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フリーター期Ⅱ② 自己暗示の勉強

【注意】軽微な性的描写があります。

「こっちもして良いですか?」


「やだ。恥ずかしい。」


「したいです。」


「……じゃあ少しなら。」


()がれた。


「うわ、尊い……。」


きっしょ!言葉選びも気持ち悪いわ。


「子供としてるみたいです。」


オラのが3つ上だぞ。


終わる前、ぼくは左目を閉じて、右目を少し開けて、歯を軽く食いしばって、泣きそな顔をした。終わった直後は両目を閉じて口を少し開けたままにした。


……っふぅ。まあ顔はそこそこ好きだし良いや。一方的に軽くされただけだし。


「今日は楽しかったです。ありがとうございました。」


終わった後に感想送ってくる奴がいるか?初めてなんだけどこんなこと言ってきた奴。とことん気持ち悪いな。


「ぼく、君のこと好きになった。本当は次に会ったときに言おうと思ってたんだけど、我慢できなくて……。直接伝えたいから、今日会える?」


「分かりました。バイト終わってから行きます。」


「ありがとう。」


ぼくは恥じらいを演出するために、お酒を飲んで迎えを待った。


「あの……、えっと……。ごめん、やっぱり中々言い出せないや。もうちょっと待って。」


「はい。」


「あの……メッセージで送った通りなんだけど、……、ぼく、君のこと好き!付き合ってほしい!」


「僕も颯さんのことは好きです。でも、前にも言ったことあると思うんですけど、特定の人と付き合うのが怖いんですよ。別れたりしたら辛いですから。」


「やっぱりそうだよね。それは分かってた。でも、ぼくから別れることはないから。今までだって、飽きて別れるなんてことしたことない。」


「……。」


「頭良いから、話分かってくれるとこも好き。あっ、勝手に評価してごめん、ぼくは他人を評価できるような人間じゃないのに。」


「そういう謙虚なところ好きです。でも、僕は人としての感情が欠落してるんで。颯さんが死んでも何とも思いませんし。」


出た!感情ない設定!いやー、どこまでも気持ち悪いな。


「そうなんだ。でもっ……、ぼくはっ……、君のだだったら、どんな痛みだって負えるよっ……。」


ヒノキ花粉ありがとう。ぼくは涙目で相手を見つめた。


「今日はごめんね、ありがとう。これくらいにしよ。明日も学校でしょ?」


そう言うとぼくは家まで送られた。帰り際に軽く嘔吐(えず)いて涙を(こら)えている振りをして車を降り、背中に視線を感じながら、玄関に鍵を差した。いや、差す手前で鍵が上手く入らない振りをした。涙で前が見えないので。手で両目を(こす)り、涙を(ぬぐ)う振りをして、今度はちゃんと鍵を開けて家に入った。


「泣いてる演技してきたわ。」


「そんなんで(だま)されるやついる?」


友達に電話をして笑ってやった。


「颯さん、今日泣いてましたよね?僕のせいでそんな辛い思いさせるくらいなら、付き合おうって思いました。颯さんのこと信じます。」


電話中にそんなメッセージが来たので余計に面白かった。


「ほら、やっぱり(だま)されてたよ!滑稽(こっけい)すぎて烏骨鶏(うこっけい)コケコッコーだわ。」


ぼくは失笑して変な声が出た。


「ありがとうめっちゃ嬉しい!これからよろしく!」


そう返信した。暇だしもう少し遊ぶか。


それから2度程会う約束をしたが、約束をすっぽかされた。ええ度胸しとるやないか。あ?どうやら、約束をしてから会うというのは苦手らしい。


「もう約束して会えないの嫌なんだけど。楽しみにしてたのに会えないの辛い。今度誕生日だよね?そのとき会いたい。」


「ごめんなさい。分かりました。」


「ご飯とかお菓子とか作ったりするから。今回は会えなくなったりするの絶対嫌だからね。」


「分かりました。」


当日になった。


「ごめんなさい。やっぱりなんか行く気になれなくなりました。別れましょう。」


電話が来た。つまんな。ぼくももう十分だし終わりにしよ。


「分かった。お菓子まだ作ってなかったからセーフ。」


本当は作る気なくて材料の用意すらなかったけどね。


「ごめんなさい。でも颯さんのお菓子食べてみたかったです。」


?????あの、思考回路大丈夫ですか?あ、いえ、こちらとしてはそれで問題ないんですが、言動の辻褄(つじつま)が合ってないですよ?あなた方のレベルってここまでお頭がよろしくないのでしょうか。


「ぼくは、一緒に色んなところ行ったりしたかった。温泉行ったり、花見したり、お祭り行ったり、花火見に行ったり、いっぱいしたかった!」


声を震わせながら伝えた。


「僕も行きたいです。じゃあ行くとき誘ってくださいよ。」


?????????頭おかしいんか?


「ごめん。今は友達で居たいとも思えない。」


「僕はまだ好きです。ここで終わったら、颯さんの家の近くとか通ったら思い出しちゃいます。」


「ごめん。」


「僕、嫌われちゃいましたかね。」


人智を超えた理論にぼくはお手上げで、これ以上何がするのを諦めた。ある程度溜飲は下がったし良いか。


有機化学ばっかりやって、数学も物理も有機化学の基礎になる部分を学んでいなかったこいつは、全て習うぼくの大学のカリキュラムを否定していた。皮肉を込めて、相手が見ているSNSで投稿した。


「数学とか物理とか化学の基礎やらないで大学で化学やってる人って、高校の化学と同じこと学んでるのかな?未だに投げ縄法とかやってる感じ?やっぱり馬捕まえたときは、どうどうって言って落ち着かせたりするのかな?」


プライドだけは高い相手にダメージは入っただろう。少し火傷している様を楽しんで、こいつとの一切の関わりを絶った。


本当は少し好きだったのかもしれない。格好をつけるためとはいえ、ぼくの過去を侮辱した奴を好きになっては駄目だったからこれで良かった。ぼくに苦悩しろ。


今日も犬を抱き締める。


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