高校生⑥ 合従連衡
不可触民:カースト制度で最も低い位の人。触れてはいけないと考えられている。
2年生になった。成績順のクラスなのでほぼ入れ替わりはなかった。ぼくの不可触民的扱いを知っている人ばかりなので楽だ。
良く遊んでいた佐原達のグループと仲違いした。周りの人の人間関係をあまり良く知らなかったので、佐原が昔付き合っていた相手を知られたくない人に伝えてしまったのが原因らしい。初めは何で怒っているのか分からなかった。それくらい他人の人間関係に疎かった。
関わらなくなって暫くして、佐原から呼び出された。訳も説明せずに勝手にキレて、リーダー格の立場を利用して周りの人間を駒のように扱い、追いやろうとした挙句、尊大な態度でメールをしてきた。何がいけなかったのか説明してくれたら、躊躇いもなく謝ることができたのに。
面倒だ。暴力沙汰は嫌い。もう関わるのが面倒になったので、不遜なメールに煽るような返信をした。更に怒っていたが無視した。
数日後、そのグループのお調子者の西岡から呼び出された。普通に遊びに誘うような感じを出てきたが、このタイミングでそんな訳がなかろう。こんなことが続くのも面倒なので、暴力沙汰覚悟で絶縁を言い渡しに行くことにした。
「俺が何で怒ってるか分かる?」
人伝に聞いた理由を答えて、一応謝った。だが、先にそれを説明するべきで、いきなり周りを巻き込んで追いやろうとしたことを責めた。
結局殴られた。やり返さなかった。そんな動物的な方法を取ることへの軽蔑と、もう関わらないでほしかったから気が済むまで殴らせようと思った。落ち込んでいた慰めてくれたり、一緒に楽しいことをしたり、思うところがなかった訳ではない。だが、負の基質の発現から極端な思考になっていたので、面倒だから切り捨てることにした。二極的な思考は細かいことを考えずに済むから楽だったのだ。
周りが止めに入った。止めに入るくらいなら最初からこんな所に連れてくるなと思った。血だらけの顔で家に帰り、庭にある水道で血を洗って家に入った。
他に友達は居る。清々した。
中3のグループの女子の2人の伊藤と柳田は、卒業と共に関わらなくなった。柳田が彼氏ばっかりになって遊びに誘われても応じなくなったからだ。だが段々とぼくと関わるようになってきた。多分今更伊藤と関わる勇気がなかったのだろう。その彼氏と別れると、頻繁に2人で遊ぶようになった。毎回応じるのは面倒だったが、頼られるとあまり断れない性分だったのと、佐原グループと関わらなくなって暇だったため応じていた。
お互いの家を行き来して泊まったりしていたが男女の仲にはならなかった。本当にお互いを暇つぶしの相手と見てたんだと思う。更にそこに小学校が同じだった長田が加わった。時々長田を交えて3人で遊んだ。
開いた穴を埋める相手を探して行為をして、また穴が開いてと言うのを繰り返していた。この3人の共通点は貞操観念が低いこと。少し病気が怖くなってきた。誰が発案したのか、3人で市の保健所で検査をすることにした。
「他の病気なら笑えるけど、エイズだけは笑えないよね。誰ががなってたらみんなで助け合おう。」
柳田がそんなことを言った。
保健所は離れていたので、3人でチャリを漕いで田舎道を走った。それで検査をした。結果は後日だったので、また同じように帰った。高2の初夏、夕陽に照らされて3人で話しながらチャリを漕いだ。青春だった。
性病三姉妹の誕生である。すぐグループを作りたがる。ぼくは男なのに三姉妹、不服だったがまあいいや。下品な通り名を決めて、お互いを呼びあった。
 




