ヴォイアーク・デストロイ
4人にそれぞれ指示を出し、レバーがある位置へと移動してもらう。
単純な作業にはなるが、レバーを上に上げればそれで此処一帯に噴出されている毒ガスの勢いが止まる。
……ガコン!
「OK!私の方は大丈夫よ!」
最初にレバーを上げる。
「は、早い…あんな俊敏に軽々と飛んでレバーの位置まで飛びやがった。……クソ!俺だって負けてられるか。」
意味の分からない対抗意識に火をつけてしまったfuryはそのままレバーの方へと駆け上っていく。
「はは、furyにそこまで火をつけるなんて…あの人中々にやるわね。」
「ああそうだな。」
まぁコレに関しては俺がラウラに指示を出して上手くfuryを焚き付けるように言ったからな。
それで上手くfuryを焚き付ける事に成功したわけだが……
「うえ〜あんな遠いところにレバーがある。行くの面倒くさい〜」
やっぱりそうだよな。
sorrowはやる気を出さない部類の奴だ。
最初だけは協力するみたいな感じを出してはくれるが後々になって、やる気が退化していく。
違う意味での哀しみだよ本当。
「どうする?あの子の場合いくらやる気を出して欲しいと言ってもどうしようもできないわよ。」
「それならやる気を出させるまでだよ。delight、sorrowに話が通じる為の何かの錬金術はあるか?」
「できない事はないけれど……」
「ならsorrowに伝えたい事がある。」
俺はdelightにお願いして、sorrowにやる気を出させる為の言葉を言う。
すると……
「やる!私!頑張る!」
目一杯やる気をだしながら自分がレバーを上げる方向へと首を回す。
「……何を言ったのあなた。あの子をやる気に満ち溢れさせるなんて……まさか賄賂でもした?」
「単純な話しだよ。sorrowが好きそうな物を用意するって言っただけだよ。」
「え?それでやる気が出たの?」
「ああ。」
「そうか…そうなんだ。」
若干腑に落ちない顔をしてはいるみたいだが…とりあえず現状はそう納得してもらう他ないだろう。
さてじゃあもう1人の方は…
「ほい!や!ほっ!や!そ〜れっと!」
グィーーーーン!
ガコン!
「おーい!コッチもいけたよーー!!」
「良くやったな!ひとまずその場で待機してくれ!ラウラもその場で待機で頼む。」
「えへへ〜男の人に褒められちゃった。」
「え〜ここにいるだけだと暇なんだけど〜その間ブルーサンクチュアリを探してもいい!」
「駄目だ。完全に毒ガスが消えたからにしろ。寧ろ上の方がお前らにとっては安全なんだ。少しでも毒から遠ざける事に集中してくれ。」
「そう言われたら何も言えないわね。分かったわ!できるだけ早くしてちょうだいよ!」
身軽な奴は勝手な事しか言わないな。
でもその通りだ。
早いとここの状況を打破しなければ俺達は全員ここで死ぬ事になる。
「ねぇ私から取ったあのアイテムでここから全員脱出できないわけ?あのおかげで私達はこの中に入れる事ができたんだけど。」
「悪いがそれはできない人数オーバー然り、エネルギー切れだ。中身がある色が完全にカラカラだった。お前達4人でここに入ったことでエネルギーが切れたんだろう。本来なら定員数は2人が限度だからな。」
なのに4人でここに来れたというのが1番気にはなる。アップグレードとかしなかったら普通はこんな椀飯振る舞いはできないんだが……既にバージョンアップしてるって事なのか……帰ったら確かめないといけないな。
「え?人数制限があったんだ。し、知らなかった。」
「寧ろ知らずに使っていた事に驚いてはいるよ。どうやってこの使い方を知ったのか逆に知りたいぐらいだ。」
「そ、それは大精霊様に使えばわかると言われて…それで使ったらこの場所に入れたってわけなのよ。」
本当にその大精霊様という奴何者か気になるな。
コイツら完全に騙されているのは間違いはないんだが……大魔王と大精霊。
主に違い点はこの2つなわけなんだが……
「………」
「ちょっと!クリューダルさん!残りの2つのレバーはまだなの!そろそろ待機しているのも飽きてきたんだけど〜」
「もう少しぐらい待つ事はできないのかよ。残りの2つはちゃんと一生懸命向かって行ってる奴等がいるんだ。その辺踏まえて我慢してれ!」
え〜という呆れた顔をするラウラ。
大きな声でじゃなきゃ声が聞こえない為こんな行動しかとれないわけなのだが……違う意味で何か嫌な予感がしてくる。
その後furyとsorrowの様子を見ると、もう少しといとぐらいにまで近づく。
「……なんだかんだ言ってようやくって感じね。」
「あ、ああ。」
「ねぇ大丈夫?なんだか顔色が悪いみたいだけど…」
「き、気にするな。それよりもアイツらが早いとこレバーを上げてくれればこの問題も解決する。」
「この問題?……は!?あなたもしかして毒が体に満煙したんじゃ…」
その通りだ。
ボルテがラウラにつきっきりな為この毒を間近に受ける他ない。
だから覚悟はしている。
ここで死ぬかそうじゃないかってな。
「それなら今私にまとわりついてるこの子。あなたにまわせば…」
「いやいい。それこそ信頼に対しての約束を破る事になる。一時ではあるが、お前らにここで死なせるわけにはいかないからな。」
「ど、どうしてそこまで…」
「さ、さぁなんでだろうな。こういった性分なのかもしれないな。」
と言ってはみたのだが…ストーリー上俺が知ってる人物をこんな所で死なせるわけにはいかないからだ。
でないと俺の今後の事や…この世界でお前らが歪な事にならない為にこうやって身を削ってるわけだからな。
「……けどそこまでまだ身体に充満したわけじゃない。コレなら残り2つ上がるまでどうにかな…」
ドゴン!
「え?」
「な、何?」
「う、嘘…アイツどうして…」
地面から貫く大きな生物。
そいつは大雑把に動きながら、周りに飛び石をばら撒く。
「うわ!」
「ちょ!」
その飛び石はfuryとsorrowの方へと向かいまたレバーの位置から遠ざかってしまう。
「くそ!おいラウラどう言う事だ!さっきやっつけたとか言ってなかったか!」
「やっつけたわよ!でもこうやって生きて這い出てきてるんだから仕方ないでしょう。……でもちゃんと留めはさしてはずなのに…なんで。」
死者蘇生でもしたのか?
けどヴォイアーク・デストロイはそんな能力はなかったはず。
あるとしたらサナギと同様な形で抜け殻から成虫へと進化する類いの2段階バージョンがあった。
でも今のはまだサナギの状態……いやけど何か俺が見た事があるヴォイアーク・デストロイの姿じゃないぞ。
まだ幼虫か何かか?
だとしても頭についてるあのドリル形状…アレだけは一緒だ。
何でこうも違和感だらけなんだこの世界は…
「留めを差したかどうかの確認を怠ったのはラウラの凡ミスではあるが…ひとまずコイツの動きを止めるのが先決だ。」
「え?それじゃあレバーはどうなるの?」
「………furyとsorrowを守りつつ奴を足止めする。倒すまでとは言わないが…アイツを押し留めるだけでも今は十分なはすだ。」
ヒューーン!
シュタ!
「それ本気で言ってるのですか?だとしたら甘いと思いますよ。」
俺の案に不満をぶつけるラウラ。
待機していろと言っていたにもかかわらず普通に降りてくる姿は勇ましいが……正直そこまで戦闘スタイル剥き出しにする必要はあるのだろうが…
ギュイーーーン!
ヴォイアーク・デストロイは角がついてる形状でドリルの様に回転させながらあちこちの壁に向かって、穴を開ける。
「……な、何をしているのかなあれ?」
「……自分の根城とする場所を探ってるんだろうな。けれどそんな事をしても無意味だ。」
俺は懐に入れていた刃物を取り出す。
「え?それ包丁?なんでそんな物を?どうにもできなくない?」
「ああ。ただ単に奴を刺すだけじゃ完全に厚さが足りない。でも俺にはコイツを形状化させる事ができる。……というより今まで何で気付かなかったんだと後悔しているぐらいだよ。」
しかしコレをするに至ってはあの時みたいにガイウスとの組み合わせでやった程の威力はない。
もしかしたらインパクトを与えるだけの物にしかならない事もある。
でもダメージを負わすのと衝撃を与えて怯ますというやり方ではまた一味も二味も違う。
それを生物にはより打って付けな戦い方の方法だ。
「ふぅ…ラウラすまないがアシストを頼んでもいいか!」
「え?アシスト?私があなたの?何でそんな事しなきゃいけないのよ。こんなやつまたさっきみたいに粉砕してしまえばいいのよ!」
大鎌でそんな事ができるって言うだけでも恐ろしいのに…何でそんな怪力頭脳なんだよ。
もっと周りを見てから話してくれないか。
「いいから!とりあえず俺の言う通りにしてくれ!」
「はぁ〜たかがアトリエで働いてるだけの格下三流というだけでも持っての他だというのに…何でそんなに直行でお馬鹿なのよ。死んでも恨まないでよ!」
罵詈雑言だなおい。
てかそれなら何故あの時俺をあるべき場所へ行かせるような事を言ったんだ。
そこまでの過小評価なら俺なんて見下げていただろうに……
ヒューーン!
ヒューーン!
あちらこちらで壁に穴を開け出していくヴォイアーク・デストロイ。
はなっから俺達の事なんてお構いなしで穴を開けてやがる。
そして上から降ってくる瓦礫の岩。
コレにはラウラのアシストが不可欠。
俺は手に握りしめた包丁を強く握りしめ覚悟を決める。
「今回もまた失敗すれば終わりだな。……よしやってやるか!」




