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フリーター期① もう一回縒(よ)ってみる

ターンオーバー:細胞の入れ替わり。

取り敢えず適当にバイトを始めることにした。赤の他人に愛想良く振る舞える気が微塵(みじん)もしなかったので、接客業は避けた。


時給が良く、職場がそこそこ近いということで、梱包の仕事を選んだ。そこから梱包士(ラッパー)を名乗るようになった。


なんの感情も湧かずに作業をこなした。給料は出会いのための遠征費に消えていった。


だらだらだらだら毎日が過ぎて行く。時々気が向いたら高校の教科書を読んで、新しい発見をしたりした。漫画を読むような感覚で、教科書を読み、ゲームをする感覚で問題を解いた。


夏になると佐原に誘われ免許合宿に行った。2週間は長かった。ご飯なしの自炊タイプを選んだ。毎日色々作った。母親譲りの機械音痴で悪戦苦闘したが、なんとか延長なく終えることができた。


「お前とじゃなかったら、2週間も耐えられなかったわ。」


なんて言われた。お前、ぼくのこと好きすぎだろ。


免許をとると親の車を借りてドライブに行ったりするようになった。深夜、変な男に捕まった愚痴や彼氏の惚気(のろけ)などを話しながら、新3(アラサー)だけの空間が外を走っている感覚だった。


新しい人と出会ったりもしながら1年が過ぎるころ、祐也を思い出した。色んな人と会ったけどまだ祐也が好きだ。会ってもいないのに気持ちが再燃してきた。もう良いかな、反省してるだろ。会ってあげようかな。


祐也に連絡をとった。新しい彼氏が出来ていた。また泣いた。取り敢えず会いに行った。


「やっぱりまだ好きだ。子供っぽい好奇心があるところとか、そういうところが好き。」


白百合を渡した。少し話して、彼氏持ちの家に泊まるわけにもいかず帰った。別れるのを待つか。


教科書を読んだり疑問を調べたりしている内に限界を感じ、やっぱり大学に行きたいと思うようになった。さて、そろそろ本腰入れるか。


フリーター2年目に突入した。4-8月までは勉強を頑張ったが、そこら辺で力尽きた。やっぱり地道な努力は向いてないや。模試の成績は現役のころとそんなに変わらなかった。1年で失った知識を取り戻したに過ぎなかった。


「彼氏と別れた。」


祐也から連絡がきた。よし。でもここで復縁したら、更に勉強しなくなるだろうな。


「大学受かったら、また付き合って。」


これで良いだろう。前半ほどではないが、ダラダラと勉強を続けた。そして(こら)え性のないぼくは10月頃に復縁した。祐也の家に泊まりに行くと、全く勉強しなかった。少し焦りはあったが、流れに身を任せようと思った。受かったところに行けば良いや。


だらだらと勉強しては、祐也の家に行くということをしていた。前付き合っていた頃と同じように、何回か喧嘩をした。前のときに比べて、ぼくの猜疑(さいぎ)心が追加されているので尚更だ。


「大学なんてどこも同じだろ。勉強する気があればどこでもできる。なんでわざわざ俺の家から遠いところを選ぶんだよ。俺のこと嫌いなのか?」


進路にケチをつけてくることもあった。実家から通える地元の大学を志望していたが、祐也はその距離に納得いっていないようだった。大学によってかかる金も学べることもそのレベルも違ぇんだよアホ!と言いたかったが言えなかった。そんなことを言ったら見捨てられると思ったからだ。取り敢えず妥協案として、学生になっても祐也の家に通うと言う条件で落ち着いていた。


出会い系アプリで知り合った人と連絡とっているのを見つけた。この男は何を考えているんだ。浮気性ってのは治らないもんなのかな。責めたら謝ってきた。友達だと。同じことをすることで溜飲が下がった。


喧嘩もあったけど、楽しかった。やっぱり祐也と居るのが今までの人の中で一番幸せだった。(あだ)なやつだったけど、少しずつ好きになって来てくれているのが分かった。


「お前と別れたら、俺、死ぬから。」


なんて冗談を言っていた。泣いてるのをいつも慰めてくれるし、死ぬとしたら精神が不安定なぼくの方だと思った。


祐也は事故の後遺症で顔等に残った(あと)を気にしていた。肌のターンオーバーを早める薬を塗ると言って外に出なくなり、代わりに買い物に行ったりした。そんなの全然気にならない程度だと思ってたしそう伝えていたのに、随分と気にしているようだった。大好きだった煙草も止めた。


それから体内時計が崩れたのか、眠れなくなることが度々あったらしく、処方された睡眠薬を飲むことがあった。どうせ暇なんだから、眠れるときだけ眠れば良いのに。

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