高校生⑤ 化学は綺麗
何故お前らが泣くのだ。単に吃驚しただけらしい。他人に言うのは初めてなので緊張したが、そんなことで嫌うような奴らじゃないことは分かっていた。それから女子高生らしく、根掘り葉掘り聞いてきた。心の内を吐露できて少し楽になった。
また心にできた穴を埋めるために新しい人を探し始めた。嫌なことをする人が多くいた。気が弱かったので、断れなくて泣いてしまうこともあった。断るとキレる頭のおかしい奴もいた。
今ならぶん殴れるのに。
学校では誰とも関わりたくなくて、敢えて傷が見えるようにしていた。不可触民のように扱ってほしかったし、誰も世間話をしてくることはなかった。孤立はしていたが、必要なら誰かとペアを組んで話し合ったり、体育の運動をしたりはした。虐めなどは全くなかった。まあこんな奴を虐めるのも怖いだろうが。
高校に入って、ぼくの好きだったものは理科の中でも化学だと言うことに気付いた。目視できないミクロの理論を考えるのが面白かった。化学の教科書には綺麗なものの写真が沢山載っていたのも理由だ。反応によって色が変わったり、形が変わったり、面白かった。魔法みたいだ。
言葉の造りにも興味を持った。本格的に文法を学ぶことで、中学生の頃は苦手だった英語が飛躍的に上達した。学年一位の成績をほぼ毎回とった。古典にも興味を持った。単純に語学が好きなんだと思っていた。
他の科目も基本的に好きだったが、社会科系は全て苦手だった。年号も人の名前も地名も何もかも興味が湧かなくて覚えられなかった。好きなものしか頭に入れるつもりはないので、苦手なまま適当に切り抜けた。
そういえば中学の頃と違ってゲームをあまりしなくなったな。単純に友達と話している方が楽しかったんだと思う。