその宝石…昔セピリアから僕に故郷から離れる時に渡されたのを覚えているぞ。」
「え、え〜と、何の事でしょうか。セピリア小さな頃の記憶はあまり持ち合わせていなくて、正直覚えていませんね。」
白々しく目線を泳がせながらはぐらかすセピリア。
はは〜ん。それで俺の位置を特定して俺のいる場所まで来たってわけか。
いざとなればいつでも俺の所へ来られたって事なんだな。
「ふぅまぁその事に関してはおいおいと話を聞くとして…それで前の船にその石をおいて来たって事なのか?」
「はい。コレが特定する場所にセンサーが働きそのまま私達を導いてくれます。しかもここに来る事がなかったあのアリシアさんという方に石を渡していますので何も問題は…」
グィーーーーン!
しかし緑色に光っていた宝石はあらぬ方向へと刺し俺達の真後ろへとさしていく。
「あ、あれ?何故でしょう。私達が来た方向に向かって指しています。」
「た、確かにそうね。もしかしてそれも故障?」
「いえちゃんと起動はしていたので故障はしないはず…」
俺達3人は後ろへと振り返り光が指す方向へ何か足音が聞こえてきて近づいてきているのが分かり構えをとる。
しかし緑色の光はだんだんと細く小さくなっていき出力が弱まったのか縮まっているのが分かり何やら線と線が結ぶかの様にして距離が狭まっていく。
「な、なぁ?コレ近づいてないか?というよりも…」
「は、はい。私嫌な予感しかしません。」
「はぁはぁ…や、やっぱり私も行く!あんな所で1人にさせられたのはたまったものじゃないんだから。その怖さあなた達にわかる!……ってあれ?どうしたの?何だか険しそうな顔をして何かあった?」
「ど、どうしましょうお兄様戻れなくなっちゃいました。」
「あ、ああそうだな。」
うわ〜と思いながら顔を引き攣りつつやっぱりルミナの仲間はやらかしてくれるなとそう思ってしまった。
「ああ〜コレじゃ元の場所に帰れなくなったわね。まさに私達まで迷子になってしまったってわけね。どうしてくれるのかしら?」
「いや、その、あの……ううー、す、すみません。」
やたらと落ち込むセピリア。
まさかの出来事が起きて珍しく落ち込む姿は小さい時のセピリア以来だ。
まぁアリシアが船内に入ってくるとは思っていなかったんだろうし後直ぐに戻って来られるとでも思ったんだろう。
賢い所はいいんだけど、たまに気にしない部分をポカしているのがあるからなセピリアは…
「全くあなた達を連れていったのがもう間違いとしか思えなくなってきたわ。結局どうするのよコレから…無闇にこの船内を周るのは無謀すぎると思うわよ。」
「た、確かにそうですよね。何かしら目印みたいなのがあれば話が別だったんですけど…」
「目印って…あなた船内の構造を頭に汲み込んでいるの?」
「あ、はい。こう見えて私記憶力はいい方なので何か見覚えがありそうなものなら直ぐにでも違和感に察知して気付けられますよ。」
そううちの妹は記憶力抜群な子であり尚且つ目に入った物は絶対に忘れないという記憶完全能力を持っている。
だからセピリアにはあの村で両親の為に色々と役立ってくれるだろうなと思って、任せられたと思ったのに…まさか俺の所へ来てしまうとはな。
「そう。ならばしらみつぶしで歩き回る他ないわね。」
「え!待って待って!この不気味な船内を周るって事ですか!正気ですか!本当ですか!馬鹿なんですか!」
「やらかしたあなたにそんな事を言われる筋合いはありませんよ。第一あなたがあの場所にいたなら心配なくこの船内を周れたというのに…」
「いやいやあの場所に1人残すという選択肢が既におかしいんですよ。こう見えても私はお偉い方の娘なんですよ。もし私に何かあればあなた達にとんでもない迷惑がかかるって事分かってて言ってるわけ?」
「はぁ〜〜!ちょっとそこのお兄さん!この人頭どうかしてるわよ。自分を棚に挙げて、コッチの責任が問われるみたいな言い方をするって人間としておかしいわよね!?どういった付き合い方をしてるのよ!」
いやうんそれについてはかなり同意ではある。
あるんだけれど…正直接点しない形でいたからアリシアの性格にとやかく気にする必要性はないと感じてはいたのだが……この4人での関わり合いを気にしたらそういう問題じゃないなと思い始めてきた。
そしてアリシアが言うようにコイツは本当の令嬢だから達が悪いんだよな。
「クローデルさん落ち着いてください。確かにあの場での僕達の判断ミスではありました。けれどあなたがあそこから動きそうになかったからセピリアはあなたに石を託して安心していたんです。まさかここに来るとは誰が思いますかという感じで変に揉めているだけなんで変に恐怖して突っかからないでください。」
「はぁ!?何?その言い方だと私が原因だからあなた達に迷惑をかけてしまっているとでもいいたいわけ?それに何よ石を託して安心していたって、それならそうと何かしら一言あってもおかしくないでしょう!後私を1人にする魂胆が憎たらしいのよ。男なら恐怖している女性の側に立つのが男ってものじゃないの!」
駄目だ。怖がりすぎて、全然話が通じない。
あと話していることが支離滅裂だ。
最早自分の言ってる事に矛盾点が生まれているのに気付いていない。
というか自分勝手……
「そ、そうですね。明らかに僕の判断ミスでした。クローデルさんを怖がらせた事大変失礼致しました。」
無闇に刺激するのだけはやめよう。
かえってめんどくさいことになってしまう。
とりあえずこのまま謝って話を進まなければ…
「はぁ!?誰が怖がったですって!いったい私の話しをどのように聞いていたわけ?誤解を生むのも大概にしてほしいわね。」
あ〜〜めんどくさいめんどくさいめんどくさい!
とっととコイツを突き放して〜〜
「お兄様この人めんどくさいですね。」
「な!?」
「お、おいセピリア!?」
完全に言っちゃいけない一言。
それを本人の前に言ってしまったら当然怒るのは間違いない。
それをセピリアは発言してしまった。
「セピリア流石に今のは謝りなさい。いくら思っていてても言っちゃいけない事と言っていい事があるだろう。」
「でもでもお兄様!この人単に構ってちゃんみたいな態度で放置しないでほしいアピールをしているだけですよ。こんな人と一緒にいたらお兄様がどんどん悪い方向へはなしが流れていくだけじゃないですか。」
いやまんまお前と変わんないだよな。
そっくりそのままブーメランなんだよ。
何故自分は俺に害がないと確信している物言いをしているのか俺にはサッパリ分からないんだけど…
「わ、私。め、めんどくさくないもん。」
ああ泣いちゃったよ。
地味に傷付くのかよ。メンタル弱い癖にあんだけの意地っ張りはなんだったんだ。
強がるぐらいなら弱音を吐けばいいのに…
「え、えーと。そ、その…」
こっちはこっちで慌てふためいてるし。
自分の発言した言葉に耐性ないのないなら口にするなよ。
「ちょっとどうでもいい話しは後にしてもらえるかしら?」
「そ、そうですね。変に話が拗れてしまいましたし…ひとまずコレからどうするのかを話しあって…」
「まだ自己紹介がしてなかったわね。私の名前はサディスティン。サディスティン・エルゼファアールよ。みんな長いからエルゼって呼んでもらってるから是非そう呼んでもらいたいわね。」
「………」
え?ここで自己紹介?物凄い今更なんだけど!
いや今までの流れで確かに自己紹介してこなかったのが不思議なくらいではあるが…でも今ここで?あなた空気読んでますか?
今かなりカオス的な状況ですよ。
あなたが余計にカオスにしてどうするんですか。
「ええ!今自己紹介するんですか!とんでもなく空気読めてませんね。」
「あなたにだけは言われたくないわよ。人の心をズケズケと入り込んでえぐってくるあなたにはね。」
「別にえぐってるわけじゃなくて本心を言ったままなんですけど。」
「ガーン!本心って…じゃあ私とんでもないめんどくさい人間って事なの。コレでも人前ではちゃんと清楚で通ってるのに…」
いや何処がだよ。
ちゃんと鏡見てから言えよ。
全然清楚とかじゃなくて我儘で扱いにくい女の子じゃねぇか。
自意識過剰なんじゃないかアリシアは。
「ちょっとちょっと話がだいぶ拗れたじゃないのよ。はいそこの君!さっさっと自己紹介する。じゃないと話が進まないでしょうに。」
「え?自己紹介をする流れになってる?何故?」
意味の分からない形の流れでこの魔法使いの人が無理矢理場を仕切りだし場が乱れて最早この状況を誰か説明してほしいと言わんばかりになってしまった。
……確実に俺以外の3人が場を掻き乱しているよな。うん絶対にそうだコレは勘違いでもなんでもない。
……そう自分に言い聞かせるようにしよ。




