シアの話
ー以下レッシュ視点―
「俺の家に連れてくよ。」
「お家の人に連絡しなきゃいけないです。でも僕はシア君の家の人の魔紋を知らないです。レッシュ君は連絡の魔法が使えないです。どうします?」
「俺の家に行けばエソペールが連絡できる。まあ、シアのつけてるペンダントから魔紋が分かるから、ノニャンでもできるぞ。」
「エソペールさんって、シア君の誕生日会やったときに迎えてくれた人ですよね?エソペールさんに任せるです。大人の人からの連絡の方がお家の人も安心するです。」
「分かった。あと、ノニャンも一緒に来てほしい。ご飯食べながら少し話そう。シアのこと。」
「今日ですか?もう遅くなってきましたし、また後でも……」
記憶が薄れる前にこのぐちゃぐちゃの思考を整理したい。
「早めに話しておきたいんだ。勿論」ノニャンが良ければだけど。」
「分かったです。シア君みたいなことする気じゃないです?」
「ノニャンもそんな冗談言うんだな。」
自分の口角が少し上がるのを感じる。
「レッシュ君疲れてそうなので。」
ノニャンが解散しようとしたのは俺の体調を考えてのことだったのか。確かに俺一人だったら頭が過熱しそうだったな。
「ありがとう。」
家に着いてシアを背負う。
「ひとりで帰れそうか?」
「あうわう!」
何を言っているのかは分からないが、多分大丈夫なんだろう。
中に入りシアを寝かせてエソペールに連絡を頼んだ。夕飯を準備してもらい、食卓に着く。
「わー、美味しそうなものばかりです!ご馳走になっちゃって悪いです。」
「お腹空いてるだろ?遠慮しないで。」
先ずは腹拵えだ。話をせずに黙々と食べ進め、一段落したところで話を切り出す。
「ノニャンはシアのこと好きか?」
先ずは今回の出来事をノニャンが許容できるかを訊ねる。
「勿論です。それは変わりないです。いつもふざけてばかりいますけど、気遣いというか優しさが見えるです。」
「良かった。」
ノニャンからも協力を得られそうだ。
「でも、今回は少しやり過ぎだったと思うです。どうしてあそこまでやってしまったか分からないです。普段のシア君から想像できないです。僕は見てることしかできませんでした。ごめんなさいです。」
「ノニャンは何も悪くないから謝らないで。一緒に見てた人が居るってだけで心強いから。」
「どういうことです?」
「エガヴュアスの更生もそうだけど、シアにもああいうところ変えてもらいたいなって思って。ノニャンにも協力してほしいんだ。」
「……。あれは悪いことだったですか?」
「ノニャンはそう思わないのか?」
「良く分からないです。でも、あんな風にならないでくれたら嬉しいです。」
「今はそれで良いと思うんだ。何が正しいかなんてどうでも良い。正義の押し付けかもしれないけれど、まるで義務感に駆られているように他人を追い詰めるシアを見ていたくない。」
シアはとても奇妙だった。まるで自分の意思を無視しているようで、そうしなきゃいけないからしているように見えて……叙述を超える。
「シア君どうしちゃったです……。」
「実はさ、ああいうシアを見るの、初めてじゃないんだ。」
「そうなんです!?前はどんなだったです?」
「恥ずかしい話なんだけどさ、俺がクナルフに越してきたばかりのころ、シアと初めて会って……」
初めて会ったときに何があったかを話した。
「そんなことがあったですか。確かに昼間にチラッと言ってましたね。レッシュ君も子供だったですね。」
「今も子供だけどね。今日のを見て改めて分かったことは、シアは敵と見做した相手を徹底的にやり込めるきらいがあるってことだ。倫理観を欠いた相手には、法律を無視してでも倫理を外れても徹底的にやらないと気が済まないようだ。」
「『理不尽がぼくを殺した』って言ってたですね。何か嫌なことをされたことがあるですかね。何なんでしょう。家族は好きみたいですし。」
「シアの両親には会ったことあるけど、問題があるようには見えなかったし、シアも両親が原因だと言うことを否定した。何か原因があったような口振りだったけど、俺たちには話したくないみたいだったな。」
「シア君が話したくなるまで訊かないようにするです。話したくないことは誰にでもあるですしね。」
そういえば初めて会ったときのこと、ノニャンに一部省いて伝えてしまったな……。
「特別に何かしてほしいって訳じゃないんだ。今まで通りで良い。ただ、少しシアのことを気にかけてあげてほしい。何か辛いことがあったりしないかとか。」
「そんなこと、今までもしてたです。……そうですね、今までよりももう少し注意深く見てみるです。あと、シア君にこのことは言わない方が良いです。きっと嫌がります。」
「そうだな。」
時間も時間だしそろそろ終わりにするか。
「ご馳走様でした。また3人で部活やりに行くです。」
言うか迷ったが、俺がシアをどう思ってるのかノニャンには伝えておこう。
「俺さ、シアのこと尊敬してるんだ。シアは言われるの嫌がってたけど、やっぱり聡明だし俺の知らないことを沢山知ってる。ああいう風になりたいって思う。でも今回みたいなシアの考え方には賛同できないし、きっとあの考え方で、する必要のない苦労を重ねることになると思う。俺はどうにかそれを回避したい。」
「僕も尊敬してますし目標にもしてます。勿論ああいう考え方は少し悲しいとは思いますけど……、他人の考え方を変えようとするっていうのが良いことなのか、腑に落ちないところがあるです。」
「ノニャンの言い分も分かる。だから、俺がやろうとしてることが傲慢だということを諒解した上でやっていく必要があるんだ。今すぐ強制的に変えようって訳じゃないし、何ならノニャンには少し気にかけてもらうだけでも良い。」
「シア君に随分惚れ込んでるです。」
ノニャンが得意顔で揶揄う。
「まあ……そうかもな。俺は学校に入ってからあんまり友達が出来なかったんだ。さっき話したように、学校に入ってから俺と仲良くしてくれるようになった。シアは自然に采配してくれて、俺もクラスメイトに畏怖されすぎることなく過ごせるようになった。感謝してるしこれからも友達で居たいし、俺にできることなら力になってやりたい。」
「シア君は男の子ですよ?王族なのに子供出来ないと跡継ぎがいなくなるです。まさか男妾にするですか?シア君が可哀想です!」
「ばか!ち、違う!そんなんじゃない!」
「耳赤くなってるですよー。」
「ノニャンもシアに似てきたんじゃないか!?」
「へへー。じゃあそろそろ帰るです。ご馳走様でした。元気出してくださいです。」
「ありがとう。じゃあな、気を付けて。」
お風呂を済ませてシアの体を拭く。多分シアは他の人に見られるのが好きじゃないから俺がやる。こんな小さいのにどうしてあんなに魔法が上手いのだろう。掌を合わせてみると、俺よりも2回りほど小さい。
……。
窓を開けて夕涼みに打たれる。ベッドにシアの寝顔がある。明日には起きるだろう。




