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高校生④ 先輩

【注意】軽微な性的描写があります。

バニラだったが、初めてした男の人に惚れた。それからも時々会ってそういうことをした。でもそれ以外の部分では、先輩は淡白だった。


意を決して想いを伝えようと、バレンタインに目星をつけた。露骨なアピールのせいでもう気付いていただろうが。何種類かチョコレートのお菓子を作った。そういえば、中学生のときはお返しにレアチーズタルト作ったな、なんて思い出しながら。


会う約束をしていた日は雨が降った。先輩はいつも最寄り駅まで迎えに来てくれて、ぼくを自転車の後ろに乗せて家まで行った。その時間が好きだった。


「雨が降ってるからまた違うときにしよ。」


「折角お菓子作ったから、受け取るだけ受け取ってよ。」


「ごめん。違う日にしよ。」


「なんで。じゃあ歩いて1人で行くから。」


「ごめん。」


なんだよ。ぼくの気持ちに肯定的に応えろとは言わないけど、先輩のために作ったんだから受け取るくらいの義理を果たしてくれたって良いじゃんか。


また泣き(さけ)んで、体を傷付けた。あげる予定だったお菓子を壁に投げつけた。落ち着いてきて、お菓子を食べた。食べ物をあまり受け付けなくなっていた体が拒絶を示し、戻してしまった。


飼っていた犬を抱き締めに行った。温かい。


後日また約束をとりつけ、先輩に会いに行くことにした。愚直に甲斐甲斐(かいがい)しく、健気にまたお菓子を作った。ああ、ぼくは何て可哀想なんだろう。


お菓子を受け取った先輩は、「美味しい。」と言って食べてくれた。いつも通りのことをして帰された。急な虚無感に(さいな)まれ、もうこいつはいいや、と思った。勿論(もちろん)お返しなんてなかった。


先輩を好きになった頃、いつものように新4でぼくの部屋に集まって駄弁(だべ)っていた。自分の性的志向をこのメンバーに告知しようとしていた。


好きな人について相談する相手が欲しかったのと、ほんのちょっとの(てら)いたい気持ちがあった。


「多分セクシャルマイノリティだわ。男を好きになった。」


上田と臼井は泣いていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 読みやすいですけど、バニラの注釈も入れてもらえると助かります。
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