大学生⑪ 勘違い
翔吾の家に集まり、鼎談をすることにした。
「雰囲気変わったね。」
黒髪で大人しそうな見た目だった翔吾は、金髪でぼくと同じ銘柄の煙草を吸っていた。悪影響を与えてしまったようで罪悪感に胸が締まったが、表には出さない。
ぼくも翔吾もそこそこ忙しい大学生なので、湊の面倒を隈無く見るのは無理だ。予備校を利用することにしたらしい。そこら辺はぼくはよく分からなかったので、翔吾に丸投げして取るべき講習などを選定してもらった。
「お金はどうするの?」
「親に出してもらう。これは俺の権利だ。」
そう言えは翔吾から湊が親に勘当された理由を聞いていた。親にセクシャリティを理解してほしくて打ち明けたら、忌避されたそうだ。それくらいで棄てるなら子供なんて産まなきゃ良いのに。
湊は親と連絡を取った。何度か話し合いをし、間に翔吾が入ることもあったようだ。時折電話口で怒鳴っていた。一番気にかけてくれる存在に見放されるのは辛いだろうな。ぼくもぼくで親はあまり好きじゃないけど、お金は出してもらっていただけ恵まれていたな。
そして、なんとか何とか予備校費を出してもらえることになった。
翔吾と2人でドライブする機会があった。ぼくは燻っていた想いを抑えきれなくなって伝えた。
「ぼく、また湊のこと好きになった。」
涙が溢れた。翔吾に伝えるのはデリカシー無いなと思うけど、事情を知ってるのはこいつしかいなかった。
「颯さんって隠し事なさそうに何でも打ち明けたりする癖に、大事なところは隠すんですね。」
「寧ろ本当に隠したいことを隠すためにベラベラ喋ってる。」
「流石です。ぼくもまだ颯さんのこと好きです。」
静まり返った。ぼく→湊→翔吾→ぼく、という、異性愛者同士では起こりえない三角関係が出来上がった。
「3人でグループ交際しませんか?」
「絶対嫌だ。誰も幸せになれない。」
帰宅後、ぼくは湊に想いを告げ、申し訳ないけど抜けると言った。渋られたが最終的には了承してもらえた。
新3を誘って夜のドライブに出かけ、事の詳細を半分ネタとして笑いながら話した。2人も別に真面目に聞いている訳ではない。
「誰も幸せになれないトライアングル。すごいね。」
「あたし明日仕事なんだけど。」
口々に感想を言い合って、明日仕事の臼井は寝始めた。もう深夜2時くらいだ。車を走らせすぎて県を跨いでしまった。
2人に話したら気が楽になって冷静になってきた。昔腐心していた相手との再開、他に好きな人がいるという嫉妬に駆られただけで、冷静になったら鎮火した。
翌日、もう一度湊に連絡を取った。
「久しぶりに会って少しぶり返したけど、冷静になったらそうでもなかったわ。ごめん。約束通り勉強は教える。その代わり絶対受かれよ。」




