高校生③ 狂乱
【注意】軽微な性的描写があります。
刹那主義:そのときさえ良ければ良いという考え方。
消極的虚無主義:どうせ死ぬんだから何をしても無駄だという考え方。【注意】軽微な性的描写があります。
ぼくと別れて新しい男を作った癖にと思っていたが、
「初めては颯が良い。」
の一言で、コロっと落ちた。
でも勿論そんな感情で上手くいく訳がなく、スポンジは半充血で終わった。終わってからが虚しかった。
「身体の関係だけ続けたい。」
何を言っているんだと思った。好きだった頃とは別人のように感じた。ここまで虚仮にされても、恋愛感情は消えなかった。この感情ごと消えて無くなりたい気持ちが強くなった。
自分をボロボロにしたくなって、ご飯を食べるのを止めた。体重が1ヶ月で15kgくらい落ちた。階段を歩くとズボンが脱げるほどになった。
刃物で自分を傷付けるようになった。泣きながら錯乱して、何度も切りつけた。名前を彫ったり、恨み言を彫ったりした。出血しているのを見ると少し落ち着いた。理由が気になって調べてみると、自傷行為で精神を安定させるホルモンが出るらしい。
滴った血液をコップに溜めて、それをインクに筆で日記を書いた。未練、憎しみを込めて書き殴った。血が乾いて書けなくなると、また切りつけて、書いて……を繰り返した。
完全に被害者ぶって、共通の知人に吹聴することで溜飲を下げた。当たり前だが、こんなことをしていれば相手の耳に入る。仲は険悪になり会うこともなくなった。それでも好きだった。
忘れるために他の女の子と付き合ったりもしたが、何も変わらず直ぐに別れた。ぼくもぼくで酷い人間だ。
そんなこんなで気を紛らわせながら生き続けた。
時間薬とは良く言ったもので、1年弱で段々と固執しなくなった。それでも1年はかかってる。友達が居たから何とか持ち堪えた。初恋は長引くものだ。
しかし、発現した負の基質は表に出たままだ。刹那主義と消極的な虚無主義に染まった。
吹聴していた噂は相手の彼氏の耳にも入ったらしい。SNSから直接連絡が来て、電話をすることになった。
「奪ったみたいでごめん。」
罵倒されると思っていたが、謝られた。事実確認がしたかったらしい。美春は高校に入ってから見た目が変わってモテるようになり、少し奔放になっていた。彼氏はそれに辟易したようだ。2人が別れたからと言って、別にスッキリはしなかった。美春から電話が来て罵倒された。
1年生の終わり頃、募っていた男の人への感情を昇華し始めた。手始めにネットの掲示板を覗いてみた。募集している歳も住んでいるところも近い人に白羽の矢を立て、連絡をとってみた。どこの高校か訊かれたので、高校名を答えた。
「え?マジ?俺も同じ。」
制服の写真が送られてきた。同じ高校の先輩だった。マンモス校なので相手を認知してはいなかったが、会ってみたかった。
先輩に会う約束をとりつけ、電車で3駅離れた先輩の家に行った。今思うとそんな格好良い見た目でもなかったが、173cmと平均的な身長のぼくより10cm以上背が高く、大人びて見えた。
初めて男の人とした。




