エスカとの共闘は全然バトルに特化しない
おいおい冗談だろう。こんな場所にこんな展開あり得るのかよ。
大蛇の尻尾が再生されて暴れ回るというのは予想ができた。
けどこんな場所に現れるなんて誰が予想できる。
「でもすぐそこに出口があるんだ。ルミナを助けたらその時点で俺達の勝ち…」
ギュイーーーン!
ギュルルル!
ズドン!
そう思ったの束の間まさかの出口付近にマッドイーターが現れ退路を塞がれてしまう。
「ふ、ふふふ。」
「あらら困難な敵が2体も現れたわね。」
「お、終わった。うん完全につんだわコレ。」
マッドイーターに大蛇。
まさに窮地の沙汰に被われてしまったらどうしようもできない。
こんなの打破できるなんて無理だ。
いくらチートもちじゃない俺からしても1人でコレをどうにかできるレベルじゃないぞ。
「いや待てよ。そもそもこいつらがここに集結しているには何かわけがあるはずだ。単にこんな所に現れるというのはおかしい。何かしら目的があるんじゃないか。」
「あら意外にも詮索できて偉いわね。」
上からの物言いが腹がたつが何かしら知っていそうなエスカ。
俺はその理由を聞かざるおえなかった。
「お褒めの言葉ありがとう。その言い方から察するに理由は分かってるって事なのか?」
「まぁそうね。でもコレはお前達自身が解決する問題であって私が手を貸す事でもないと思うから後は頑張ってもらいましょうかね。」
ふざけんなよ。このひ弱精霊が、コッチは命からがらようやく神殿を抜けられそうなんだぞ。
そんな人間を見定めるような発言なんかしやがって…
「じゃあ私はコレで…」
「おいおいここでルミナが死んでもいいのかよ。俺との交わした条件忘れたとは言わせねぇぞ。」
「誤解を招く言い方はよしてくれるかしらね。脱出をする手助けをしてあげると言っただけにすぎない。それをお前達がどうこうするという部分で私が介入する道理はないわ。」
「へ、変な屁理屈はよしてくれないかな〜単に目の前の対象にどうこうできないからそんな言い訳がましい発言をしているだけなんじゃないのかな?」
「私が怖気づくみたいな言い方をしても無駄無駄。だって、別に2人が死のうが私には関係ないんだもの。」
「強がりはよせよ。ルミナがいないと困るのは変わらないんじゃないのか?」
「ふっまぁその点に関してはそうね。けどルミナみたいな奴は色々な場所でゴロゴロいるわ。残念だけど、あの子とはここまでという事になるわね。」
仕方がない。正直コイツを手懐けたくはなかったが生き残る為にはやるしかない。
ここから去ろうとするエスカをラクトはエスカに興味を抱く言葉を投げかける。
「クロミスカル。」
「!?……おまえなんでその言葉を…」
「さぁ何でだろうな。」
「答えなさい。答えなければお前をここから出すわけにはいかない。」
「条件次第だな。ここを出させる代わりに俺に協力しろ。」
「聞こえなかった?ここから出すわけには行かないっていったのよ。なのに出させる?頭大丈夫なの?」
「俺のさっき言った言葉が気になるんだろ?ならルミナは絶対に助けないといけない人物になる。さぁコレをお前はどう捉える。」
「チッ要らない選択肢をだしてきやがって…」
2体のモンスターは俺達を待ってはくれない。
この状況を覆す方法があるとすればそれはコイツの他にいない。
「さぁどうする待ってる時間はないぞ。」
「このガキが……いいわその安い挑発のってやる。」
エスカは自ら発していた亜空間を閉じさせ俺の方へと寄ってくる。
「いいコレから教えるのはあくまでもお前の行動次第。それをどうするかは私のサポートにもよる。」
「了解。できるだけサポートを上手く立ち回らせる為にコッチでどうにかする。」
とは言ったもののここから俺ができるのはほんの一握りしかないぞ。
エスカがサポートをしてくるとなると俺の行動範囲内が限定される。
「となればやっぱりまずは…」
俺は先に仕掛けてくるかもしれないマッドイーターの方へ視線を向ける。
「まずはお前だな。」
そう言ってラクトは指をさす。
するとマッドイーターは何の躊躇いもなくラクトへと攻撃を仕掛けてくる。
「ばか!相手を挑発してどうするの。」
「ラクト君逃げて!」
そう言われて逃げる奴が何処にいんだよ。
俺は腰につけている巾着袋の紐を取り外し先っぽにつけている紐の部分つまりは導火線に火をつけそれをマッドイーターに向けて投げる。
すると…
ドッカン!
投げつけた巾着袋は爆発しマッドイーターは倒れ腹を見せて立てなくなり暴れる。
「どうだ!腰につけたきびだんご基粉塵爆発手榴弾だ!」
お見事と言わんばかりの相手を戦闘不能にさせるラクトの作った錬金道具。
まずは一体を怯ませ再起不能にした後次に大蛇に捕まっているルミナの方へ狙いを変える。
「さて次だ!」
しゃーー!!
大蛇は思いっきりコチラを睨みつけ威嚇してくる。
勿論恐怖でしかないこの状況に俺は踏みとどまるという選択肢はなく前を向いてそのまま走っていく。
「ちょっ!今度は捨て身で行く気!ちょっとは何かしらの行動する合図ぐらしいしなさいよ。」
んな事してる場合じゃない。
ルミナはどんどんと青ざめている。
このまま締め付け続けられれば窒息死して死んでしまう。
そうならない為にも…
「コイツをくらえ!」
俺は大蛇の顔に向けて同じ巾着袋を投げつける。
しかし今度は火を付けずに投げつける。
ブン!
パシャン!
大蛇は先っぽの長い尻尾でそれをはたき落とすのだが、巾着袋は破れ中身が漏れ出し大蛇の顔全体にその粉末が漂う。
シャーーー!!!
ズンズン!
ズンズン!
大蛇は大暴れをしながら目に涙を浮かべジタバタと暴れだし巻きついていたルミナを放し落とす。
ヒューーーン!
ドス!
「よし!キャッチ成功だ。」
「ら、ラクト君。」
「良かった。ちゃんと意識はあるみたいだな。」
「ら、ら、ラクト君!」
「うお!急に抱きつくな!ビックリするだろう。」
「うぇーーーん。だって怖かったんだもん!私死ぬかと思ったんだから!コレぐらい許してよ!」
あの時の自信過剰は何処へいったのやら、やたらとわんわんと泣き出すルミナにちゃんとこう言った女の子の一面があるんだなと思いホッとする。
うんそうだよな。
主人公は主人公でも中身は女なんだからそりゃあ何がなんでも万能にこなせるわけがないか。
「さて、ルミナを助けたわけだしコレでようやく。」
「うん!あのモンスター達を倒せるね!」
うん違うな。
どう言った趣向でそんな解釈したのか逆に聞きたいな。
「えっとなルミナ。今の状況を理解しているか?」
「うん勿論だよ!いっぱい泣いて怖い思いをラクト君の抱擁で気持ちが楽になったわけだし私もちゃんと戦えるよ。」
いや抱擁してねぇし。
というか何故それだけで自分も戦えるという闘争心が湧いてくるんだ。
コイツはあれかバカなのか?
「ルミナ今は我慢しなさい。お前が勝てる相手じゃないわ。それに私のサポートもそこまでしてやれる事はできない。2人が退路をする為の道を上手く空間で歪めてモンスターが知覚できないようにしている。今のうちにあの出口から出ていきましょう。」
なるほどなそう言ったサポートをしてくれたってわけか。
戦いのじゃなくて逃げる為のサポート……はなっから戦いに参入する気はなかったんだなコイツ。
「そうだね。うんそれなら仕方ないかもしれない。でも次はちゃんと準備をしてまたここにくるから絶対に他の奴にやられたりしないでよね。じゃないと採取だってできないんだから。」
どんな捨て台詞なんだ。
何が目的なんだよいったい。
でもまぁひとまず何とか生き残れて帰れそうという安心感があってホッとする。
ここでの3つ頭のオロチが出てこないだけましだしな。
「このまま走って突っ切るぞ。絶対に後ろを振り返るなよ。」
「勿論よ!入手する為の素材を置いておくのが心苦しいって言うのもあるけど、仕方ないわよね!」
「素材に執着しすぎだろう!今はそれよりも自分の命を先に考えろ。」
エスカが発動してくれている空間に俺達は入り込みそのまま出口まで突っ切ろうとした瞬間。
ガブ!
「は?」
「何?」
「きゃああ!!え!え!何何!」
何故かルミナは何かにガブっとされて上に引っ張ららる。
な、何だ。
何か分からないものにルミナが引っ張られている。
モンスターか?
「え、エスカ。ルミナはいったい…」
ドッカン!
「こ、今度はなんだ。」
「や、やられたわ。」
「は?やられたって何を?」
「私の空間を発生させている力と似たモンスターがここにいるのよ。しかもとんでもない化け物がね。」
いやいやそんなのいたらこの神殿のクエスト難易度エゲツない事になるぞ。
どんな奴がいるんだよ。
「………エスカ今空間の力を弱くさせられるか?」
「できはするけれど、他の奴が僅かに薄く見えてしまう事になるわ。……いえどちらにしても同じ事か…この力をずっと続けさせてしまえばあの子はあのまま殺されてしまう。」
そう言ってエスカは周りに張っていた空間の力を弱くさせ僅かに見えてくるモンスターの影が見えてくる。
ギュユルル!
ギュイーーーン!
だよな。他の2体も同じくコッチに勘づくか。
でもまだ俺達を発見して認識しているわけじゃない。ルミナを助けられる時間は作れるはずだ。
「ルミナ待ってろ直ぐに助け…」
ガブ!
ゴックン!
「………嘘。」
衝撃的な事が目の前に起こり俺とエスカは目から鱗状態になってルミナの姿がいなくなったのを確認し唖然としてしまう。
そしてだんだんと目の前にいるモンスターの姿が分かり始めていき俺は確証してしまう。
「……うん完全に無理ゲーだろコレ。」




