魔法使いの資格①
「ねえ、ナックは幸せ?」
ノナックと広場へ遊びに行く途中の草原で尋ねた。
「うん。家族も友達もみんな好きだよ。一緒にいると幸せ。シアは?」
「ぼくも。手、つなぎたい。」
「しょうがないなあ。」
また次の日、お父さんが帰ってきてから2人に話を切り出した。
「ぼくはいつになったら魔法使っても良いの?」
「10歳よ。……もっと早く使える方法もあるけど、やってみる?」
「やりたい!」
「シアならそろそろ行けるかもしれないぞ?」
「何をすれば良いの?」
「試験を受けるのよ。前にしてい良いことと悪いことを考えられなきゃ、魔法は使っちゃダメって言ったでしょ?普通は10歳になる年に学校で受けるんだけど、それより前にも受けることはできるのよ。」
「やったー!それやりたい!」
「ちょっと遠くまで行かなきゃ行けないのよねえ。とりあえずは試験の勉強をしなさい。受かりそうならまた考えるわ。」
「じゃあ次の休みの日に一緒に図書館に行って、それ用の本を借りてくるか。」
「ありがとう。」
数日後、図書館に来た。
「シア、ここに試験の本がある。科目は倫理と法律。倫理は面接式で配点が倍だ。」
じゃあ倫理の本を2冊、法律の本を1冊借りるか。魔法の理論は分からなくても使用許可はもらえるのか。許可はあげるから使えるなら使っても良いよってことだな。今日は、というか試験に受かるまでは物語の本は止めておこう。
「シ、シアちゃん!?もう魔法使用免許証の試験受けるの!?」
「これから勉強して、受かりそうになったら受けるの!」
「今3歳だよね!?」
「あ、いや、4歳になったとこだよ。」
「それでも凄いよ!私は試験に受かったの12歳だからなー。」
「そんなの関係ないよ。エルビルさんは魔法使えて凄いもん。」
「その歳で謙遜まで……。エトシュボールさん、本当に素晴らしい教育をなさったんですね。私に子供が出来たら、是非教えてほしいです。」
「あ、え、いや……。俺も試験は1回落ちてるんで……。あるときからシアが急に魔法に興味を持ったんですよ。俺がしてるのは、やりたいことを応援してるだけです。」
年末になった。お父さん達狩人は"クロ"という動物の丸焼きを食べる習慣がある。イノシシとブタの間のような動物だ。去年も食べた気がする。
「ほら、父さんが採ってきたクロだぞ。」
近隣の狩人の家族を交えて草原の開けた場所で食事をする。近隣と言っても体感で1km以上離れているので、普段は狩人同士の交流しかなく、こういう催し物でしか家族含めて集まることはない。宛ら父親の会社のバーベキューに参加する家族のような気分だ。
もっと草原を拓けば良いのにとも思うが、こんなところは数少ない狩人しか住まないのだろう。
「ぱぱ、美味しいよ。いつもありがとう。」
「そうかそうか。良かったな。いっぱい食べろよ。」
トゥロフを見かける。そういえばトゥロフのお父さんも狩人だったな。
「おお、シア。」
「トゥロフ!」
お皿に山盛りの肉を積んでいる。そりゃあガッチリもする訳だ。
「お前ちっこいんだから、肉いっぱい食えよ。分けてやろうか?」
「ぼくの分はあるから大丈夫。それに、ぼくのが歳下なんだから小さくたって大丈夫だもん。」
「俺と1歳しか変わんねえじゃねえか。」
「いつか抜かすかもよ?」
「それはないだろうなー。」
今に見てろよ。
暗くなってきた。みんなで焚き火を囲む。狩人のリーダーのような人が挨拶をする。
「皆様、本日はお集まりいただきありがとうございます。今年も皆様方には大変お世話になりました。」
「うるせー!驚々しい挨拶なんか聞きたかねえんだよ!」
酔っ払いの野次が飛ぶ。
「はぁ……。じゃあみんな来年もよろしくな!」
なんというか、豪快な人たちだな。
家に帰ってきた。余ったお肉と、お留守番していたポック用に貰ってきた骨をあげる。
「置いてっちゃってごめんね。美味しい?」
「あう!」
抱き締めて家に入る。
「シア、今年は頑張ったわね。来年もよろしくね。」
「本当によく頑張ったよな。来年もよろしく。」
「2人とも応援してくれてありがとう。大好きだよ。来年もよろしくね!」




