表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
145/166

新メンバー

天蓋(てんがい)を仰ぎ現状を諒解(りょうかい)した。顔を横に向けるとレッシュが椅子に座って本を読んでいた。


冷や汗をかいたはずなのに、皮膚が涼しい。消毒液として用いられたであろう加爾基(カルキ)のような臭いもする。体を拭いてくれたのだろうか。というか、服も肌触りの良いものに変わっている。


「ぼくが寝てる間に変なことしてないでしょうね。」


「起きたか。元気そうだな。まだ具合悪いとこあるか?」


(へこ)んだ顔でレッシュはそう言う。なんだよ、折角(なご)ませようとしたのに。レッシュなりに責任を感じているのだろうか。


「寝て回復したから大丈夫だよ。お腹空いたから帰る。連れてきてくれてありがとう。」


「水臭いこと言うな。約束のお礼だ。食べていけよ。」


「冗談だって言ったじゃん。」


「まあそれを抜きにしても、治してくれたお礼だ。」


体が怠い。


「分かった。ありがと。その前に疲れたからマッサージして。」


「誰か呼んでやろうか?」


「レッシュで良いよ。他の人呼ぶと申し訳ないし。」


「一国の王子に何たる不敬。普通は俺にやらせる方が申し訳ないんだぞ。」


「あー、うるさいうるさい。じゃあ良いよ。」


膨れっ面をレッシュに向ける。


(うつぶ)せになれ。」


「最初からそうすれば良いのに。とりあえず脚からやって。」


「しょうがないな……。」


ここに来てからお酒を飲んだことはないけれど、飲みすぎて()めてからの筋肉痛のような気怠さがある。


「んあぁっ、レッシュ、そんなにぐりぐりしちゃいやぁ。」


「気持ち悪いな、変な声出すなよ。止めるぞ。」


「いやぁ、止めないで。」


体を翻してレッシュと対面し、目を細めて少し口を開けた。これは前にやっていた誘うときの表情。


眉間に(しわ)を寄せたレッシュはぼくに手を伸ばし……


「いーひっひゃひゃ!ごめん!ふざけないから!止めて!体力なくなる!」


此奴(こいつ)はぼくの弱点を知っている。侮れない。


「イレシュノン様から伺いました。この度は誠にありがとうございます。」


魔法で母さんにご飯をご馳走になると伝えて、また豪華な食事をお腹に詰め込んだ。毎日来ても食べさせてくれそうだけど、流石にそこまで図々しくはできない。


「いえ、友を助けるのは当然のことですので。」


キリッとした表情を作り格好をつける。


「猫かぶり。」


「レッシュもだよ。」


お腹が満たされて眠くなってきた。


「泊まってっても良いぞ。」


「いや、明日も学校だし帰るよ。ご馳走様でした。ありがとうね。」


「分かった。じゃあな、気を付けろよ。」


「明日はレッシュの特訓だからね。確り休めよ、若造。」


いつも通りの朝。


「ナック、おはっよー!」


助走をつけてノナックにダイブする。


「うっ……おはよう。そろそろシアは落ち着いた方が良いよ。怪我したらどうするの。」


「そう言えば昨日レッシュが怪我してさー、ぼくが治してあげたんだ。」


ことのあらましをノナックに話した。


「気絶したの?大丈夫だった?」


「へーきへーき。何回かしたことあるけどなんともないもん。」


「あんまり無茶しないでね。」


「ご褒美ちょうだい。」


ノナックの胸に軽く頭突きをすると、意図を理解して頭を()でてくれた。この時間が1番幸せだ。


「シアは治癒魔法も使えるのね。それも討伐部の部長が治せないほどの傷を治すなんて……それ以上近づいたら怒るわよ。」


偶にはエリーにも撫でてもらおうと頭を向けて近づいたら怒られた。


「ナックぅ、エリーが怖い。」


「シアが悪い。」


慰めてはくれないようだ。


ということで、今日はノニャンとレッシュとぼくの3人で鬼退治に来ました。


(しばら)くはレッシュの特訓がメインね。ぼくたち2人は大分慣れてきたから。レッシュが少し慣れたら、あと1人くらいこの固定グループに入れたい。」


「王子様はどれくらい戦えるですか?5年生で入ってきたってことはシア君と同じくらい強いですよね?」


ノニャンとレッシュはぼくの8歳の誕生日のときに少し顔を合わせたくらいで、部活の紹介のときも昨日の見学のときも口を利いていない。


これからは確りとコミュニケーションをとって円滑な連携を期待したい。


「レッシュで良いよ。」


「おい、レッシュ。ノニーは先輩なんだぞ。なんだその口調は。」


まあタメ口を利きたくなる気持ちも分かる。レッシュと比べると年下の女の子に見える。


「シアだって砕けた口調じゃないか。」


「ぼくは同期なので。」


「はぁ……、僕はシアよりは強くはないよ。7歳で試験に受かって2年飛び級してる。シアより勝手が利かないけと、魔法で物を動かせる。」


「そう、つまりぼくの下位互換ってわけ。」


「そんな傲慢(ごうまん)だといつか力に溺れるぞ。」


「レッシュだってぼくに最初に会ったとき相当酷かったじゃん。ばーか。」


そう言って目をひん剥いて口を大きく開けて舌を出した。


「ノニャン2人でやろう。」


「それが良さそうです。」


そして変顔をしたぼくが触れられることなく独り取り残される。


「おいゴラァ!待て!置いてくんじゃねえ!」


「ねえなんで無視するの?意地悪しちゃいけないんだよ!」


「分かった!ぼくが悪かったです!ごめんなさい!仲間に入れてください!」


"アレグロ(快速に)"


魔法で加速をつけてレッシュに飛びつくと、レッシュはバランスを崩したが倒れはしなかった。


「……っ、危ないだろ。ほら、行くぞ。」

少しは2人も打ち解けたかな。


スィリュオを見つけた。先ずは此奴で練習してもらうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ