表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
124/166

基礎魔法演習Ⅱ①

今日は魔法の演習だ。このクラスのカリキュラムでは、週の3日目と7日目、つまり休みの前日に魔法を使う授業を行う。休日前にこの授業を設けることで、心置きなく魔力を使わせて魔力容量を上げるのが目的だそうだ。


「今日の授業は魔法を使うので危険が伴います。2人1組になって木の人形への攻撃と防御を行ってください。ペアは適宜変えて、沢山の人と練習しましょう。人形が使いにくくなった場合は替えがあるので交換します。人や他の物への攻撃は厳禁です。万が一怪我をした場合は速やかに申し出てください。」


クラスのみんなで演習場へ移動する。昨日魔獣討伐してきたから骨がないな。まあ、周りの人の魔法の具合を見るのには丁度良いか。


「シア、一緒にやろー。」


先ずはエミナが相手か。


「良いよ。」


「シアの魔法気になってたんだー。先に攻撃するから防御してね。」


1つの魔粒子の周りに6つの魔粒子が接するように並べ、その上の空隙に3つの魔粒子を三角形に置く。そ魔粒子の半径をrにすると……、六角中の体積は24√2r^3、魔粒子の体積は(4/3)πr^3だな。充填率は……大体74%か。空間群は……。


「シアまだー?」


「あとちょっと待って!」


魔粒子を並べて図を描いて空間群を求める。


"[単位格子の粒子数2 配位数12 充填率74% 空間群6P_3 mmc 六方最密充填構造]"


「なにその詠唱。」


"ノワトセール (防御) "


攻撃に備えた先の構造を繰り返した魔粒子の六角柱で人形を覆う。


「なっ……中が見えない?」


魔粒子は水を通り抜けないようにもできるほど小さいのにもかかわらず、それが透明なことに疑問を持った。[普通に秩序を持って並んだならば、水を通さないほどの隙間を可視光が抜けるはずがないからだ。水分子は(オングストローム)オーダーで、可視光の波長は数百nm、つまり単純に1000倍程度だ。]


[波は波長より小さい物を回り込むことができる。物に当たった波は、その両端から素元波を発生させ、それらが干渉し合うことで新たな波を形成し、実際に通り抜けているわけではないが物を通り抜けたように見える。これを波の回折と言う。災害時にラジオ波を利用することが推奨されるのは、波長が長く遠くにまで届きやすいからだ。逆に波長より大きい物に当たると、発生した素元波は干渉し合って元と同じ波を形成ことができずに、そこだけが抜け落ちる。可視光で言うと影だ。1つの空隙(くうげき)があるものでも同じように、波長の長い波は何もなかったかのように振る舞い、短い波は隙間(すきま)からしか出られないように見える。]


[しかし、空隙が多くあるものの場合は逆のことが起こっているように見える。そう見えるだけで、実際には同じことが起こっている。例えば電子レンジの扉の網。マイクロ波の波長は網の太さよりも大きいはずなのに、それを通り抜けることができない。波の全ての位相が通り抜けられないと回折が起こらないからだ。しかし電子レンジの中は見える。波長の短い可視光は、網の隙間からだけ抜け出すことができるのだ。]


魔粒子は固体?液体?気体?簡単に物質の三態には当て()められない。だから魔粒子の集合体は[非晶質、言い換えればアモルファス]を成していると仮定した。硝子(がらす)(あめ)などのように所謂(いわゆる)ガラス状態をとっているのだろうと思った。そうでなければ魔粒子より大きいはずの波長を持つ光が抜け出せる、つまり透明であるはずがないからだ。というか、今まで流体として扱っていたからそうなっていたという方が正しいのか。


前に魔粒子に結晶構造をとらせることで、光を遮蔽することに成功していた。位置と配向の秩序を持った結晶は光を乱反射して不透明になる。これで膜を形成することにより、主に赤外線が伝達する輻射(ふくしゃ)熱、可視光、更には物理的衝撃を防ぐことができる。エネルギーの高いγ線などの電磁波も多分遮蔽できる……はず。実証はしていないが。


「はい、大丈夫だよ。攻撃してみて。」


"ユーフ(火)"


エミナは1番単純な攻撃魔法で人形を燃やそうとしたが、全く歯が立たない。ぼくは防御を解除して中の人形を見せる。


「シアの防御はずるい。」


「ずるいって何?エミナが強い攻撃をすれば破れるのに。」


「そんなのできないよ!やっぱり飛び級しただけあるね……。」


この防御の弱点は直接触られること。というかどの防御もそうだけれど、魔力を持つものに直接触れられたら干渉して消え失せる。そして最大の弱点は、自分にかけた場合に外が見えないことだ。何とか改良したいが、可視光だけを通さないなんて無理だ。


「じゃあ次はぼくが攻撃する番だね。炎の魔法でいくよー!」


「よーし!来い!」


"ノワトセトール (防御) "


炎と言ったから水の膜で覆うのね。なんて安易な発想。


"ノワトセトルピトナ (反防御)"


障壁に穴を開けて魔粒子を注ぎ込み、内側で膜を形成して一気に膨らませ、エミナの防御と対消滅させる。


「そんなのあり!?」


「へへーん。」


"レレッカ セリュセロン セレック (分子よ加速せよ) "


魔力を人形に当てて分子の振動を加速するイメージをする。


"ノワトスュブモック (燃焼)"


丸焦げの人形の出来上がり。


「こりゃあたしじゃ勝てないわ。」


「はっはっはっ。精進し給え!」


「むかつくーー!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ