謎の暗殺者の女の子
モルティーが考えていた試験であの洞窟による騒動が起こるというような予想は考えていなかった。
事前に計画していた事腹とは違った形で問題が起こりモルティーがあのクリスタルモンスターを対処したという。
でもモルティーの反応からしてアレはそういうリアクションでもなかった気がするんだが…
「正直私が仕組ませていたクリスタルのモンスターはあんなでかく仕組ませてはいない。亀みたいに小さなクリスタルを取り付けたモンスターにしたのに、何であんな事が起こったのかさっぱりわからないね。」
「でもモルティー先生あの場でものすごく喜んでいるというか興味を抱いてるような…楽しんでいる様にも見えたんですが…もしかして演技をしていたとかですか?」
「演技なんてしないよ。本当に心の底からうわっなんだこれと思いつつ、とんだ未知の発見が現れたという感情があって、私には色々と違う意味で浮き足立っていんだよ。それをまるで人を情緒のないみたいな言い方は関心できない。」
「そこまでは言ってません。……じゃあ単なるトラブルで起こっただけという事ですか?」
「それならばよかったんだけどね。魔装によるエネルギーが足りないのと錬金術師から奪ったエネルギー。その2つの関係性からして、恐らくアレは誰かの意図的に仕組まれた罠。私達いや私を亡き者にしようとしていた可能性があるかも。」
「モルティー先生を抹殺しようとしていた?でも何でそんな事を?モルティー先生まさか世間では相当恨まれてる様な事を…」
「あはは、そんなわけないわよ。好奇心溢れるこの私だよ。人から恨まれる事なんてまずないわよ。まぁちょ〜とアトリエを貸してもらって、料金を滞納してもらってるぐらいだけど。」
いやそれじゃないのか…滞納しているお金を払ってないからつか狙われているんじゃ…
「って事は僕ただの巻き添え損って事じゃないですか!」
「う〜ん……そうかも?」
何で疑問系なんだよ。
明らかにそうだろう。
「でも滞納したって言っても、もうだいぶ前の話だしこの前返しにいったばかりだから、それは関係ないと思うんだけどな。」
「単にまだお金が返ってきてないからモルティー先生を見つけて仕返しとか考えたんじゃないんですか。念入りに念を重ねて……あれ?でもおかしいですね。あのクリスタル洞窟で上手く仕組んだにしては明らかにもっと念入りにしないとあんな事は起こりません。誰かの手だとはいいましたが、あの洞窟の仕組みまたは地形を理解していないとあんな偶然を装ったトラブルは起きない。………単に滞納した人への恨みにしてはレベルが高度な気がしますよ。」
というよりあの場所はそもそもクリスタル洞窟があったという様なゲーム知識はなかった。
なのにクリスタル洞窟の地形事態はそのままゲーム通りのマップ。
若干変わってる部分もあったりはしたが、そこはまだ未開発としての部分として捉えたらいいのだろうか…いや未開発というのはさすがに語弊があるな。時間という意味でまだ完全なマップができていない可能性がある。
「うんそうだね。でもまぁあそこをよく行き渡っている人ならば可能性がなくもない事もないよ。でもそれはあの場所がまだちゃんとした発生源地でない限りはね。」
「じゃあやっぱり…」
「うん。そこにいるんでしょう。出てきたらどうなんだ?私を殺しにきた殺し屋さん。」
モルティーがそう言うと何処からか隠れていたのか影の中からスッと姿を現す謎の覆面。
「どうして私がここにいるというのが分かった?気配を殺していたつもりだったのだがな。」
「殺していた?嘘ばっかり。はじめっから私達の事をついてきておいてどうしてそんな嘘なんかつくの?もしかして嘘が下手な殺し屋さんなのかな?」
「え?はじめっからって、いったいどの辺りから…」
「私達が1番最初の村か出た後草原でボルテリアライムにバンバルウルフを仕掛けたあたりだね。それで上手く私の力量を測ろうとしたのか、ラク君がそれを有耶無耶にしたおかげで失敗してしまった。そして次の作戦へと移行してあのクリスタル洞窟の場所でトラブルを発生させ私を殺す算段を企てた。という所じゃないのかな?」
「ふふ、その通り。私はある依頼者に頼まれてお前を始末する様に言われている。あの場所で大人しく死んでくれればいいものを…」
「ふ〜ん。因みにその依頼者って誰の事なの?」
「それを知る必要はない。ここでお前を始末するんだからな。」
そう言って覆面を被った暗殺者は足元に錬金術を流しこみ姿を消す。
足元から流れるエネルギー。
その錬金魔法によるエネルギーで体を地面に馴染ませる為に和らげたのか。
確か土の錬金魔法だったか。
この世界は確か火、水、風、雷、光、闇そして土の属性での錬金魔法が使える。
その他にも多種多様のコンパクトのあるやつもあるけれど、基本的には攻撃型の錬金魔法を学ぶ人が多いでも土型は寧ろ支援や防御よりの錬金魔法だ。
それでモルティーを殺せるのは無理なのでは?
「土の中へと潜り込んで影の中から攻撃をしかけるつもりだね。でも残念そのやり方は間違えているんだよね〜」
モルティーは杖を地面に刺し錬金魔法を発動させる。
するとみるみると周りの土は和らいでいきグニャグニャし始める。
「うわ!」
勿論こっちの地盤も和らぐわけだが、それをボルテリアライムが何故か俺の体へ泡を発生させその場で泡に包まれながら仁王立ちになり動けなくなる。
「ふふ、さすがはあの子ね。よく私の意図に気付いてくれて嬉しい。そうそれでラク君はこっちの錬金魔法に対して無効化となる。そうする事で私は…」
ふわふわ
ブン!
モルティーは杖を持ちながら勢いよく風の錬金魔法を使って宙へと浮かび飛ぶ。
そしてそのまま杖を地面に向かって投げる。
「地面を和らいだのは単に出現する場所を把握する為にしたわけじゃない。こう言うやり方もあるのよ!」
和らいだ地面からは覆面の暗殺者の顔と体が浮かび上がり必死になってそこから出ようとする。
しかし間に合わずにモルティーが投げた杖が地面に刺さり地盤一帯に電気が走る。
ヒューン!
グサ!
バチバチバチバチ!
「ぎゃああああああ!!」
感電しまった暗殺者の覆面はそのまま丸焦げになり気を失い消沈し目が真っ白となり戦意不能となる。
「あちゃ〜やりすぎちゃったかも。一応手加減したつもりなんだけどな。」
あ、あれで手加減だって?
かなりの威力だったぞ。
それに今モルティーは3つの錬金魔法を使った。
……水、雷、風。
3属性の力が使える錬金術師なんて、今までやってきたアトリエゲームにはなかった。
コレは俺が思うに知らないアトリエゲームの世界になりつつあるんじゃないのか?
まだ未確定ではあるがそんな気がする。
でもそれは俺が介入したり関わったりしなければいいだけのこと…
だから今回はたまたまという形で知っただけにすぎない。
うん今回はたまたまだ。この先では気にする必要はないな多分。
「さ〜てと、この人を尋問しないといけないな。なんかあっさりすぎて変な感じもあったりするけれど、まぁ別にいいよね。ラク君悪いんだけどあそこにある水飲み場からバケツで水を掬ってきてもらえないかな。この人無理矢理起こすから。」
「あ、はい。」
水飲み場なんてあったのか……てか本当だ。
休憩スポットみたいな形でご自由にどうぞって書かれている。
確かにアトリエゲームではよくあるあるではあるんだが……正直モルティーを見てみるとどの辺の辺りの知識が正しかったのか分からなくなってきたぞ。
本当にこの世界はあのアトリエ世界であっているのか?
水を掬って持ってきたバケツをモルティーに渡しそれをモルティーは地面に埋まった覆面暗殺者に水をぶっかける。
ザバァ!
「ぷはぁ!ゴホゴホ!」
「起きたみたいだね。君には色々と聞きたい事があるんだ。」
そう言って、モルティーは覆面を外し相手の素顔を晒す。
「女の子?それも妹と同じぐらいの子だ。」
「なるほどね。土の錬金魔法を使っていた理由がわかったよ。君無理矢理その土の錬金術を覚えさせられたんでしょう。」
「無理矢理?どういう事ですか?」
「ある一定の人は錬金術師を好まない人もいる。恐らくこの子はそういう立ち位置で錬金術や魔法を覚えさせられたんだと思うよ。」
確かにそう言った人もいなくはなかったな。
ゲームでも錬金術師の事を拒んで村へ入れさせないというめんどくさいイベントがあったけか…
「そうだよ!お前のせいで私の…私の弟が危険な目にあおうとしているんだ。お前を殺せば弟が助かるそう聞いて殺そうとしたのに……それが失敗に終わってしまった。そして出来る限りでモルティーの力も把握しとけとも言われたけれど、それも無駄に終わってしまった。もう私は終わりなんだ。」
何だか不憫な話だな。
弟が捕まっていてそれを助ける為にモルティーを殺してくるよう命令されてここまできた。
きっとそいつはとんでもない悪党関係者なんだろう。
「………ねぇ君を雇った…いや違うね。利用した人物の名前と場所分かる?」
「………」
「あちゃちゃ黙りだと困っちゃうな。私にだって時間がないんだよ。君の我儘に付き合う気なんてないんだけどな。」
し、辛辣だな。
「言ってどうするの。言った所で何もできや…」
「さっき言ったよね?私を狙う理由はなんだってて?誰にいらいされたのかもそれに関して何とかできるかもしれないかもと相談しているんだよ。こっちの好意を無碍にしない方が君の為だとも思うんだけどね。」
「………弟を助けてくれるの?」
「君の返答次第ではだけどもね。」
「けど私あなたを殺そうとしたんだよ。なのにどうして…」
「それはまぁ成り行きかな。成り行きといってもどうにも私関連みたいだしほっとけないなというのが私の感想。他に何か聞きたい事ある?」
「………ない。」
「そうそれじゃあひとまず村へと戻ろうか。色々と収穫ありだったしね。……あ!勿論ラク君の試験の事も忘れてないからね。」
あたかも忘れてしまったかの様な反応に対し俺はそのまま呆れた顔をしながらこう言う。
「今それどころの話しじゃないのでは?」




