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基礎化学実験Ⅰ

父さんの花火もレッシュのも単色の炎だ。味気ない。


「花火ってどうやって燃やしてるの?」


「俺はそこら辺にある燃えるものを押し固めて空に持っていって燃やす感じだ。」


だからか。爆発音がない。しかも普通に紙が燃えたような色だけ。まあ今のところ音は要らないか。周りの人もびっくりするし。よし。


「魔法じゃない花火みたいな、色んな色の炎が出るようにしようよ。」


この世界の花火には色がついている。


「できるのか?俺はやり方が分からない。」


「ぼくができないわけないでしょ。」


一旦戻ってキッチンに行く。料理人の人が仕込みをしていたので、塩を少しもらい、卵の殻を生ゴミから回収する。


「そんなもの持って何すんだよ。」


「後でわかるよ。銅ない?ちょっとで良いから。」


「そんな直ぐに用意できないよ……。」


「こちらでよろしければありますよ。」


料理人の人に折れた"エトゥーガ"をもらった。料理を刺して食べるときに使う串だ。


「良いんですか?」


「はい。折れたものを溜めて金物屋に売りに行くのですが、1本くらいは問題ないので。」


「ありがとうございます!」


「そんなんで何すんだ?」


「良いから良いから。」


[まず全ての金属を水溶性の(えん)にする必要がある。(しお)は塩化ナトリウムだからこのままで良い。卵の殻の炭酸カルシウムと銅を強い酸で溶かさなければいけないな。]


硝酸か硫酸が欲しい。硫黄を集めるのは面倒なので手軽に集められる窒素で硝酸を作ることにする。


因みに頑張れば空気から直ぐに硝酸は作れる。なんなら、魔法は想像できることは何でもできる。しかし、直接空気から作ろうとすると魔力の変換効率が頗る悪い。ぼくの今の魔力量だと、硝酸1gを生成すれは気絶するだろう。


魔法でものを動かせない人も、正確にはそれが不可能なわけではない。イメージの違いか何なのか分からないが、そういう人たちは動かす魔法につかう魔力の変換効率がかなり低いのだ。


「また出かけられるのですか?本日は遅いので、また明日にしたらどうでしょう。」


外に出ようとしたぼくたちに、エソペールさんが声をかける。えー、これからなのに。まあいっか。お風呂入ったから汚れたくないし、明日は休みだし。


「分かりました。」


「シア、こっち。」


客室に案内された。柔らかそうな大きいベッド。


「ぼく、レッシュと一緒に寝たいな。」


態とらしい上目遣いでぶりっ子をする。


「あっ、えっ?な……え?あの、いいけど……。」


「冗談だよ。」


此奴(こいつ)揶揄(からか)甲斐(がい)があるな。



「どこかに木の枝落ちてないかなー。レッシュ!ほーら、探してこい!」


次の日、ぼくたちはまた外に出た。


「動物扱いするな!」


枯れ枝が欲しいので探し回っていると、丁度良さそうなものを見つけた。


「さあ、化学実験の始まりだよー!」


「本当に何を考えてるんだ。」


枝を魔粒子の膜で密閉し、少し膨らませて減圧する。少し効率が悪いけれど、魔力で直接木を構成する分子にエネルギーを与える。


"熱振動"


「前にも見たけど、シアの詠唱は何て言ってるんだ?」


「お母さんの国の言葉だよ。ノパージュの。」


枝が赤熱して気体を出し始めた。圧力を保つために魔粒子膜をどんどんと膨らませていく。


「これくらいかな。」


「炭?」


「うん!」


「家にあったのに。」


「何で先に教えてくれないの!?ほんと段取り悪い!」


「お前が先に何も言わないからだろーー!!」


「あー怖い怖い。最近の若者はすぐ怒るから嫌だね。」


「それで、何したんだよ。」


「空気中で木を燃やすと二酸化炭素とかが出るよね?それは炭素と酸素がくっついたもの。ぼくは空気を遮断して熱をかけたの。そうすると、木を構成している酸素と、炭素とか窒素とか硫黄とかがくっついて気体になって出てくる。木の中の酸素が枯渇すると、いっぱいある炭素が残るってこと。」


「ちょっと難しいけど何となく分かった。」


「後で学校で習うよ、きっと。」


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