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フリーター期Ⅱ⑥ 焦燥

「どうやって死ぬの?」


何だまた冗談か。こいつもぼくと同じでこう言う気質あるからな。


「首()りにする。お腹空いてきたから何か食べたいな。」


()る前に食べると吐くよ。」


「分かってるから食べないけど。」


「それよりさ、結局化学が諦められなくて研究開発やることになったんだ。内定貰った。」


「良かったじゃん。君は頭が良いから何でもできるよ。」


「生まれ変わったら何になりたい?」


「うーん、歌手かな。」


「歌手になりたかったんだ。」


笑いながら答えた。


「ホームセンターで工具買ってきて天井に穴開けた。そこに縄引っ掛ける。本当は昨日死のうと思ったんだけど、1日延びちゃった。」


ここで違和感を感じ取った。具体的すぎる。


「え?待って、本気じゃないよね?」


「いや、本気だよ。今はスーツ着てるんだ。これで死ぬ。後1時間後に友達に引越しを手伝ってって言って来てもらうことになってる。それで見つけてもらう。」


バイト先でスーツ姿褒められたって喜んでたなそう言えば。


「何で最期にぼくに電話かけてきたの?」


少しでも時間を稼ごうと、平静を装って策を練った。今のバイト先には1度行ってガソリンを入れたことがある。チェーン店なので名前は覚えている。マップアプリで調べると、湊の住む市に2つあった。位置的に1つに絞れた。


「君なら自殺否定しないと思って。」


「何?自殺を止めてほしいの?」


湊の住所を知る必要がある。湊の家に行くときはいつもカーナビの履歴からナビをして行っていた。急いで車に向かい、湊の住所をメモする。カーナビを起動する音が鳴る。


「今から来ようとしても無駄だよ。」


「別に止める気はないよ。知っての通りぼくは自殺肯定派だからね。ちょっと車に忘れ物したの取りに来ただけ。」


友達に片っ端からメッセージを送った。


「知り合いが自殺しようとしてる。今ぼくが電話中で、なるべく時間を稼ごうとしてる。星野湊 21歳 これが住所。警察に通報してほしい。」


「でももっと相談してほしかったな。1回考え直さない?」


「止めるの?」


「うん。ぼくは君に生きていてほしい。自殺肯定派だけど、君が死ぬのは辛い。」


「ありがとう。気持ちだけ受け取る。」


電話を切られた。しまった。他のことを考えすぎてうっかり止めてしまった。鬼電をするが出ない。



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