エスカの提案
ココからは俺の推測になる。
床が開けて落ちる仕組みの罠。
コレはこの神殿による1つのギミック発動と繋がる。
しかしそれには犠牲も必要であり誰かがその穴に落ちなければならない。
だから俺は思った。
ここで2人同時で落ちればと…
ヒューーーン!
「よしやっぱり下は湖だな。」
「よしじゃなあい!このまま落ちたら溺れて死ぬ!!」
ガバ!
2人同時に落ちていくラクトとルミナ。
ラクトはそのままルミナに近づき自分に抱き寄せながら落下衝撃を少しでも下げる為彼女を庇おうとする。
「ら、ラクト君。」
「しっかり息を吸い込めよ。」
ヒューーン
ドバーーン!
ザブンーーン!
くっ!やっぱり落下による衝撃には自分には耐えられないか。
まずいこのままだと意識が…
ブクブクブク…
ザバァン!
「ら、ラクト君何処!」
周りにラクトの姿がなくルミナは顔を青ざめながら周囲をくまなく見渡す。
「嘘。もしかしてこのまま湖の中に……」
ヒュルリン!
「ああ多分あの男もうダメね。あなたを庇ったのは御立派な事だけど、自分の身を守ることができなかったのは悔やまれるわね。とりあえずあなたが生きていただけでも幸いだわ。ほらあそこに木の建物があるみたいだからそこで…」
ザブン!
「ちょっと!ルミナ!あの馬鹿。」
ルミナはエスカの話しを無視し湖の下へと落ちていくラクトを救助しにひたすら下へと潜っていく。
ふざけないで。こんな所で絶対にしなせやしない。ようやく再会したんだもの。
彼には無理矢理にでも私の事を思い出して貰わないといけない。
それに何で自分を装って猫を被っているのかとここまで私の事を拒絶する理由もちゃんと聞けていない。
……ううん正直そんな事はどうでもいい。私は彼がラクト君が必要なのよ。
ちゃんとあの人がいたからこそ私はあの遺跡で生きながられる事ができた。
そしてまた再会するならば一緒にアトリエをやっていこうとも決めた。
今は一流のアトリエ師になる為に冒険をしているけれど…可能であれば彼も一緒に連れていきたい。
少しでも長い時間を共にしたいんだよ。
だから……
ガボボボ!
ま、まずいもう息が……
…………ここは夢の中か?
自分が見ている今の光景……ああ懐かしいな。
仕事がそこまで好きじゃなくていやいや就職した場所だ。
何でこんな夢を……今更みた所で何かが変わるわけじゃあるまいし。
鬱陶しい部長の怒鳴り声や顔なんて見たくない。
…………俺いったい何の為に生きてたんだろうな。
そんな社畜な光景をみつつ俺は溜息を漏らしながら次の夢の続きをみる。
………今度は…ああそうかそうだったな。
確かそうこの日は母親が亡くなった日だ。
もう社会人になってあまり調子がない日に母親が死んだのを役所から電話があった。
母は俺を1人ながら支えて育ててきてくれた。
そんな母親が死んだという事を知らされてショックを受けた。
……いつからだったけかこんなに悲しい思いをしたのって……けどそこからゲームに没頭していたおかげか気分が爽快したかの様にもう母親の事は忘れようとしたんだった。
でもこのアトリエゲームに没頭して嫌な事も乗りこえられた。
俺って案外単純な奴だったのかな。
正直クソゲーなのは間違いではなかったけれども…それでもまだやり甲斐のあるゲームだった。
そのおかげでこの世界に来られたというのがあるんだけどな。
それとあの女の子を助けた事に悔いはない。
……悔いはないんだが…ちゃんと助けたかどうかも分からないし…結局どうなったのかも分からない。
思えば最悪な人生を送っていたのかもしれない。
でも何もかもが悪い人生ばかりじゃないのは間違いがない…じゃなきゃこの世界に転生する事もなかったんだから。
…てか何で今こんな夢を見ているんだ?もしかして俺…
「ぐっぐぼぼぼ!」
ふ、ふざけんなこんな所で死んでたまるかよ。
まだここでやらないといけない事がたくさんあるんだ。
「!?」
ルミナの奴何してんだ。
もがきながら泳いでいるが、全然泳ぎキレてないじゃないか。
単に溺れかけてる。
もしかして俺を助けようとしたのか……いやそんな事を考えるのは後回しだ。
完全に息が続きそうにもなかった為俺は懐からワイヤーガンを取り出す。
しかしここでワイヤーガンを放っても水の重力によって、勢いよく飛ぶ事ができない。
でも…
カチ!
プシュ!!!
ワイヤーガンは勢いよく射出し湖の上の崖の岩に引っかかる。
そしてラクトはそのまま引き戻すトリガーボタンを押して真上へと引き寄せられる。
グィーーン!
ガシ!
よしルミナを回収。
まだ息はあるな。
お互い溺れかけの俺達は何とかギリギリという境目まで意識を保ちながら地上へと湖の中から脱出する。
「はぁはぁはぁ…先にワイヤーガンを水中ワイヤーガンに改良して良かった。じゃないと完全に今ので死んでいたぞ。」
でもこんな展開普通起きないのが当たり前なんだが…ルミナがもしもコッチとの接触という部分を考えてしまったら必然的に何故かワイヤーガンの改良をしてしまっていた。
「いやギリギリ助かった。」
「けほけほ!よ、よかった。ラクト君を助ける事ができて…」
「いや溺れかけていた奴の言う言葉じゃないぞ。泳げられないのに無理に助けようとするな。それじゃあ本末転倒だろうが。」
「でもでも私を助けて溺れて死んでしまうなんて事私的に絶対に許せなかった。だから苦手としている泳ぎをもどうにかすればいけるんじゃないかと思ったわけ。」
「結果お前がそんな息を切らしながら助けても説得力はないけどな。というかあまり下まで泳ぎキレてなかったし。」
「もう!助けようとしたのに文句ばっかり!少しは私の事褒めなさいよ。」
「なんて言う開き直りなんだ。かえって清々しいぐらにいビックリだよ。」
お互いああやこうやといいつつ自分達が無事だという認識ができたという事でホッと胸を撫で下ろしながら言い合いをする。
それを見兼ねたのかエスカが間に割って入る。
「はいはい。ストップストップ。あなた達ねぇもっと状況をよく確認したらどうかしら?今のままだと風邪引くわよ。それにいくら神殿の中とはいえモンスターがいないわけじゃないわよ。さっさっと古屋に入って温めてきたらどうかしら。」
エスカの言う通りセーブポイントとしてキャンプ地となる休憩所。
とりあえずはその中へ入って体を温めるのが先だな。
「ほら肩を貸すからあの古屋へ行くぞ。」
「はっ!?駄目!」
え?何か拒否られた。何故?
「な、何でなんだ。何か俺いけない事でもしたか?」
「そ、そうじゃなくて、そ、そう!私落とし物したいだから先に古屋の方に行ってて。」
「え?だったら俺も一緒に探すけど…」
「だ、大丈夫。その、女の子の大切なものだからラクト君んに触らせるわけにはいかないのよ。ほら大人しく先に古屋へ入ってて。」
そう言われて背中をおされるラクト。
いまだにその言葉の意味を理解しないまま古屋の方へとセーブポイントへと入っていく。
「な、なんなんだルミナの奴。そんなに大事な物なら一緒に探してやったのに。」
「はぁ〜あなたってもしかして物凄く鈍感な人間なのかしら?だとしたら世の女の人は苦労するわね。」
勝手に俺を苦労人間と認定する精霊種。
自分はそんな面倒な人間だとは思いたくないが…まぁ女子に対して免疫がないのは確かだ。
……そういえば1人血が繋がってない妹がいたっけか。
親父と再婚はしたけれど、親父の金使いによる問題で離婚したんだったけな。
……アレから連絡もなにもないけれどアイツ元気にしてんのかな。
「………ううっラクト君って、女の子扱いに対して本当に酷いよ。というよりも私の事を女の子として見てくれていないのかな。だったらかなりショックかも。けどここからが私の真骨頂…ラクト君に私という存在をアピールできるチャンス。絶対ラクト君を籠絡してやるんだから。それはそれとして…本当に落としものしちゃったよ!錬金道具の要石何処いったのかな!」
………古屋
「うう…なんだ。今寒気がしたような。き、気のせいか…」
「ふぅちょうどいいわ。あの子が帰って来る前にああなたに話しがあるのよね。」
「うん?何ですか?」
「ああもうそういうのはいいから。あの子の近くにいてあなたの本性は分かったから。」
「ああ…そう。」
そうだよな。あんだけルミナに辛辣な態度を示したんだ。そりゃあ化けの皮が剥がれているのにも気付いているか…けどだからなんだって話になるんだが…いったい俺に何を言いたいんだ。
「あの子の邪魔をしないでくれるかしら。せっかくの捨て駒をあなたみたいな奴に狂わされてるなんてたまったもんじゃないのよ。」
「………」
やっぱり裏切り者だったか。
まぁそうだろうなとは思っていたがこうも早くコイツの本性を出してくるとは思ってもみなかった。
わざわざこう言った話しをするということは何かしら今までの事に対して不満があったという事なんだろうけど……はぁ正直めんどくさいよな。
「え〜と、話がよく見えないんだけど…俺がルミナの邪魔をしているって?そんな事ないと思うんだが…勘違いしているんじゃないのか?」
「は?どの口でそんな事言ってるわけ?今あなたに対してあの子の好感度がどう変わっているのか分からないわけないでしょう。」
「好感度がどうかに対しては俺の口から言えたぎりじゃないが…それでエスカの邪魔になるという事に関してはよく分からないに。エスカはルミナの事を捨て駒にといったが…それに関してどう切り捨てるつまりでいるんだ。」
「それをあなたに言うつもりは今も今後もないわ。何せほんのちょっとした束の間の関係でしかないんだから。それにあなたは私に協力をした方がいいと思うわよ。」
「は?何でそうなるんだ。」
「だって、あの子と関わりたくないのでしょう?なら私と協力したらあの子があなたに靡かないようにさせる事ができるって言ってるのよ。」
「そ、それは……」




