空間の中に巻き込まれて何処かに消えてしまったルミナの捜索
デュアーーーーン!!!
「お前は精霊種を舐めすぎた。その報いあの世でせいぜい謝っておくことね。」
迫りつつあるエスカの暗黒空間。
ズリズリと引き寄せられながら俺はどうにかして引き寄せる引力に踏みとどまる。
も、もう少し…もう少しだけ踏ん張れ。
後少しで俺の作戦通りになる。
上手く吸い上げられるのはごめんだぞ。
ギュィーーン!
ミシミシ…ミシ
「チッしぶといわね。お前を消すのに一々手間取っていられないわ。出力を上げつつ全てを吸い込ませてやる。」
そう言って物体暗黒空間みたいなのを思いっきり出力を上げて吸い込ませていく力がます。
「お、おお。」
でもそれだけの威力があれば望み通りに…
「きゃああ!!!」
デューーン
グワン!
「は?」
「え?」
まさかのルミナが暗黒空間の中に吸い込まれていきそのままルミナと暗黒空間がなくなって消失する。
ミシミシ…バシャン!
そして俺の考えていた作戦が一足遅く床が崩れて底が空き真っ下からは入り口が現れる。
「あーマジかまさかこうなるとは……思惑が外れてしまったな。」
「思惑ですって…お前まさか私を煽ったのか?」
「悪いか?そうでもしなかったから怒りもしなかっただろう。肩身の見物にしてはただ見ているだけでは割にあわんしな。」
そう言ってラクトは底抜けた床の方へ行き下を覗く。
「やっぱり正解か。この道を進めば出口に繋がる経路がある。水の流れを辿っていけば自然に外へは出られる様にはなる。」
「逃げ道を確保したってわけなの?」
「そういう事になるな。だけどちょっとしたイレギュラーが発生した。」
「あの子ね。」
「ああまさかあのままエスカが発動した空間にのみこまれるとは…ほんの一時的に我慢すればよかったはずなのに…」
「馬鹿にしないでもらえるかしら。私の作り出すゾーンはそう簡単に踏みとどまれるほど柔な空間じゃないわよ。」
「まぁそうだろうなと思って念の為に重めのブーツを履いていたんだけどな。」
それを知っていて尚あの子に関しては何の用意もしなかったっていうの。
常識が外れてるわねこの男。
「まぁルミナと作戦どうのこうのと話せないのは仕方がないとして…さっきの亜空間はルミナは何処へいったんだ。俺を消すぐらいの技なんだ。そりゃあ消えてしまってもおかしくはないと思うが…アレはそういった技なんかじゃないんだろう。」
「あらまぁそれを分かっていて私にアレだけの力を使わせたのね。……この代償はでかいわよ。」
そう言いながらエスカはダンマリしつつルミナの行方を探しているのか何も言わずにいた。
そして暫くしてから何やらエスカの様子がおかしくみえる。
「どうしたんだ?何かあったのか?」
「え、えーと、その何というか…私が出したという事もあるのだけれど…よ、予想外の場所にあの子が移動してしまったみたいなのよね。それがあまりにもなんていうか…」
ぬいぐるみみたいだから表情なんてわかりっこないのは当然だ。
でも何だかものすごい冷や汗をかきながら顔を青ざめているようにもみえる。
「もしかしてモンスター達に囲まれているのか。それとももう出遅れか。」
手遅れだとしたら少しヤバいな。
ルミナが生きている時間帯を少し戻すという錬金術は今の俺には使えない。
でも無理矢理でもこじ開けられるやり方は知っている。
一か八かでやってみるか。
「いいえ違うわ。もっとヤバい事になってるわね。」
「もっとヤバい事?」
いや今の話しでモンスターにやられる中での手遅れ以上にヤバいっていったいどういう状況なんだ?
「水蛇の腹の中にいるわ。」
「……な、何?」
水蛇の腹の中だって?
つまり大蛇の事を言っているのか。
マッドイーターにやられたわけじゃなく大蛇の腹の中にいる。
まずい事になったぞ。
本来ならこのまま置いていっても構わないんだが…
「うーーーん。」
「え?何その唸り方。まさかあの子を置いて帰るなんて事はしないわよね?お前が巻いたタネなのよ。そこはキチンと責任をとるのが男なんじゃないの?」
「いや別にそこまではな…てか多分大丈夫だと思うんだ。」
「何?どういう根拠なのそれ?」
「俺が何でルミナにあの制服とマントを着せたのか…直ぐにその場所へいけば分かるよ。」
「けどお前は助ける気がないと言ってたじゃない。なのに助けに行くですって?どういう心境しているのよ。」
「ちょっと面白そうかなって思ってな。もしかしたらコレを気に俺を仲間にするのをやめてくれるかもと思ってさ…」
「そう言えば頑なに嫌がってたわよね。何でそこまでして仲間になるのを拒否したがるのよ。寧ろ入ってメリットにしかなならない気もするわよ。」
「俺があの子道を阻むとか何とか言って口にしては気にかけてくれるんだな。」
「気にかけるよりは疑問に思ったわけ。こう言っちゃあアレだけど、私がお前に協力しないでもあげないって言ったのは本当の事。でもお前はそれを拒否しつつも何処か繋がっていたいという思いがありそうだから不思議に思っていた。だからその見解を知りたいわけ。」
「………ルミナの所へ行きつつ説明するよ。」
「事情話すわけ?得体の知れない私に?お前変わってるわね。」
「お前の方がよっぽどだろうが、人間嫌いな癖にやたらと俺に気にかけて話しかけてくる。そっちも十分に変わりも者だよ。」
そんな事を話しつつ俺達はここの古屋を後にしルミナのいる大蛇の所へ移動しながら先の話の続きをする。
「さっきの話しだけれど、私は人間が嫌いなのは間違いないわ。今だけはお前に少し興味があったからこうやって話しているわけ。そうじゃなかったら人間の前に現れるなんて面倒な力を使ってまでするもんじゃないわ。」
「なのにルミナと一緒にいるのか?なんだか支離滅裂だな。」
「仕方がないのよ。あの子にはそれなりの力があった。だから私達は契約したのよ。」
話の論点をすっ飛ばした言い方だな。
でもそれは俺も知っている事。
ルミナには精霊と契約する為の力が通常の人よりも倍ぐらいの力が内部にある。
それは錬金術師ならではの体力面と精神面による2つの組み合わせが優れているという話しなのだ。
だからルミナは精霊と契約する為の適応能力があった。
ただそれだけなのか?という疑問はあるかもしれないが、ルミナの場合は相も変わらずエスカに利用されている時点で疎かな何かを省いて契約しているんだろうな。
それが何かはもしかしたらゲームで知っている内容と些か違うかもしれない。
まぁそれに関しては自ずと分かるか。
「へ〜だからたまにでしかアイツの前には現れないってわけなのか。あまりにも理不尽な話しだけどな。ルミナ自身はもっと仲良くなりたいから出てきてほしいとかいいそうだもんな。」
「本当それよ。私はそのおかげでどれだけ苦労したか……って私の話は別にいいのよ。お前の話を聞かせなさい。」
話の道が逸れたしまった。
まぁ別にわざと晒したわけじゃないんだけどな。
さてエスカにどう話したものか…
「エスカの言う通り俺は別にルミナの事が嫌いとかそう言った意味で嫌がって仲間になりたくないってわけじゃない。ただ一緒にいる事で力のバランスが崩壊してしまうんだ。」
「崩壊?お前が仲間になる事でルミナ達は仲間の今の状態がおかしくなるって事?……あり得ない話しだわそれは…仮にあなたが仲間になったとしてもあの子達なら上手くカバーできるでしょう。それにお前はあの洞窟で4人を指揮したと聞いたりもしたわ。それが力のバランスが崩壊する?……ますますあり得ない話しね。」
だよな。普通に考えたらそんなおかしな話し信じる筈がない。
コレは単なる俺の我儘であってほんのちょっとした嘘の理由にしかならない。
でも唯一事実とする話ならルミナ達の今後の行末で何かしら崩壊が起こるのは間違いない。
それは俺がイレギュラーな存在であるからモブの俺を仲間にする事で余計な廃産物を招いてしまうのはやはりよくない。
「まぁそう思われても仕方がない。でも本来ならばここへは俺がくる事はまずなかったんだ。なのにルミナと一緒にここへきてしまった。既にこの時点でアウトなんだ。もう既にアクションが起きている。だから今日でルミナには思い知ってもらわないといけない。」
「ふーん。たまたま起こった出来事にお前が介入したせいであの子が不幸に陥ったって言いたいのかしら?だとしたらそれはおおきな間違いの認識だと思うわね。」
後気になる言葉がある。まるで未来を見てきたかのような発言。やっぱりこの子もしかして何かしらの未来予知みたいなのが使えるのかしら。
「そうか?けどそれならそれで不幸中の幸いだったな。元々ルミナには死んでもらっては困る立ち位置なんだ。それをたまたま危険な状態に陥ってしまった。となれば後はこうだルミナにはそれ相応の恐怖を身につけて俺といると危ない目に会うんだという認識をしてもらう。そしてエスカは俺がいる事で不幸が起きるという吹聴をしてもらう。コレでお互いイーブンな立場になるだろう。」
「お前精霊を上手く扱うつもりなのね。本当憎たらしいったらありゃあしないわ。でもまぁそこに関しては承諾してあげる。私もお前と同じ不本意ながらも理解している。だから特別に乗せられてやるわよ。」
「さすがだは名の高い精霊種。話が早くて助かる。」
と言っても俺の知ってる精霊とはまた違うんだけどな。けど一応似ている部分があるからそこはまあ省くとしよう。
「さてとそろそろ着く頃よ。ここからはお前のやり方に従ってやるから。十分に心構えをしておきなさい。」
「ああ勿論さ。さてキーストーンを入手した後のルミナを奪還しての神殿脱出。作戦決行だ。」




