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社会人① 楽しいお仕事

ぼくは晴れて社会人になった。何でみんなぼくの節目に合わせて死ぬんだろう。


初めは都心にあるの本社で数週間の研修だ。実家から通った。


実家から離れて一人暮らしをすることになった。とは言っても隣県なので、実家からは車で約1.5時間の距離だ。


「随分若いんじゃないの?(いく)つ?」


「25です。」


「あ、思ったより若くなかった。」


うっ……。5762ダメージ。事務兼作業員のおばちゃんが案内してくれた。制服を貰って着替えて、挨拶(あいさつ)に回った。とりあえずは猫を被っておこう。素を出すには尚早だ。


1日目は施設の案内や説明で終わり、家に帰った。疲れたな。実家に眠っていたので持ってきた包丁セットを取り出し、夕ご飯の準備を始めた。切れ味悪いな。これから毎日、朝昼晩を自分で用意するのか。料理は好きだけど、平日に時間をかけるのは得策じゃないな。作り置きを考えなければ。


安全講習などを受け、上司に指導されながら開発業務を始めた。初めは指示された通りに調製し試験をすることしかしなかったので、脳死でできた。


思った通り、ぼくの望むレベルの業務はなさそうだ。これは善悪をつけているのではない。世の役に立つものを開発して販売するのも必要で大切な仕事だ。しかし、主に理論など新しい発見をしたいぼくにとってここの環境は測定機器も少なすぎるし、何しろ会社にそんなことは求められていないのだ。分かっていた。だが(しばら)くは続けよう。


教育を担当していた上司は曲者(くせもの)だった。いやー、うるさい。怒鳴る。だが学生時代の指導教員に比べたらかなりマシだった。休息の時間だって十分にとれるし、落ち込むようなことはなかった。大学での経験があったので適当に流していた。


「そんな言い返したりしないで、黙ってはいはい聞いてれば良いんだよ。」


先の事務兼作業員のおばちゃん、木下さんにそう言われた。え?ぼくそんな言い返してた?まあ確かに事実と異なることを言われたら訂正はしてたけど。周りから見ると口答えしているように見えるのか。まあストレスは感じないので、違うと思ったことは訂正する。その方が良いしね。無駄な紛擾(ふんじょう)をする気はないが。


(しばら)くして、実験室で作業をしているときに、木下さんがぼくの本性を探る質問をしてきた。


総務に強烈なお局がいた。若作りで凄く(程度が甚だしいの方の意味ではない)、上の立場の人に(へつら)う様が気色悪かった。


「総務のお局さんのことどう思う?」


とても悪意のある質問だった。ここの返答でぼくのへの評価は一気に変わる。面白そうなのでぼくは猫を()がした。


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