無鉄砲すぎる女主人公
しかし無理矢理突き放したとはいえあの2人は俺を仲間に入れてどうするつもりだったんだ。
ただ単に好奇心で仲間に入れたいなんて、子どもみたいな事をいうだけとは到底思えないんだが…
同じアトリエ師だから共感が沸いたから?
それとも何か別で惹かれるものが?
もしくは便利屋みたいに側で荷物持ちをさせられるからとかか?
「うーん……どれも考えるのがめんどくさい。というよりも固執になる理由がサッパリなわけで…コレ以上の面倒方は避けたいというのが感想なのだが……このまま何事もなく旅立ってくれるのを期待するしかないな。」
「あの〜すみません。コチラご用意致しました地形の地図です。」
「あ、すみません。」
危ない危ない。素で忘れる所だった。
このまま黒曜石の採取クエストを行えるんだ。
変に考えて悩むのはよそう。
「えーとあのお仲間さん達はもうよろしいのですか?」
「え?ああ、そうですね。先程やっぱり行くのを止めると言ってたので自分1人でクエストを受けます。まぁ僕みたいな弱小みたいなのと一緒にいるよりかは断然自分達で別のクエストをやった方がいいと判断したのかもしれませんね。」
というのは言葉の綾で本当は嘘なんだけどな。
「そうですか。ではコチラも持っていってください。」
そう言って受付のお姉さんは俺にポーションを余分に6つもくれた。
「6つもですか?ただの採取クエストなんですから別にこんなにも要らないですよ。」
「かもしれませんね。でも念には念をです。あなたを守ってくれるお仲間はいませんので、自分を守る術は絶対に何かしら必要です。それが相手を労っての行動だとしてもですね。」
「……何の事でしょうか?」
と俺は敢えて惚けたかのように受付のお姉さんの言葉をはぐらかす。
「ふふ、私はねこの業界にいて22年間いるのよ。大抵くるお客様で揉め事だったりトラブルだったり色恋沙汰でくる面倒なお客様をたくさん見てきた。でもその中でも君は特に何か違うというのを感じたかな。」
「買い被りすぎですよ。こんなの何処にでもいますし何よりも自分はたんなるスケベ発言しかしていません。コレの何処に思いやりがあったのでしょう。」
「言葉の綾ってやつでしょう。君は何故かあの子達を遠ざけている。理由は分からないけれどこれ以上関わらない様にする為にも何とかして壁を作って回避させた。私もあるのよね〜そういった大人の事情ってやつが…」
「はぁ〜」
いや別に受付の人の大人の話しとか聞きたくないんだが……特に関連性みたいなのがあるわけじゃあるまいし。
「そ、そうなんですね。そちらこそわざわざお節介みたいな事をしていただき誠に有難うございます。それじゃあ早速急ぐんでここで失礼致しま…」
「ああ待って待って。」
「あの〜まだ何か…」
「お姉さんからの忠告…あまり女の子を雑に扱うとその内痛い目にあうわよ。」
「は、はぁ…」
もうめんどくさくなって、俺は急いでその場を後にし黒曜石のある場所へと急ぐ。
「……行っちゃったわね。まだあんな周りを気にする様な子が現れるなんてビックリだわ。それにしてもあんな珍しい子がこの町にいたなんて…私の情報量不足なのかもしれないけど…一応目ぼしい子には目をつけているつもりなんだけどな。やっぱりただの受付嬢だけではだめよね。にしてもラクト・クリューダル君か……もう少し調べてみてもよさそうね。」
ゴロゴロ…
「だいぶ悪天候になってきたな。家で妹とペットもいるわけだしさっさっと用事を済ませて帰るとしよう。…えーと確かマップではと……うわ懐かしいな。」
このアトリエゲームでの第二段で確か中盤辺りでこのマップにある神殿付近を散策したことがあったけか…どれもつまらない材料ばかりだったから何だこのクソゲーって思ったりもしたけれど…正直今ではだいぶ有り難い。
普通に日常とかで使うものや備品など冒険とまではいかないがそれ相応での必要部品とかが揃えられる材料がたくさん拾えるんだ。
敵に関してもそう多く出現しないエリアでもあるわけだしここら辺は安全区域で何事も問題ないとそう思っていたんだが…
「俺の見解違いか?何でこんな近くに神殿4つもある。てかそう言えばロイゼの奴が言ってたけか
キーストーンを手に入れるには丁度いいとか何とか……でも明らかにおかしいんだよな。キーストーンを求めるというのも序盤でのレベルは30ぐらいか45が妥当…コレは最初のアトリエ1にあった要素。でも中盤となればレベル50か60が相場だ。でもあの4人がここにいるとなると…まだレベルは10にも満たないんじゃないのか。なのにキーストーンを求めてるって何かおかしすぎる。」
何処かで歯車が狂ったか?
もしくは俺がこの世界でモブとして生まれてルミナ達と関わったのが原因か?
どちらにせよここで死なれたらヤバいのはヤバいわけだしあのまま帰ってレベル上げやらなんやらして自分達の旅に集中してほしい。
などと思った矢先…街から出る所の柱付近に見知った顔が飛び出す。
「ああ!ようやくきたのね!もう遅いよ!」
「……は?何でここに?」
そこにいたのは当然ながらも…最早俺からのしがらみを解きたくないのであろうか。
プレデシア・ルミナが堂々と目の前に立って立ち塞がっていた。
「勿論あなたについてくためよ。勿論拒否権なんてないわ。」
「拒否権がなかろうとあろうとあなたのお仲間さんが無理矢理連れてって同行をやめたじゃないですか。」
「あれはその何と言うか…そうあの子が恥ずかしがってただけなんだから!だから仕方なかったのよ。」
何が仕方がなかったのだろうか。
恥ずかしがって逃げたからという理由ではないと思う。単に俺に対して嫌悪感や気色悪いと思ったからルミナとの接触を避けたかったのが彼女があそこで無理矢理ルミナを引き連れて飛び出したのが正解なはずだ。
なのにコイツはそれをまるで無下にするかの様にして俺の前に現れる。
「はぁ〜それで本当についてくる気なんですか?」
「勿論よ!あなたは私に好意を抱いている。ならばそれを応えてあげるのもコレから先仲間になる為のひとつの矜持だと思ってるわ。」
「そんな矜持はありません。今からでも遅くないので引き返して…」
そう言いながら俺はルミナをスルーして過ぎ去ろうとするのだが俺の腕に彼女がそれを無理矢理とっ捕まえる。
「ちょっとちょっと!なんでよなんでよ!せっかくきてあげたんだから私を連れてってよ!」
「情緒不安定なんですか!無理矢理連れていかせるように懇願するやり方があまりにも情緒不安定すぎて対応に困るんですけど!」
俺の腕を掴みながら涙目になってやたらと自分を連れていってほしいとせがんでくるルミナ。
とても主人公とは思えない手口をしてくる為つい肩をすくめてしまう。
「あの〜どうして僕と一緒に来たがるんですか?それに先程の方は何処に?」
「置いてきた!いたらめんどくさいなって思って!」
素直だなおい。
普通にめんどくさいっていいだしたよこの子。
最早アリシアの存在が地味にうざがられてしまっている。
過保護すぎんだよなアリシアって…
「そ、そうですか。けれど僕と一緒にいく理由にはなっていませんね。あの方の話を聞いていましたか?僕といたらあなたに手を出してしまう可能性があるんですよ?」
「え?そんなの嘘だよね?嘘だって私には分かってるよ。」
「そんな根拠もなく。」
「根拠がないのはそっちだって同じじゃないのかしら?だってあなたが本当に私に欲情しているとしたらもう私ここで襲われてるんだもの。」
とんでもない語弊だ。
それにそんなのが根拠とかあまりにも人がよすぎる。コレが主人公補正という肝っ玉というやつなのか。
「はぁ〜度胸がいいといいますか何といいますか…とりあえず帰ってくれませんか?」
「いやよ!」
「帰ってください。」
「嫌!」
「帰って!」
「いーや!」
「だぁぁぁぁ!もうなんて聞き分けが悪いんですか!ちょっとはコッチの言う事ぐらい聞いたらどうなんですか!」
「あなたこそどうして私を避けるの!私あなたに何かした!」
ざわざわざわざわ
たまたま帰りだったのかコチラを見てくる人達によからぬ誤解をうまれる単語が聞こえひとまず落ち着く。
「すぅ…はぁ…別に避けていたわけではありません。単に一緒にいたらそちらの冒険の邪魔になるかと思ったんですよ。」
「冒険の邪魔?寧ろ私はあなたを誘いたいって思ってるのよ。冒険の邪魔にはならないと思うのだけれど…」
「それはたんにそっちの一論でしょう。他の人達は違うんじゃないんですか?それぞれ目的があるからプレデシアさんと一緒に冒険している。プレデシアさんだからこそ惹かれるものがあって一緒に旅をしている。じゃなきゃあんなふうに過保護になったりプレデシアさんのことを気にかけたりしませんよ。」
「………」
ヤバ。ついアトリエゲームでやっていて思った事を口にしてしまった。
ガチでコイツ何言ってんだって思われても仕方がないよな。
寧ろうわ何か熱弁してる。というか私達の事詳しくないのにどの口が言ってんだって言われるよなきっと……
「え、えっとその、あ、ありがとう。」
「へ?」
今何て言ったんだ?お礼を言われた?何で?
「そんな風に私達の事を見ていてくれて思っていたんだ。正直嬉しい。寧ろ私ますます君の事を仲間にしたくなったよ。うん絶対諦めない!」
ますます俺への好感度をましてしまったルミナ。
俺はやってしまったという後悔をしながらどうにかしてルミナを引き離そうと考えるのだが……
「さぁ!お互い目的とする場所は決まってるんだからここでぐちぐち言わずに前へ進もう!」
「え!あ、ちょ誰も一緒に行くって言ってないんですけど!」




