表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/166

誕生日

【注意】軽微な性的描写があります。

遊びつつ勉強をして数ヶ月が経過し、5年生で習う表意文字くらいまでは覚えた。このペースだと日本の常用漢字の倍くらいはあるな。


パターンもある程度分かってきた。山、川のような物をそのまま象った象形文字。上、下のような指示文字。田と力を併せて男となるような、意味を組み合わせた会意文字。この3種類だ。漢字には4つの成り立ちがあると小学校か中学校で習ったが、ここのレクロス文字には形声文字がないようだ。例えば、「狩」は「犭」が獣を表し、「守」には「まもる」という意味は完全になく、「シュ」という音を表すためにしか使われていない。これが形声文字だ。


初見で発音できないのは難点だが、日本語でも訓読みという形声文字の存在価値がなくなった漢字の読みがあるので同じようなもんか。


もう冬になった。1月は8日×4週の32日で、1年は11月ある。11月は3日増えて合計で355日だ。地球に近いこの周期は、生命の誕生に適しているのだろうか。


今が一番寒い時期。2月から暖かくなって、5月に一番暑くなる。とは言っても日本ほど暑くは感じない。温湿度計がないので体感だが、ケッペンの気候区分で言うとCfb(西岸海洋性気候)くらいだろうか。


そしてぼくは11月19日生まれ。そろそろ誕生日だ。


「ねえねえ、今度ぼくの誕生日なんだ。ままがご飯作ってくれて、お友達も呼んで良いって言うから、みんなで来てくれないかな?」


広場でみんなに声をかけた。


「行く!」「行く!」「私も!」「俺も!」「僕も!」


5人とも来てくれるようだ。


「遠いけど大丈夫?」


「シアが歩いて来れるくらいなら俺らは余裕だよ。」


トゥロフが答える。2つ上でガッチリしている。見た目はガキ大将っぽいかな。


「シア、何か欲しいものある?」


ノナックが尋ねてきた。欲しいもの?君が欲しい。


「みんなが来てくれたらそれだけで嬉しいよ。みんなと遊べたら嬉しい。」


「何か好きな物は?」


「うーん、キラキラする綺麗なものが好き。」


「分かった。」


婚約指輪とか贈られちゃったらどうしよう。だめだよ、ぼくまだ子供なのに……。というか、誕生日にプレゼントを渡す文化もあるのか。


誕生日当日が来た。そろそろ夕方になりそうな時間にみんなが集まる。お母さんの友達のショタコンのエマさんも居る。


「「「シア、4歳のお誕生日おめでとう!!」」」


「シア、私たちからはこれよ。みんなのお小遣いじゃ沢山は買えなかったけど。はい。」


エリーがプレゼントを手渡してくれる。


「ありがとう。これはなあに?」


「"エスィフィトラデューフ"よ。」


なんじゃそりゃ。


「ごめんね。ぼく聞いたことなくて。どんなものなの?」


「火を点けると、色んな色の火が出るの。シアならきっと好きだと思うわ。」


……花火?花火!花火だ!!


「ありがとう!これ大好き!」


「あら、知らないんじゃなかったの?」


あっ、やべっ。


「あ、いや、そういう綺麗なもの好きだよってこと。」


エマさんがそわそわしている。渡すタイミングを(うかが)っているんだな。エマさんの方を向いてあげよう。


「はい。私からはこれ。お店の物だけど、シアちゃん果物好きでしょ?いっぱい食べて大きくなってね。私は小さいシアちゃんも好きだけど。」


果物の盛り合わせだ。嬉しいけど、最後に余計なことを言うな。エマさんは可愛い感じだけど、女の人なら背が高くてきりっとした格好良いひとがタイプだ。エリーなんかが大人になったらきっとタイプだな。


「ありがとう!いっぱい食べる!」


「父さんと母さんからはこれだ。」


本かな?開いてみると魔法について色々と書かれている。ぼくでも読める字で書いてあるから、子供用の魔法図鑑みたいなものかな?今更だけど、印刷技術はどうなっているんだろう。


「ありがとう!魔法の本?」


「そうよ。シアが魔法のためにお勉強頑張ってるから、喜んでくれると思ってね。」


「じゃあこの通りにやれば魔法が使えるんだね!」


「読むのは良いけど、使うのはまだダメよ。今のシアが使ったらお父さんと私が悪い人になっちゃうわ。」


魔法を使う許可がないと使っちゃいけないのか。どうやったら使用許可が出るのか聞きたかったが、今は止めよう。


「分かった。」


お母さんが作ってくれた料理をみんなで食べる。豪勢だなー。デザートにエマさんの果物を食べる。ここで出ないということは、お菓子の文化はないみたいだな。悲しい。


「これはなんという果物ですか?」


エリーがエマさんに尋ねる。


「それはオナルゴレム。美味しいかな?」


周りに果肉の着いた種が鞘にいっぱい入っているような青紫色の果物だ。ラムネのような味がする。


「はい。今度、母と買いに行きます!」


「ありがとう。楽しみに待ってるね。顧客ゲット!」


思っても子供相手に口に出すなあほ。


「はい、あーん。どう?シアちゃん美味しい?」


「うん!」


「はぁぁぁ!可愛い!これからも毎日果物持ってこようかな。」


抱えられて頬擦りされる。止めろ変態。


宴も(たけなわ)、お父さんしかお酒は飲んでいないけれど。


「みんなが持ってきてくれた花火やろうよ。」


みんなで外に出る。寒い、小雪がちらつく。誕生日じゃなかったら非難轟々だっただろうな。花火は夏のイメージがあるけれど、ここではそんなことはないようだ。


手持ち花火をみんなで持つ。


「"ユーフ・ティテ"(蛍火)」


お父さんが魔法でみんなの花火に一気に火をつける。長い詠唱は要らないんだな。こんなことは後で考えよう。


色々な色の火が飛び出る。綺麗だな。祖父の自転車の後ろに乗って、ホームセンターに行って買ってもらった花火を思い出す。


「綺麗だね。こんなものがあるんだね。ぼく、花火好き。」


「喜んでくれて良かったわ。私達も嬉しい。」


花火を振り回して遊ぶ。


「シア、危ないぞ。火傷したらどうするんだ。」


前と同じ怒られ方。


「そろそろみんな帰る時間だね。俺が送って行くから。忘れ物はないか?」


もう終わりか。楽しい時間は直ぐに過ぎる。ノナックの服を(つか)む。


「シア、どうしたの?」


「帰っちゃいや。」


「困ったなぁ。」


「ナック、もう学校始まるからあんまり遊べなくなるでしょ?お兄ちゃん欲しかったの。今日だけお願い。」


4歳の純粋な想いと……いや、それしかない。絶対に。何故(なぜ)か兄が欲しかったという想いがある。前のクソみたいなのの反動だろうか。


「シア、我儘(わがまま)言うな。ノナック君が困ってるだろ。」


「だめ?」


「ノナック君ごめんな。普段は聞き分けが良いんだけど、時々こうなるときがあるんだ。シア、離しなさい。」


「……お父さん、泊まってっても良いですか?」


「ノナック君は大丈夫なのか?」


「通信魔法使えますよね?連絡してくれればぼくは大丈夫です。」


「俺は使えるが……誰か家族の魔紋(まもん)分かるかな?」


「母のがここに。」


ノナックはつけていたペンダントをお父さんに渡す。訳の分からないことが起きているが、考察は後回しだ。


「ノナック君、シアの我儘(わがまま)聞いてくれてありがとう。シア、感謝するんだぞ。」


「ナック、ありがとう。ぎゅー。」


ノナックに抱き着くと、頭を撫でてくれる。


お父さんはノナックのお母さんに連絡したようだ。


「みんな、今日はありがとう。凄く楽しかったよ!また広場で遊ぼうね!ばいばい。」


「「「「ばいばーい。」」」」


お父さんが3人を送っていく。トゥロフは家の人が迎えに来て一緒に帰った。エマさんも今日は泊まるようだ。お母さんと色々と話したいらしい。


ぐへへへへ。ここからが本番だ。……ごめんなさい。何もしません。


「2人ともお風呂入ってきちゃってね。」


確定演出かな?


一緒にお風呂に入る。ノナックのノナックが可愛い。頭を洗ってもらう。ノナックの体も洗ってあげる。


「ちょっ、くすぐったい!」


「あ、ごめんね。」


ぼくは4歳。ぼくは4歳。


お風呂を出ると、お母さんとエマさんはまだ話し込んでいた。


「ぼくたちそろそろ寝るね。おやすみなさい。」


「お母さん、エマさん、おやすみなさい。」


「「おやすみなさい。」」


2人で布団に入る。どきんどきんの同衾(どうきん)。あ、オヤジギャグが。


「ナック、今日はありがとう。」


「シアが喜んでくれるなら、これくらい何ともないよ。あと少ししたらあんまり会えなくなるけど、時々は遊ぼうね。」


「うん!おやすみ。」


「おやすみ。」


ノナックを抱き枕に寝る。こんなお兄ちゃん欲しかったな。


次の朝、パンツの中を確認する。体が発達していないので、寝てる間にということはなかったようだ。良かった良かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ