帰路
列車に乗ってグネルブに戻る。疲れてお父さんの膝で寝ていた。
「ままー!ただいま!受かったよ!」
お母さんの胸に飛び込む。
「ほんと!?流石シアね。よく頑張ったわ。おめでとう!4歳で受かるなんて最年少と並ぶんじゃない?」
頭を撫でくり回される。やっと魔法が使える。嬉しさでお母さんを強く抱き締める。
「もう暗いし、今日はご飯食べてお風呂入ってすぐ寝るぞ。また明日から歩くんだ。」
「うん。ぱぱもままもここまでありがとう!」
また船に乗ってエリー島のエジェプロンに着いた。ぼくとお父さんは相変わらず船酔いにやられている。
「ねえ、また今日もここに泊まるんだよね?」
少し休憩して回復したら、遊びたくなってきた。
「そうよ。」
「あのね、釣りしてみたい。」
ちょっと我儘を言いたくなった。
「釣竿は高いし、荷物になるし、クナルフじゃ使わないでしょ?残念だけど、釣りは無理かしらね。」
釣り、やりたかったな。涙を堪えて少し膨れっ面をする。
「シア、そんな顔すんなよ。今日は荷物が多いからさ。」
「分かった。」
涙が零れてしまった。4歳モードだ。
「しょうがないな。誰かに借りられそうか聞いてくるよ。」
お父さんについて行く。防波堤で釣りをしている人に声を掛けてくれる。
「すみません。ここら辺で釣竿借りられたりってしますかね?」
「釣竿持ってねえってことはここいらの人でねえな?どっから来たんだ?」
「クナルフ村から来ました。」
「おー、そったら遠いとっから来たんか。なんでこんなとこに。」
「息子が魔法使用免許試験を受けるのに、レオールまで行ってきたんですよ。」
「息子ってこの坊ちゃんか!?いくつだ?」
「4歳。」
ぼくは指を4本立てる。
「受かったんか?」
「うん。」
魔力使用免許証を見せる。
「ほんとだ!いやー、4歳で受かるっつったらすげえよ。頑張ったんだなあ。おじちゃんのこれ貸してやっから、やってみろ。どうせ暇で遊んでただけだからよ。」
「やったー!ありがと!」
ぼくの人格は1つのはずなのに、二重人格みたいだな。優しいおじさんに釣竿借りられて良かった。
おじさんに釣りを教えてもらう。と言っても、ぼくはただ釣竿を持つだけだ。その間にお父さんがお母さんとポックを呼んできた。
「お貸しいただいてありがとうございます。」
「いやいや。頑張った坊ちゃんにご褒美だよ。」
「ねえ!見て!釣れた!」
漁ったものを得意気に見せる。
「おー、立派立派。この魚どうすっか?家で食ってくか?つーか、今日はここら辺の宿さ泊まるつもりなんだろ?じゃあ家さ泊まってけよ。」
「いえ、そこまでご迷惑おかけするには……。」
「いいんだよ。はー、子供らも居ねえから、広いとこさばあさんと2人で住んでんだ。」
「エト、どうしよっか。」
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます。」
釣った魚を持って家にお邪魔する。
「ばあさん、お客さん連れて来たど!」
「あらー、どちら様?」
「この坊ちゃん、4歳で魔法使用免許試験受けて合格してクナルフさ帰るとこなんだってよ。釣りやりてえって言うから、釣竿貸してやって、どうせなら家さ泊まってけって言ったんだ。」
「いやー、すごい子だね。ささ、上がってくんろ。」
今更だけど訛りきついな。ここら辺はそうなのかな。
「「「お邪魔します。」」」
ポックは庭で待っててもらう。釣ってきたヒラメみたいな魚を料理してもらって食べる。
「美味しい!ありがとう!」
「いっぱい食べな。こっからどんどんおっきくなんだから。」
次の日、3人でお礼を言うと、お土産に干した魚をもらった。お母さんがここら辺の宿の相場のお金を渡そうと問答したが、結局受け取ってもらえなかった。
「良い人達だったね。」
「シアもああいう人になるんだぞ。」
草原を抜けて、またアンガトノン山を登る。暑いなー。




