高校生⑦ 激しい心変り
久しぶりに好きな人ができた。相手は同い年だった。高校生には遠い距離に住んでいたので、会いたかったが中々会えなかった。しかし、頻繁に電話をしていた。少し女の子みたいな顔立ちでめちゃくちゃ可愛かった。
「好きになりそうだから連絡取るの止めたい。」
過去の恋愛で痛手を負い、恋人を作るのが怖いようだった。出会い系の掲示板で知り合ったのに、なんだよ。
「時間置いて考えて。ぼくは好意的に見てる。」
強がってそれだけを返した。結果は考え直して連絡を取ることを選んでくれた。しかし、ぼくは先の一言で負の基質を発動した。この人も離れるんじゃないか。何とか繋ぎ止めなきゃ。そう思った。
電話をする約束をした時間に電話ができないと鬼のように電話をかけ、メールで自傷を仄めかした。母子家庭で小さい兄弟のためにバイトをして生活費を稼いでる相手に、微温湯で生きている暇な人間が精神的な負担を強いた。
「何で連絡くれないの?」
「ごめん。バイトで遅くなって。」
段々と折角関わる頻度が減っていき、それに応じて不安は増していった。もう相手の負担にしかなっていなかった。また電話をかけまくった。
「もう関わるの止めよう。俺、そういうの嫌いだから。」
「何で?ぼくは好きだよ。連絡取れなくなったら死ぬ。」
何がなんでも関わりを断ちたくなかった。
「もう関わりたくない。」
流石のぼくでも、もうダメだと分かった。迷惑にしかなってない。
「分かった。ごめん。ぼくから切るから、それまで待って。」
「死ぬなよ。明日ニュースとかで見るのは嫌だ。」
「ありがとう。」
電話を切ってから体を切りつけて泣くしかできなかった。いつも通り友達に泣きながら話して少し落ち着いた。自傷行為は嫌われるのだと理解して、毎日10回以上切りつけていたのを止めた。どうしても気持ちが落ち着かないときだけにした。
ネットストーカーでSNSアカウントを見つけ、バイト先まで突き止めたが、残っていた良心で何もしなかった。
飼っていたラブラドールにほっぺをすりすりした。
そんなころ、先輩から連絡が来た。先輩は3年生だ。受験期で勉強を教えてほしいらしい。一応ぼくが校内で1桁の順位をキープしていることを知っていたようだ。
先輩は勉強ができなかった。1つ下のぼくに劣るほど。振られた寂しさもあって、教えてやるのも吝かではないと思った。いつどこで勉強を教えてほしいのか聞いて、会う約束をした。
「勉強教えてくれたら、えっちなお願い聞いてあげるよ。」
うわ、きもっ。その台詞が気持ち悪くて会うのを止めた。殆愛想が尽きた。もう二度と連絡して来んなよ。
佐原から連絡が来た。
「この前は悪かった。友達に戻りたい。」
よく遊んでいた公園に呼び出された。まだ殴り足りなくて呼び出してるのか、本当に仲直りしたいのかは分からなかったが、とりあえず行ってみた。
「この前は悪かった。やっぱお前と友達で居たい。」
何なんだこいつは。どういう心境の変化だ。というか中学のころから、何で正反対の性格のぼくにそんなに執着してるんだ。
「分かった。」
どうでも良かったが、面倒だったので了承した。結局関わらなかったのは3ヶ月くらいかな。
そんなこんなでまた佐原達と遊ぶようになったが、頻度がガクっと減った。多分ぼくがまだ気にしてると思って誘い難かったんだろう。こっちは案外ケロッとしていた。ぼくも悪いところがあったしね。
新3と佐原達グループと柳田と他数名でぼくの部屋に集まった。みんな同じ中学で知り合いだ。何で集まったんだっけ。因みに新4から3になったのは、上田が抜けたからだ。こっちは別に仲違いとかではなく、高校の友達と仲良くしてることが多く、単純に集まりに来なくなったからだ。それでも数ヶ月に1回くらいは来てたし、そのときは普通に仲良くしていた。
先の男の話をして泣いていた。初めて佐原達にぼくのセクシャリティーを明かした。
「ぎゅーして。」
寂しくて人肌が恋しくなった。泣きながら佐原に抱きついた。佐原ら拒否せず宥めてくれた。あー、ぼくが女だったら、佐原も男が好きだったら、こいつに惚れたかもしれないな。まあ異性愛者の男に惚れることはないけど。それにしても他人への評価が目まぐるしく変わるな。
次に高校の教師を好きになった。
 




