表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
116/166

一般的な魔法のイメージ

ご飯を食べ終わってレッシュの部屋に来た。本だの玩具だのが棚に置いてある。


「何か気になるものある?」


「うーん、特に。本は図書館に行けばあるしね。それよりも聞きたいことがある。お話しよ。」


ぼくの魔法発動時のイメージは前の知識に基づいている。父さんは原理の詳細なイメージをしていないが、母さんはそこそこ原理が詳らかで、所々ぼくの知識に近いイメージを持っている。


この差は何だろう。単なる理解力の差?同じ学校を出たと言っても学力に差がつくのは分かる。それでも父さんも討伐隊だ。平均よりは学力が高いはず。おかしい。


前に双頭の黒豹(くろひょう)を倒したときの爆発は、原理を聞いてみるとプラズマだった。プラズマを扱うのは至難の業だ。不安定すぎて直ぐに失活する。図書館の自然科学に関する本を読んでも、どこにも書いていなかった。しかも父さんもよく分からないと言うので、少なくとも学校で習うものではなさそうだ。


というか、母さんは学校以外でも勉強をしたと言っていた。しかし、他からはそんな話は聞いたことがない。母さんの知識がどこから来たのか分からない。


何故母さんはぼくに出処(でどころ)を話さないのだろう。父さんも知らないようだ。知らない振りをしている可能性もあるが。


母さんはぼくに何かを隠している。これはぼくが子供だからなのか、理由は分からない。


『ちゃんと考えられるようにならないと、そこにあるものが見えなかったり、違ったものに見えたりするわ。』


隠している癖に、知識はぼくに伝えるし、ぼくがその結論に辿り着くことを望んでいる。だからもう()くことは止めた。


それを知るには、第一歩として母さんと父さんのどちらが一般に近いのかを知る必要がある。多分父さんの方が普通。そして次に、母さんの一般との乖離(かいり)を知る必要がある。


「良いよ。何の話がしたいんだ?」


他に周りで魔法に長けているのはレッシュだ。王子だし英才教育もあって知識は豊富そう。子供だからそれなりだろうけれど。


「魔法のこと。魔法を使うときに他の人がどんなこと考えてるのかなって思って。質問タイム、いきまーす!どんな魔法か言うから、それを使うときに何を考えてるか教えてね。」


「どんとこい!」


「火の魔法。」


「酸素とくっついて熱くなる。」


「冷却の魔法。」


「冷たい風を当てて熱を奪う。」


その冷たい風はどうやって用意するんだよ。


「電気の魔法。」


「電気の粒を動かす。」


「閃光の魔法。」


「マグネシウムが燃える。」


…………


色々訊いてみたが、知識が浅い。子供っていうのもあるだろうが、父さんに少し劣るくらい。そして気付いたこと。ぼくは原理のイメージだけじゃなくて、途中過程もできるだけ細かく再現しようとしている。これは大きく有利だ。


「レッシュは魔法で物を動かせるよね。そのときはどんなイメージしてるの?」


「うーん、魔力で手を延長する感じかな。」


母さんは魔力を固める感じにして、それで動かすのだと言っていた。


「魔力の粒みたいなのを手の形にするの?」


「魔力の粒?何だそれ。」


イメージがバラバラだ。現実に近いのはどれだろう。


魔法で物を動かせるのはぼくを含めて3人。これができる魔法使いは稀有だという。できる人とできない人の相違点は何だ。


「ちょっと外に来いよ。見せたいものがあるんだ。」


「何?縄で縛る気?」


「どうだろうな。」


レッシュは少し悪戯っぽい笑みを浮かべた。とりあえず考察を終わらせて外に出よう。


静寂に包まれた村。建物からはチラホラと明かりが漏れる。ぼくはレッシュに連れられて、人気のないところへ行く。


「また悪巧み?2年経ったって、ぼくの方が強いに決まってるじゃん。」


「まだ俺を信用してないのか?」


「冗談なのにー。」


空に浮かんだ星が映える暗闇。同じく空に浮かんだエニュールが2人の影を落とす。


"エスィフィトラデューフ(花火)"


「綺麗だね。ぼくの顔、練習したんだ。」


「……あの、うん。ノナックから花火が好きって聞いた。」


「へぇ……。そんなにぼくと仲良くなりたかったの?」


「……まあな。」


口を尖らせてそう言うと、ぼくから顔を背けた。


「しゃがんで。」


「何だ?」


そう言いながらも素直にしゃがんだ。


「ぼくのためにありがとう。」


頭を()でてあげる。レッシュは下を向いて少し肩を震わせている。どんな感情なんだろう。


「俺、外の人と関わったことなかったからさ。」


「ん?」


「エソペールとか周りの人は、俺が何かして叱ってはくることはあったけど、見放すことはなかった。外に出て初めて、他人に乱暴なことをしたりすると見放されるって分かった。シアがちゃんと言ってくれなかったら、誰も何も言わずに俺から離れて行ってたと思う。」


「よく分かりました。偉い偉い。」


そろそろ戻ろうと歩き出したが、1つやりたいことができてしまった。帰路で声をかける。


「ねえ、ちょっと付き合ってくれない?」


「あ、え?あの……、まだちょっと、早い、と思う。」


こんな勘違いある?キョドりすぎだよ。


「何考えてんの?やりたいことがあるから手伝えって言ってるの。」


「あ、なんだ。いいよ。何したいんだ?」


モジモジすんな、気色悪い。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ