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フリーター期Ⅱ⑦ 世の中に たえて桜の なかりせば

翔吾に電話をして、友達に送ったメッセージをこいつにも送った。


「しょうがないですね。今から行きますよ。」


「ダメ!そんなんじゃ間に合わない!」


翔吾は信じていないようだった。もう良い、ぼくが職場に電話しよう。


「もしもし。いきなりで申し訳ないですが、そちらで星野湊と言うのが働いてますよね?それの友達です。今から死ぬと言って、もう完全に自殺準備を終えています。直ぐに信じられないとは思いますが、時間が限られています。身分を明かしますのでメモを取ってください。私は生野颯、電話番号はXXX-XXXX-XXXXです。」


「申し訳ないですが、直ぐには信じられません。大学に行くから引越しするって言って、この前送別会をやって、見送ったところなんですよ。」


こいつ、職場に嘘ついてたのか。


「大学は全部落ちてます。私が勉強を見ていたので全て知っています。お願いします。信じてください。虚偽でしたら仕事を止めた分の賠償金をお支払いします。」


「……分かりました。一応行ってみます。」


「ありがとうございます。なるべく急いでください。鍵がかかっている可能性があるので、壊せる工具を持って行ってください。」


その後、警察に通報し、翔吾にメッセージを送った。


「お前も来い。」


「もう向かってます。」


ぼくは湊の家へ車を飛ばした。制限速度なんて気にしていられなかった。


湊の家に着くと、部屋のドアが開いていた。壊れている訳ではないので鍵はかかっていなかったのだろう。いつも停めている駐車場に停めず、乱暴に路駐をした。階段を駆け上がり、部屋に入った。


職場でのお母さんのような存在だと言っていた年配の女性と、店長らしき屈強な男性が神妙な面持ちで居た。


湊は床に座って俯いていた。良かった。間に合った。本当に天井に穴が空いている。


「お電話を差し上げた生野です。助けてくださってありがとうございます。」


2人に挨拶をすると、ぼくは湊に近寄って思いっきり(ほほ)に一発()らわせた。他人に手を上げたのなんて、幼少期の喧嘩以来だ。こうでもしないと腹の虫が治まらなかった。


「ふざけんな!何してんだよ!祐也の墓参りに行ったときのぼくを忘れたのか!?またぼくに同じ思いをさせる気なのか!?」


「……ごめん。」


「ぼくに連絡したのが失敗の原因だな。知恵と思考力は時空間を凌駕(りょうが)できるんだ。お前如きがこのぼくを出し抜けると思うなよ!」


ぼくは大泣きしながら湊を抱き締めた。


「大丈夫何とかするから。これからのことは一緒に考えよう。もっと気にかけてやれば良かった。ごめんな。そろそろ翔吾も来るから。」



という、幸せな夢を見た。


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