ラクトの錬金術
ラクト達が大蛇のいる所にたどり着きその大蛇の腹の中にいるルミナの状況では…
「な、何でこんな君の悪い所にいるのよ!めちゃくちゃ気持ち悪いんだけど!」
あの意味の分からない謎の空間に吸い込まれてこんな妙な場所に吐き出されてしまったけれど…
明らかにヤバいわよね。
何かあちこちモンスターの食いちぎられた何かがあるし…もしかして何かの胃袋の中にいるの私って…
「となれば早いとこここを出た方がいいわよね。でも…」
今の状況が明らかにヤバいのは分かるわ。
何かあちこちくねくねして気持ち悪いし周りは何だか妙な弾力でぶよんぶよんしている。
「ここって、もしかして胃液の中。つまり胃袋なのかしら。妙に溶けきってないモンスターがいるみたいだけど…このままじゃ私も胃液で溶かされそう。だとしたらこの場所から別の場所に移動した方が良さそうね。けど…」
周りを見渡すとどうにもおかしな一本道。
コレが食道ならば話はわかるのだけれど…
「え?ちょっと待ってまさかここって蛇の中なんじゃ……」
ルミナは思いっきり顔を青ざめながら自分が蛇嫌いなのを余計に意識しどうにかしてその場から蛇の中から脱出する方法を今自分にできる錬金方法を身につけているアイテムと杖を取り出し模索する。
「何かないか何かないか何かないか。あーーもう!全然役にたたないものばかりじゃないのよ!こんなのでどうやったらここを出られるわけなのよ!というか…」
周りを見渡しながら何かがおかしいことに気付きだすルミナ。
「蛇の中なのに妙に周りの空間が広いのは何でなのかしら。もしかして本当は蛇じゃない?……でもこの弾力のあるような壁はいったい……いやそもそも蛇に限らず動物の内部ってほぼ柔らかいのは当たり前よね。でも嗚咽をさせる事ができるとしたら…いえ一部分を集中的に叩き込めたら。」
………一方その頃外での様子では
「ぐぅぐぅぐぅ…」
「な、なんてデカさなんだ。大蛇だから当たり前なのは分かるが明らかにこの神殿全体を覆う大きさだぞ。あんなのにルミナは飲み込まれたというのか。」
「違うわ。飲み込ませたのが正解ね。」
「表情が分からないが当たり前の様に堂々と言わないでくれるか。こんなんじゃルミナの位置を特定して引き摺り出す事なんてできないぞ。」
「あらそうね。でもお前ならできるんじゃないの?」
「できるか……ルミナがいる位置は分かるか?それによって判断したい。」
「分かったわ。大体の場所は把握しているから移動しましょう。」
そう言いながら大蛇の長い尻尾付近をぐるぐると周って、ルミナのいると思われる場所へ移動する。
「そういえばお前の錬金術って妙な物を使うのね。」
「妙な物?ああ~あの錬金釜の事か?」
アレはそもそもゲームの知識を頭に叩き込んでいたからたまたま思い至って即興で作っただけだしな。
いやまぁ作れるというのも俺的には驚いているんだが…
「そうそう錬金術を使うという人間はほぼ技に使う人間が多かった。でも即興であんな風に釜を作ってでの服の生成は初めてみたわ。お前変わった錬金術師ね。」
「錬金術師か…まぁ確かにその通りかもな。でも基本的に俺が作れる錬金は装飾系とか日常品を作る系の術師だ。コレが錬金術師とかに繋げるとなると少し口がもってしまう。」
「あらそんな難しく考える事じゃないんじゃないかしら。錬金術師でも対になる物はいくつかあるわ。それが単にそっち系の錬金術師って話しじゃないの?」
「主に魔道具を使うから魔道具師と言ってもおかしくないんだ。他の錬金術師が聞いたら笑い者になっちまう。」
「そんなの気にするおまえじゃないでしょう。それにそんなのどっちでもいいって顔をしてるわよ。」
うん実はそこのところどうでもいい。
このゲームをやっていく中で一つの懸念点があった。錬金術師だから大まかにアイテムを混ぜて合成させたりして一つの物を完成させるトピック系のゲームだと思っていたんだが…他にも色々なアイテムを合成させていくうちにコレって本当に錬金術師が賄える範囲なのかとも思ったりしたんだが…ルミナには魔法が使えた。
そう魔道具という漢字に連なってルミナは魔導士としての素質があったんだ。
でもそれに関してはまた別の話しで裏スキルを習得しないと得られない技の1つ。
はたしてこの事実をルミナに伝えてもいいものかどうか…
「そもそもこの世界に装飾品を作る錬金術師とかいたりするのか?俺はあまり聞かないんだが。」
「私もその辺の話に関しては聞いた事がないわね。というよりいないからお前にあの子は興味を抱いてるんじゃないの?」
そういえばそうだな。
師匠も言っていたけれど、俺の錬金術は他の人とは違って珍しいとか言っていたっけか。
けどその上で俺は錬金魔法を扱えない。
いや具体的に言うなれば錬金魔法を長く酷使できない。使えないわけじゃなくそれを上手い形でバランス構成ができないんだ。
だからその両方を上手く兼ねて魔法を付与する錬金魔法を覚えた。
そして一から作るという錬金術コレは絶対外せない力。
それをどんなに無理だとしても努力して覚える事ができたんだ。
「そうかもしれないな。だとしたならルミナに俺の一推しを教えて、とっとと離れてもらう他ないな。」
「恐らくそう言った意味だけでお前にくびったけになってるわけじゃないと思うのだけれどね。」
「え?それってどういう意味だ?」
「耳がいいわね。さぁついたわよここにルミナが…」
デュィーーーン!
ドッカン!
エスカが大蛇の尻尾の何処かにルミナが入ってるのを見つけ位置を特定しそれを伝えようとした瞬間大蛇の尻尾が破裂して中から黒焦げになったルミナが飛び出てくる。
「やった!成功したわ!危うく溶かされる事になるとこだったけどやっぱり上手くいったわ!私って天才。……ん?あ!ラクト君とエスカ!」
はしゃぎながらコチラへと抱きついてくるルミナ。
いやあちこちと炭か何かついてて匂うんだが…
「よ、良かったですよ無事で、というかどうやって脱出したのですか?」
あら?何で口調を元に戻したのかしら。
急に敬語で話したらルミナも勘づきそうなのに。
「ふふん!今の私は無敵なのです!それはね!」
あ、この子意気揚々としてこの子の口調を全く気にしてないわね。
まぁ人間同士の感情に一々鑑賞するのもバカらしいし無視でいいわよね。
ゴゴゴゴゴゴ!
「え!え!何何!何の音!もしかして天変地異とか!」
「………」
「………」
あたふたしだすルミナを見て俺とエスカは諸悪の根源たる人物が目の前にいるという事を敢えて言うまいと思った。
「チッ!ちょっと違った形でルミナを救出になってしまったがひとまずここを出るぞ。このまま脱出ルートまで急いで走るいいな!」
「え、あ、は、はい!!」
「エスカも今は協力してもらうからな。」
「ええ、ごずいのままに。」
俺達はこの地響きとなる原因を避ける為急いでこの神殿を出ようと走りぬける。
「………」
な、何だろう。今一瞬胸の奥がキュンってなってしまった。もしかして私…
「心臓病なのかな!」
「うわ!な、なんだ急に!」
「ど、どうしようラクト君私心臓病かもしれない!さっきラクト君がカッコいい言葉を言った瞬間胸の奥が何か締め付けられる感じがして変な感じがしたの!」
「それは俺の言動に対してディスってるよな!てか普通にらしくない発言して嘲笑ってるだけじゃないのかそれって!」
そんなわけないでしょう。
という何この2人の鈍感な生物達は当事者じゃない私が何でここまで理解しないといけないのよ。
利用してる側として何とも不憫な気持ちでしかない。
俺達は神殿で起こる地響の中出口に出る為のルートを辿りながらこの神殿を抜けようとする。
「ね、ねぇ!このままこの神殿から抜けるつもりなの!」
「ああ、もうこの神殿でのギミックは解除されている。恐らく出口は開いてるはずだ。」
「え!い、いつのまに。どうやって神殿の出口を開けたの!」
「あの休められる休憩ポイントがあっただろう。あそこには更なる地下へ行ける道がある。そこの地下を開いた事でここでのギミックは解除されるんだ。」
「そ、そうなんだ!し、知らなかった。単なる安息地みたいな場所じゃなかったんだね。」
本来ならここの場所でのボス戦として休めるポインターだったんだが…緊急的という意味合いであの場所を利用させてもらった。
おかげで色々と準備は整えられたわけなんだが…
「よしもう少ししたら地下からでられる抜け道がある。そこから一気に外へでられるぞ。」
「え!じゃあ神殿探索はどうするの!」
「そんな事言ってる場合かよ。俺達は今命の危機に晒されているんだぞ。悠長に神殿探索なんてやってられるか。」
このままいけば確実に俺達は死んでしまう。
だとするならもうここをおさばらするしかないだろう。
それに俺は戦闘なんてほぼほぼ皆無なんだ。
相手を目眩しする程度かそれを脅かすぐらいの姑息な手段でしか俺にはできない。
前の世界では異世界行ったらチート的なアイテムや技を持ってさぁ俺は強いぞって自慢する様な小説やら漫画があったりしたんだが…
「全然そんな事ないね!異世界で最早踏んだり蹴ったりだっての!」
ともかくがむしゃらになって神殿を走り抜けようとするラクトとルミナ。
眼前には光がさしてくる様な出口が見えラクトは安心しきって後ろにいるルミナへ安心の言葉をかける。
「よし!ルミナもうすぐ脱出できるぞ。後一息だ。」
しかしその言葉をかけた瞬間ルミナの今の在り方は…
「ご、ごめんなさい捕まっちゃったわ。」
長い尻尾でぐるぐる巻きにされて身ほどきでぎずにいる完全なお手上げ状態のルミナがバツが悪そうになっててへへ顔をする。
「さ、最悪だ。」




