魔力容量増強術
考察、解析ターンが続きます。
苦手な方は結論だけ掻い摘んで読んでください。
日の当たり具合も少し変わってきたし、今日の解析はこのくらいで止めよう。
文字の本を読んでいると、お父さんが帰ってくる時間になった。
「ただいま。」
「おかえりー!」
「シア、魔法の調子はどうだ?」
「少し慣れてきたよ。どうやったら強い魔法ができるか試してたの。」
「エト、聞いてよ。シアったら変な格好で魔法の練習してたのよ。」
「どんな格好してたんだ?」
「こんな感じー。」
そこまで刺激が少ないブリッジの態勢を見せる。
「あははっ、いひっ!な、何だよそれ!そんなんで魔法使うやつなんか見たことないぞ。」
ぼくだって見たことない。
「だって、やってみなきゃ分かんないもん。」
不貞腐れた顔をする。
「だっ、だからって…っ!」
笑うなーー!
「まあ、あれだ……色々やってみるのは。良いことだ。」
「うん……。」
寝る前に何か魔力を使うことないかな。魔力容量を増やすために、なるべく今持っている魔力を消費したい。
お母さんが内職している魔石を使おう。お金にもなるし、一石二鳥だ。
「まま、ぼくもそれやりたい。」
「魔法を使えればできないことはないけど、どんなものかちゃんと分かってないと難しいわよ。」
「じゃあ教えて。」
「んー、シアは電気って分かる?」
「何となく。」
「電気っていうのは3種類あるの。プラスとゼロとマイナスって言うんだけど、普通のそこら辺にあるものはゼロなのよね。ゼロって言うのは何もないんじゃなくて、プラスとマイナスが一緒にいるとそうなるわ。」
「うんうん。」
「ゼロのものはプラスの周りをマイナスが回ってるのよ。」
これは量子力学が発達していないということなのだろうか。それとも、分かりやすいように[ラザフォードの原子模型]的な説明をしているのかな。
「そのプラスとマイナスを離すには、魔力みたいな力の素、エネルギーが必要なの。逆に、離れたプラスとマイナスが近づくと、エネルギーを出すわ。機械とかはそのエネルギーを使って動いてる。ここまでは分かった?」
「分かった!」
「前に高いところにあるものはエネルギーが高いって教えたわよね?それと同じで、プラスとマイナスが離れているほどエネルギーが高くなるの。だからこの2つを離すのは、高いところに持ち上げるのと同じようなもの。シアが抱っこされたまま手を離されたらどうなる?」
「落ちる!」
「落ちたらどうなる?」
「痛いかな。怪我するかも。」
「そうよね。それは高いところから低いところに行ったときに、高さのエネルギー、位置エネルギーって言うんだけど、手を離してから落ちるまでにシアを動かすエネルギーに変わったの。そしてそれは、シアが下に落ちてぶつかったときに、シアに痛みを与えるエネルギーに変わるわ。この椅子から落ちるよりも、屋根の上から落ちた方が痛いよね?」
「うん、屋根の上から落ちたら骨折れるかも。」
なんて聡明な母親だ。前の母親もこんなんだったらぼくはまともに生きていけたのに。
「話を電気に戻すと、電気も同じで離れてるほどエネルギーが高いの。あとは電子の数が多くてもエネルギーが大きいわ。マイナスの電気は電子って言う小さな粒で、ゼロのところからそれを引っ張るとプラスとマイナスに分かれるの。プラスの方は動けない。」
「そうなんだ。」
今のところ、魔法以外の物理法則の相違は見当たらないな。分かっていることを聞くのは退屈だけれど、もしかしたら相違点があるかもしれない。
「基本的にそこら辺にあるものはゼロの粒で出来ていて、そこから電子をいっぱい離すの。離れた電子を持っている手を離すと、またプラスの方に戻っていくわ。ゼロから魔法で電子を離して、手に持った状態のままにしておけるのが魔石よ。」
やっぱりコンデンサーだ。簡単に言うと少しの間だけ電気を溜められるもの。でもなんで?半透明の石にしか見えないんだけど。
「シア、分かった?少し難しかったかかしら。」
「大丈夫、分かったよ!ままは教えるの上手だね。」
ここまでは点電荷の話しかしていない。
「どうやったら魔石に溜めた電気がエネルギーになるの?」
「電子が動くと電気が流れるわ。つまり、電気が流れるってことは電子が動くことなの。動ける電子がプラスの方に行くと、プラスからマイナスに電気が流れる。だから、電子の移動する方向と電気が流れる向きは逆なのよ。」
ここまで同じになる?それとも電磁気の研究よりも電子の発見が遅いのは自然なことなのかな。
「電気が溜まったもの、つまりプラスとマイナスが分かれたものを動かしたいものに線で繋ぐの。プラスとマイナス、両方から線を出して、輪っかになるようにね。そうすると溜めたときとは逆の方向に電気が流れるわ。魔石の中で離れたマイナスが、輪っかを通って反対側のプラスに移動するの。水が流れるのを想像してみて。魔石を繋ぐと、高いところにある水が輪っかを通って動かしたいもののところに行く。水車みたいなものかな。そこまで行くと水が落ちて水車を回す。それがまた魔石のところに戻ってくる。」
こんなもの知らない。原理はコンデンサーだけど、めちゃくちゃ凄いキャパシターみたいな感じかな。電気が溜まった魔石が流通中に放電してしまわないもの凄いし、静電容量も凄い。凄すぎて凄いしか出てこない。魔石と呼ぶのに相応しい。
そしてぼくは予てから疑問に思っていたことを訊いてみる。
「まま、生まれ変わったことある?」
「いきなり何よ。どうしたの?」
「ぼくさ、ほんとは生まれ変わってきたんだ。だから周りの子よりも早く色々分かるようになったの。ままもそうでしょ?」
「あら、そうだったの。じゃあままと同じなのね。」
胸が早鐘を撞く。言葉が出てこない。やっぱりそうだったんだ。お母さんはパパに比べて知識が多すぎる。




