クナルフ村①
【注意】軽微な性的描写があります。
「ままー!広場行ってくる!」
「分かったわ。暗くなる前にはちゃんと帰ってきてね!」
「うん!」
みんなが怖がるからポックには留守番しててもらおう。大きいだけで可愛いんだけどな。
そういえば転生してから1人でゆっくりと村を歩くのは初めてだな。見慣れてはいるけれど、具体的にどの建物が何なのか理解していない。
広場のある村の中心部へと向かう。家を出ると庭の外に大きな畑が見える。ここら辺は農民と狩人の住処だ。畑を抜けると次は草原のようなところだ。次に段々と石などで舗装された道が見えてくる。なるほど、暗くなるとこんな草原は歩き難いな。というか広すぎる。暫くすると、野菜や果物、魚、肉などを売る市場、雑貨屋、鍛冶屋……などが見えてくる。ヨーロッパ人みたいな人が多いな。じゃあお母さんは外国人なのだろうか。
「あ!シアちゃん?」
お母さんの友達のエマさんだ。市場から声をかけられた。
「こんにちは。」
「こんにちは。また広場に遊びに行くの?」
「うん!」
「良いエモップが入ったんだけど、少し持ってかない?この前遊びに行ったとき、ご馳走になっちゃったからさ。」
ピンク色のリンゴのような果物だ。
「ありがとう!ぼくこれ好き。」
「じゃあまた帰りに寄ってね。」
「分かった。」
「シアちゃんは本当にお利口さんだよねー。お母さんに似て可愛いし。あたしもシアちゃんみたいな子、欲しいなー。」
この人はおねしょたが好きそう。
「えへへ、ありがとう。ぼくもエマさん好きだよ!」
満面の笑みで愛想を振り撒くと、物凄い表情をした。怖いから早く行こう。
「じゃ、じゃあ気をつけてね!」
「うん、またねー!」
また歩き続けると、図書館や歴史館、役場などが見えてきた。外観からなので飽くまでも推測だが。文化や政治は中心部が担っているのか。気になるけれど、今日は広場へ行こう。
広場に着くと、いつもの仲良しのところへ行く。男の子3人と女の子2人が居た。3〜7歳だ。他にもグループができている。子供は結構いるんだな。
「お、シアがきた。」
「今日は何して遊んでるの?」
「これで遊ぼ!」
……ゴムボール?こんなものを作る技術はなさそうだが。
「いいよー。ねえねえ、これってどこで買ったの?」
「外から物を売りに来る人がいるだろ?それで父ちゃんに買ってもらったんだ!」
どこかに科学技術の発展した地域があるのだろうか。あー、気になる。でもまずは自分の近くから観察していこう。あれこれ手を出すと、頭が回らなくなりそうだ。
「こんなものもあるんだね!これで何する?」
「3人ずつに分かれて、あっちの棒の間に入れたら1点!手で触っちゃダメ。この線から出るのもダメ。」
簡易サッカーか。テニス以外の球技は苦手なんだよなー。
「わかった。」
そして遊び始める。初夏の陽気に汗をかく。
「シア!パス!」
「あっ……。」
「おい!何やってんだよ!へたくそ!」
案の定上手くできない。転生しても得手不得手は変わらないのかな。
「だって……だってぇぇ……!!」
また涙が。しかしよく泣く。前も大人になってからも泣き散らかしていたな。
「トゥロフ!シアはまだ小さいんだからそんなこと言っちゃダメでしょ!そんなことすると魔法使えなくなるからね!」
ニャポックを呼ぼうとしたが、最年長の女の子のエリートネが助けてくれた。赤毛でくせっ毛で、キリッとしている。
「シア、大丈夫だよ。泣かない泣かない。」
同じく最年長の男の子のノナックが来てくれた。切れ長の目で大人になったら格好よくなりそう。そして子供の今は可愛さも溢れている……。抑えるんだ!28歳の俺!
「ナックー、うぅ……。」
泣きながら手を広げる3歳のぼく。ノナックと抱擁を交わし、ぼくにノナックの汗がつく。そしてノナックはぼくを押し倒し、啄むような接……はっ!頭の中がどこかに飛んでしまっていたようだ。これも転生の影響か!?
ノナックは普通に抱き締めて頭を撫でてくれた。幼児の特権を堪能し、気分が落ち着いてきた。
「……ごめん。言いすぎた。」
トゥロフが謝ってきた。
「もう大丈夫……。続きやろ!」
そしてまたボールを蹴り始める。意地悪をすると魔法が使えなくなる……。お母さんが言ってた、分別がつくまで魔法が使えないことと関係があるな。
「空が少し赤くなってきたね。そろそろみんな帰ろう。」
最年長のエリーがみんなに声をかけた。彼女がリーダー格か。ボールを蹴るだけなのに楽しかったな。流石3歳、箸が転がっても面白い。




