戻ってくる船と戻ってこない船
ルミナは颯爽として魔法使いみたいな子に声をかける。他の人達はもう要は済んだのか一部の人達が離れていく。
「あらあら元気な子ね。私に何かようかしら?」
「この人の集まりは何?何かの変な事でも起きた?」
「まぁ直球な子ね。でもまぁそんな感じかしらね。ここに集まってきた人達は次へ向かう都市や街に向かう為の隻を待っていたのよ。でも残念ながら今日はここに来る事はなかった。」
「え?でもさっき残り2隻って言わなかったかしら?」
「あれは最終のやつが残り2つと言っただけよ。と言っても被害が及ばない所への船だけれどもね。」
「被害が及ばないって因みに何処を指しているのですか?」
「あら今度は可愛いお嬢ちゃんが質問に?それとやたらとモサイ男の子も一緒なのね。」
モサクて悪かったな。
「お兄様はモサクありませんよ。妹想いの兄様なのです。」
「え?シスコンって事?それはそれでヤバいわね。」
「そんな事ありませんよ。お兄様はちゃんと私の事を大切にしてくれますし何よりも私がお兄様を敬愛しているのですから。」
「つまり度が過ぎたシスコンって事なのね。……普通に引くわ〜」
「だから!」
「はいはいストップストップ。さっきから色々と兄妹の話しをしているけれど今はそこの話じゃないだろう。」
「あ、すみませんお兄様。」
「そうやってタカガ外れて兄妹関係の話しをするのはセピリアの悪い癖ですよ。反省しましょうね。」
「うっ、め、目が怖いです。」
「………」
「あ、因みにシスコンとかではありませんからね。寧ろ妹の方がブラコンでありますからそこは訂正させてください。」
「私何も言ってないんだけど。」
目が言ってんだよ。目が…
それに否定しないとそのまま鵜呑みにするだろうに…
「そうよ!ラクト君は私みたいなナイスバディなのが好きなんだから!」
「………そう言う趣味なのね。」
うんお前も黙っていようなルミナ。
後でじっくりと話しをしよう。
「あの〜とりあえず話を進めてもいいでしょうか?このままだと僕達がここにきた事にすらちょっとした疑念が生まれてしまうといいますか。」
主に周りの視線や俺の心がヤバい。
「あれれ〜ラクト君いつもの口癖なのはよくないよ。ほらあの時みたいに堂々と話せばいいんだよ!」
「あの時みたいに?」
「うん!それはもうカッコいいんだから!だよねラクト君!」
わざわざ本人を目の前にして尋ねる事かそれ?
普通いない所で言わない?
やっぱりどうかしてるよこの頭逝かれ主人公は。
「こ、コホン!無視してくれて大丈夫です。話の続きをしましょう。それで何処に向かう隻なのですか?」
「向かう船はコロンビアとカルシフラの2つの村ね。その2つの船はちゃんとここに来て戻ってきているのを確認しているわ。まぁ本当なら後1つ無事に戻って来てくれたらいいのだけれど…」
「もう1つ?もう1つ船が出ているのですか?」
「ええ、コレはまだ不確定要素という事で試しているんだけど、徐々に霧に巻き込まれようにしてどうにか間を抜けきるルートを辿ってる船を出しているの。それがさっき5分前に出発したのだけれど……どうやら無駄に終わったみたいね。」
え?
その無駄という言葉に俺達3人は1つの船がコチラへ戻って来ているのを確認する。
どうやらあれが魔法使いの格好をしている子が言っていた船の様だ。
「悪いけど話はここまでね。あの船が帰ってきた事に関して色々と話さないといけないからまた次回ここに来る事があるなら話をしてあげる。部外者はそのまま帰りなさい。」
そう言ってあしらいながらそそくさと荷物を持って帰ってきた船が近くの船着場まで近寄って来るのを待機する。
「違う船を使って別ルートの開拓をしていたのか…何だ、ちゃんと船が行き来する為の補佐もやっていたんだな。コレなら何も心配しなくてもよさそうだ。このままアトリエに戻ってお店を再開しよう。」
そのまま後を振り返り戻ろうとした時ルミナの姿だけがなく何処にいったのかとあちこちに振り向く。
「あ!」
ルミナは船着場の所におり何やら魔法使いっぽい服を着た子と揉めているのかのような様子が見られる。
「アイツ!また面倒事を!」
「お兄ちゃん。ルミナさんって無鉄砲な性格なんでしょうか?どうにも猪突猛進というか何というか…」
「ああ、頭の中が空っぽとでもいいたいんだろう?ただそれだけならいいんだけどな。……いやよくはないか空っぽは空っぽでも何処かしら困ってる人がいたら助けたい性分なんだろう。」
「ふ〜ん。でもまぁ私達には関係ありませんね。このまま私達の家に帰りましょう。」
「アトリエな。勝手に自分の住処にしないでくれるか?お前は単に期間限定でいてもらうだけだ。船が無事に出航できるようになったらそのまま返すから。」
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!帰りたくありません!」
実家の方ではこういった駄々を見せて来ないセピリアが子どもの様に駄々をこねて帰りたくないと懇願してくるというのは俺にだけ見せる甘えなんだろうなと安心する思いがあるのだが……俺の中では少し複雑ではある。
「はぁ〜何も今すぐにじゃない。後々の話だ。その間はアトリエを自分の家だと思って使ってくれていいから、頼む普段のお前でいてくれ。」
「へへ〜そう言われたら兄想いの妹に戻るしかありませんね。」
単なるブラコン馬鹿なだけだろう。
何でそんな自分のレッテルをポジティブに考えられるんだ。
我が妹ながら少しめんどくさい。
「ラクト君ラクト君!」
何やら喧騒しきった顔をしながらコチラへ戻ってくるルミナ。
ガシ!
「こっちに来て!早く!」
「え!おい!」
無理矢理俺の手を握って連れていくルミナ。
いやもうコレ問答無用で厄介ごとに首を突っ込ませる気まんまんじゃないか。
あ〜もう!どうして俺の話を聞いてくれないんだ。
この鳥頭は!
「連れてきたわよ!」
「つ、連れてきたって…僕何かしないといけないんですか?」
「え?あなたが解決してくれるんじゃないの?」
「は?いったい何の話しですか?」
「いやそっちの子が後はそこにいる男の子と一緒になんとかするって言ってコッチに連れてきたんだけど……何?もしかして何もできずにこっちにきたの?」
うわ!マジかよ。
ルミナの奴何も考えずに解決できるって話をしたのか?何て奴だ。
しかもそれをコッチに丸投げしやがった。
とんでもない人任せだなおい。
「お?何だお前達どうしてここにいるんだ?」
「ガイウス!あなたこそどうしてここに?そういえば宿にいないと思ったら…まさかこんな所にいたとは…何処かへ行く時は必ず声をかけてて言ったでしょう。」
「声をかける前にお前がいなかったんだから仕方がないだろう。後お前にそれを言う資格はない。」
「な!?」
「……」
「ちょっとラクト君。何頷いるわけ!」
「で?お前達はどうしてここにいるんだ?」
「ああえーとですね。話をすると色々とややこしくなるといいますか。」
俺はガイウスにここまできた理由を話しつつ、現状の状況をも説明する。
「……はぁ〜お前も災難だなラクト。うちのルミナが大変迷惑をかけた。」
「ちょ!何で私が災難をもたらす言い方になってるわけ!」
「ようやく僕の意図が分かってくれる人がいて助かりますよ。」
「ラクト君!私厄介者扱いじゃないよね!違うよね!」
ガイウスがコチラの意図を汲み取ってくれてつい感極まってしまいジーンと心が和みつつ俺は敢えてルミナの言葉を無視する。
「まぁルミナがそうやって気に掛けて声をかける優しさはさすがは俺の幼馴染であって、惚れた女って所だけどな。へへ…」
何気ない感じでルミナへ露骨に惚れてるアピールをしてくるとは…やはりガイウスはただもんじゃないな。
「ふーん。あっそう。それで進捗はどんな感じなの?」
おっと…そんなガイウスに対してクールに交わしつついきなりの状況確認とは…この2人本当にどうして仲間になれたのか謎だな。
「ああ〜え〜と、そ、そうだな。進捗と言えばやっぱり間を抜ける為の霧が濃くてどうしようもできなかったな。」
そして若干動揺してしまうガイウス。
何とも不憫なり…
「ふ〜ん。じゃあ今度は私達で乗って試してみようか。」
「俺とルミナでか?」
「ううん。私とラクト君で…」
「……へ?」
今コイツ何て言ったんだ?
俺とルミナで確かめるだ?
ふざけんなよ。なんで俺が試しに行かなきゃならないんだ。
「おいおいいくらなんでも無理があるだろう。霧の中に入ってしまえば船の中はまるで迷路みたいになっていて幽霊みたいなのも出てきたりするんだぞ。そんな幽霊退治ができなさそうな奴に頼むってどうかしてるぞお前。」
ごもっともな意見だけど、それを脳筋馬鹿に言われると腹がたつ。
「大丈夫ですよ。私達も同行しますから。」
「アリシアとロイゼじゃないか。まさかお前らもいくつもりか?」
「こんな獣みたいな男2人とルミナを一緒に行かせられるわけないでしょう。馬鹿なの?アホなの?死ぬの?」
「な、何もそこまで言わなくてもいいだろう。」
そりゃあそうだな。
前よりか罵声が酷くなってるのは気のせいだと思いたい。
「ふむ。でしたなら僕に考えがありますよ。恐らくコレなら問題ないと安心して船旅ができると確証を得られる自信があります。どうです?僕達を連れていって損はないかと思いますが?」
「はなっから信じてないわけじゃねえよ。急すぎて驚いただけだ。つまり久々の旅にでる想いで、船を出発させればいいんだろ?それなら余計にやる気がでてくるってもんだ。」
「あは!何だか面白くなってきたね。ねぇラクト君。」
いやそこに俺を巻き添えにしないでくれるか?完全に俺部外者なんだが…
「……何この人達。当事者に頼まれている私を無視して話を勝手に進み出してる。マジで意味わかんないんだけど。」




