ギルドからのラウラ・メーリヒからのお願い
「ねぇラクト・クリューダル君。この石に価値はないといったけれど、結局の所そうじゃなかった。その時にあなたコレは買い取れるかどうかの話しをしましたよね?」
「え?あ、は、はい。」
「つまりお金に困ってるって話しでいいのかしら?」
「いや別にそんな事…」
「そう困ってるのね。だから私はあなたと2人になって内密な話をしにきたのよ。」
そんな事一言も言ってないんだけど…
後どう言った流れで話を進めてるんだ。
さっきの質問した内容とはまた違った形で話が進んでるんだが…
「何でギルドの仕事以外の事をしてまでしてここまでしたのかには理由があります。実の言う所私達のギルドにはお金が足りないのです。」
「そうなんですね。」
「そう…だからこの話を持ちかけたんですよ。」
ギルドにお金がないから俺に頼み事をしてきた?
しかもコレが内密にだって?
どう言う意味だ?
「因みになんですが、そのギルドに対するお金がないと言うのは借金をされてるとかそう言う事でしょうか?それとさっきの話しとどう言った関係が?」
「……業務以外の事に関してはギルドに持ち込んではいけないという話を我がギルド長はそう仰っていました。…何かしらのトラブルがあれば勿論の事残業をさせられる他ないんです。借金とかそういうのではないのでご安心ください。」
いやそれがギルドの受付での仕事だから仕方がないんじゃないのかというのは流石に野暮に過ぎないと思い言い淀む。
「は、はぁ〜……で他にもあるのですか?」
「ふふふ、よくぞ聞いてくれました!お金がないからあなたとこのような話をしているわけなんですが…あなたにはコレから売れる何か目新しい物を作っていただいてほしいんです。」
「はい?いやあの時お金にならない磁電鉄鉱石を持っていても仕方がないと言ったから無理と言っておいて、今更コチラに頼むとは筋違いなんじゃないのですか?」
「そう…こんな話をするというのはなんともまぁおこがましい話にはなるのですが……どうか!私を残業の闇から救ってほしいのです!」
いや全く意味がわからない。
俺が作る物でギルドのお金がどうなるとか…自分が残念の闇から救われるとか全然理解できないし…さっきからそれっぽいニュアンスみたいなのを言ってはいるが…纏ってなさすぎるんたよな。
具体的な点が何一つないから理解できない。
「残業の闇とはいいますけれど、それこそギルドにくるクエスト受注者達に任せればいいのではないのですか?」
「主な内容としてはそうなります。ただ今話してる事はそうではなくてですね。……いえ内密な話しですから素直に言っちゃいますね。磁電鉄鉱石がとある地区では高く値が張っているというのは先程話した通りになります。しかしここでは磁電鉄鉱石に関してまだそこまでの発展はありません。つまり私がいいたいのは…磁電鉄鉱石をもっと増やしてほしいと言うお願いなのです。」
「………す、すみません。ギルドのお金が足りない原因となんら変わらない気がするのですが…」
「するんですよ!!」
うわ!物凄い前のめりになってくるな。
そんな緊急でもないような気がするんだが…
「関係性を具体的に言ってもらえませんか?全然話が見えて来ないんですけど…」
「関係性ですか…色々と御託な言葉を並べて言ってはいたのですが…」
御託とか言っちゃったよこいつ。
「率直に言えばコチラのギルドハウスは残業の時間帯になれば夜は灯りを消します。単純に言ってしまえば灯りを消さなければいいんじゃないかとそう言った結論にはなるのですが……火の魔鋼鉄鉱石をご存じでいますか?」
「ああ…確か熱い熱源地帯の場所に発生する所にあるんですよね?……ん?それなら取りにいけばいいのでは?それこそクエストでの依頼で出せば…」
「それが何故か以前にその熱源地帯が発生していた神殿が誰かによって壊されてしまったのよ。」
「誰かのせいで熱源地帯の神殿が壊された?……そんな事可能なんですか?」
「そう普通なら有り得ないのよ。でもそれが事実そうなっていたんですよね。そのおかげで私達ギルドの受付の人がその神殿の調査へと出向く羽目になって…要らない残業代が発生したって話なんですよ。それこそギルドのクエストで誰かが受注してくれればあんな調査行かずに済んだのですが……全く最近の冒険者と来たら弱腰になって頼り甲斐がないったらありゃあしませんよ。」
それならコッチだって同じ事なんだけどな。
ただのアトリエをやってる人の所に来てそんな話をされてもどうしようもないんだし…
「しかもですよ!その神殿で起こった騒動はそれだけじゃないんです!神殿内部にいたモンスターが散乱したんですよ!外へ逃げていったんです!凶暴性はそこまで大した事はないんですが、こちら側に関しては死活問題…いったい何をしたらあんな破壊衝動が起こったのか…その人に聞きに行きたいぐらいですよ。」
「それは何と言うかご愁傷様といいますか…」
しかし妙だな。
その話を聞かされて変に関わりがないはずなのにどうにも関係ないとは思えないのは気のせいだろうか……
「全く…そして挙げ句の果てには…聖遺物がなくなっていたという事も発覚しました。あんな貴重品なキーストーンをいったい誰が持ち出したのやら…」
「………」
やべ!!!俺らの事じゃないか。
え?待って待って待ってくれ。
キーストーンってただイベント回収するアイテムであって、何かしらの影響が受ける話はなかったはず。
なのにこの地区には影響があるだと?
どうなってんだこの異世界は……
「あ、あの〜その聖遺物であるキーストーンってなくなったら何かまずい事でもあるのでしょうか?」
「大有りですよ!あの聖遺物はこの地区中心によって四つの内の1つのキーストーンなんです。それを何処のわけのかわらぬ人物に奪われてしまったという話が他の場所へ話が行き渡ったら大変な事になります。」
「で、でもアレはたんなる仮説みたいな話しじゃないんですか?何か祭られるだけの模造品とかそういった物なんじゃ?」
「熱源帯が発生する場所にわざわざ紛い物のキーストーンを置く意味なんてありますか?誰がそんなリスクを背負ってまで偽物を用意すると言うんですか。」
ごもっともな意見だ。
確かにそこまでする義理も人情もない。
しかしキーストーンを取るだけで何でこんな露骨に大事な話になるんだ。
原因として、あの神殿が崩壊してしまったというぐらいな話し…ゲームをした時はあの神殿が崩壊したという話はなかった。
………って!俺が原因じゃないか!
何を呑気に考察してんだ。
つまりあれか、俺がイレギュラーな事をしたせいでこの世界に干渉を起こさせてしまった。
それで普段絶対に有り得ないイベントを引き起こした。
この時点で考えたら俺が元凶という話にもなるが……上手く相手に伝えられる保証なんてないぞ。
「どうかしましたか?そんな深刻そうな顔をして、何か思い当たることでもあるのですか?」
「いいえ!特にはありません!」
「そうですか。というよりもそうですよね。あの神殿に入った人の噂が今の所ありませんし…あなたを疑うなんて…そもそもここに来た私が1番ダメな事をしちゃってますね。」
うーーーん!も、申し訳ない。
本当に申し訳ない。
俺らが俺が主に元凶なんです。
その辺まだ素直に言える程肝がすわってないため今はまだ保留にさせてください。
「おっと!この話もまだ他に話してはダメなんでした。すみませんがこの話は聞かなかった事にしておいてください。ただの愚痴と八つ当たりみたいなものですから。」
ピンポイントに俺に八つ当たってくるのがまぁ何と言うか奇跡というかマッチしているというか……心許ない感じがしてちょっとチクチクする。
「そ、そうなんですね。まぁ大変ですよね。わかりました。ひとまずこちら側から今何かするという話しはないって事ですね。そしてこの話は内密という意味合いで他言無用にしますので…それと何も聞かなかった事にすればいいですね。」
ひとまずこう言った形でラウラには丁重に引き下がってもらおう。
コチラにも落ち度があったりはしたが…今はそれどころじゃない。
キーストーンが奪取されている話も正直な所この地区の問題なだけで、有り体に言えばそこまで影響はないだろう。
あるとすれば熱源帯の話になるが…その話についてはラウラには我慢してもらって残業してもらう他ない。
それにさっきのお願いもひとまずこのままどうしようもないって事を伝えれば諦めてくれるだろう。
「そうですね。本来ならばそういう事になるのですが……残念ですがそういうわけにはいかないのですよ。」
そう言ってラウラは懐から何か妙な獲物を出してくる。
「………」
「ふふふ、すみません。こんなのを持ってあなたにお願いするのもあれなんですけど…」
いや完全に脅しじゃねぇか。
「い、いいんですか!ギルドの受付の人がそんな事をして!」
「勿論……」
「だ、ダメに決まってますよね?そりゃあそうだ。うんうん!」
「いいに決まってるじゃないですか〜〜だって、コレ仕事外での事ですし…私が何をどうこうしようと関係ありませんもの〜」
屈託のない笑顔。
その裏側の方ではとんでもなく怖い顔をしているんだろうな。
「で、ですが、まだ僕がそれを承諾するという話にはなっていませんし誓約書みたいな物を書かなければならないんじゃないんですか?それをそんな……カマを出しての脅しなんて…」
「はい。それはもう申開きもありません。あなたにはただ巻き込まれただけという話にもなります。しかし…磁電鉄鉱石を高値で売り出して持って来させあわよくば私達の残業時間を増やしたという罪があります。なのであなたにはその罰を受けてもらう必要があるんですよ。」
別の意味でそれはただの逆恨みなんじゃないか?
俺に対する意見どうこうと言うよりかは思いっきり私情が挟んでんじゃねぇか。




