表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/166

大学生⑧ 面白い痴(し)れ人

【注意】軽微な性的描写があります。

すべらない話のネタとなる出会いがあった。


いつものようにネットで男漁りをして見つけた男と温泉に行くことになった。相手の車で日帰りで行く予定だった。


「やっぱり日帰りだときついから、どっか泊まってからにしない?もう前日だからそういうホテルくらいしかないけど大丈夫かな。」


「そういうことしないなら良いよ。」


このくらいの年になると、体だけの関係を持つことを止めた。しているときは虚無感が紛らわされるが、終わると余計虚しい気持ちになると気付いたからだ。好きな人としかしないようにすると決めていた。


約束通り落ち合い、ホテルに泊まった。食べていたご飯で相手のTシャツを汚してしまった。謝ってその場を収めた。


お酒を飲んで酔って眠った。


……。違和感に起きた。は?こいつぼくの後ろに潤滑剤塗ってんだけど。


「何してんの!止めろ!何もしないって言っただろ!!」


「良いじゃん。少しだけで良いから!」


「気持ち悪い!触るな!」


罵詈(ばり)雑言を浴びせて萎縮(いしゅく)させ、シャワーで洗い流した。加齢のせいか肝が据わってきて、はっきりと断れるようになっていた。


取り敢えず眠かったのでまた眠った。


相手より早く起きると、荷物を(まと)めてホテル代を半額置いて出た。温泉地に向かう道だったので、地元なんかと比べ物にならないくらい田舎だ。最寄り駅までのルートを調べると、徒歩で1時間半だ。しょうがねえ歩くか。


駅までは一本道だ。車で追いかけられたら負ける。今でこそ笑い話だが、当時は恐怖感が強かった。柳田と臼井に電話をかけて愚痴(ぐち)りながら歩いた。念の為に位置情報を送った。


「何でいなくなったの!?戻ってきてよ!」


相手も起きたらしい。メッセージを送ってきた。


「説明しなきゃ分からない?てめえ何したのか分かってんのか?」


「頭おかしいの?別にそのまま温泉行けば良いじゃん!戻ってきてよ!」


「そっくりそのまま返すわ。危害加える相手に近寄ると思うか?」


「体が動かなくなってきた。助けて。」


そう言えば、パニック障害だか何だか持ってるって言ってたな。


「スマホ操作できてんじゃねえか。自分で救急車呼べば?」


「ここで死んだら君のせいだからね。」


「どこの国出身か知らないけど、少なくとも日本の法律では保護責任者遺棄致死には問われないよ。危害が加えられたのは確かで、それを避けるために逃げてるんだから。」


「もう……体が……動かなくなってきた……。」


「体動かなくなると、文章に3点リードつけて表現すんのかよ。本当なら自分で救急車呼べ。」


最寄り駅に着くまでは相手の動向を知る必要があったため、連絡を取り続けた。ホテルを出て追いかけて来ているのではないようだ。


真夏日に長時間歩いて、やっとの思いで駅に着いた。ブロック。さようなら。電車を乗り継いで、新幹線まで使って家に帰った。時間と金の無駄だったわ。


数日後、そいつの友達を名乗る類友から連絡があった。


「君のやったことは犯罪です。汚した服の弁償をしてください。」


「どこが犯罪なんだよ。弁償はしてやるから、振込先教えろ。」


「病気の人を放って勝手に帰ったからです。振込先は教えられません。直接渡しに来てください。」


「具体的に何の罪に問われるのか言ってみろ。危害を加えた相手には会いたくない。振込先教えてもらえなければ弁償はできない。」


「個人情報保護法により、振込先を教えることはできません。直接持ってきてください。でないと更に罪を重ねることになりますよ。」


「まずあいつは強制性交等罪の未遂を犯してる。それについてはどう考える?あと個人情報保護法ってここでは全く関係ねえから。それらしい法律用語出せばビビると思ってたら大間違いだぞ。こっちは賠償の意思はあるって言ってんだ。(らち)が明かねえから、本気で弁償してほしいなら弁護士挟め。」


「直接渡しに来ないなら訴訟を起こします。」


「おう、起こせ起こせ。どっちがおかしいのかはっきりする。まともな弁護士雇えよ。」


ここで返信は来なくなった。諦めたのだろうか。


エンターテインメントのご提供ありがとうございました。今後も語り継いでいきます。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ