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敬愛を受ける

「はい、皆さん。そろそろ時間になったのでここら辺で質問は終わりにしましょう。」


今日は授業がないので学校はこれで終わり。


さっきまでの質問責めがなかったかのように質問責めに質問責めを重ねられる。(さなが)ら転校生だ。


「ノナックとは知り合いだったの?」


「うん、広場でよく遊んでたんだ。」


少し遠まきに王子が眺めている。


「他に知り合いはいるの?」


「エリーとも友達だよ!あとは、おもら……」


王子が即座に手でぼくの口を蔽う。


「ちょっと、止めてよ。ここは学校なんだよ。そういうことしたいなら誰も居ないところにしてよ。」


「ち、違う!僕から説明しようと思って!僕がここに来たばかりのときに狩人の見学会があったんだ。シアのお父さんは狩人だから、そのときに家に泊めてもらって知り合いなんだ。ね?シア。」


「そんな必死に言わなくても。」


「ちょっと後で話があるから、終わったら俺のところに来てほしい。」


王子が耳打ちしてきた。


「変なことしないなら良いよ。」


そう言って首筋に息を吹きかけた。


「ふぁっ……!」


ほうほう、首筋は相変わらずと。


「シア、校庭で遊ぼ!」


質問責めが終わるとノナックが声をかけてきた。


「いいよー。その前にお母さん達に先帰っててって言ってくる。エリーとトゥロフも呼んどいて!」


校庭で遊ぶとは言ったけれど、この4人で集まるのは久しぶりだ。結局はお(しゃべ)りに興じる。他に遊んでた子は仲違(なかたが)いとかはしてないけれど、自然と一緒に遊ばなくなってしまった。


「本当に飛び級したのね。しかもインジェーニ。シアが凄いのは分かってたけど流石(さすが)に驚いたわ。」


「頭では負けてるかもしれねえけど、体は俺の方が大きいからな。」


「シア本当に頑張ったんだね。直ぐに僕たちも抜かされちゃうのかなぁ。」


「またみんなと近くなれて嬉しいな。もう飛び級はするつもりはないよ。これより上に行ったら知ってる人いなくなっちゃうもん。」


この4人は時々集まっていたけれど、数ヶ月に1回くらいの頻度だった。積もる話をして、ぼくも帰ることにした。……そういえば、王子のところに行かなきゃいけないんだった。どこに居るんだろう。


教室に戻ってみると、王子は1人で本を読んでいた。健気に待ってたのかよ。


「待たせてごめんね。縄はあるの?」


「だから違うって……。まずは久しぶり。来てくれてありがとう。元気そうで良かった。」


「そりゃ元気が有り余ってる歳だからねー。話ってなぁに?」


まぁ予想はつくけれども。


「2つお願いがある。俺、シアに色々言われてから、2年間いっぱい考えたんだ。何が悪かったか。どうやったら良くなるか。直せるところは直したつもりだ。だから……友達に……なってほしい。」


少し照れているのか気まずいのか、そんな表情をしながらぼくにそう告げた。


「学校で友達出来たんでしょ?」


「うん。みんな良くしてくれる……けど、俺に遠慮してるみたいだ。馴染めてないわけじゃない。それでも少し距離を感じる。」


「まぁそんなもんだよね。寂しい?」


「……少し。」


仲直りの握手のために手を差し出す。


「友達になろうって言って始めるものじゃないけど、君がぼくの言葉を受け止めて考えてくれたことに報いるよ。友達になろう、レッシュ。」


「ありがとう。」


そう言うと、おもらし改めレッシュはぼくの手をとった。(ひざまず)いてぼくの手の甲に口をつける。


「な、なに?」


「敬愛。外では見たことないから、王族とか貴族しかやらないかも。でも俺にはこれが1番しっくりくる。その歳でいろいろ考えられて、魔法の才能も高いシアを尊敬してる。」


やんごとなき際にあるものが庶民にこんなことして良いのかな。敬愛表現の偶然の一致にも驚いた。


「よし、これからもぼくを尊敬しろよ。」


「自分で言うな。」


「もう1つのお願いって?」


「それは多分もう気にしなくても良くなった。大丈夫だ。」


やっぱりそのことか。でも面白いから事ある毎に掘り返す予定。


「そう言えばレッシュも飛び級したんだね。」


「何かシアにレッシュって呼ばれると嬉しいな。そんな風に読んでくる人いないから。」


「気持ち悪いからおもらしに戻そーっと。」


「いや、そのままにしてくれ!」


「それで、何で4年生のインジェーニにいるの?」


「入学と同時に飛び級した。勉強頑張っただけだ。」


「ぼくがここに来ること予想してた?」


「入ったばっかりのときは知らなかった。ノナックがエリーをシアの誕生会に誘っているのを聞いて、2人がシアと知り合いだと知った。それで、シアはノナックと同じところに来たがってるって聞いた。それだけだ。」


「それで、わざわざ飛び級しないで残ったの?」


「いや、そういうわけじゃ……。」


「でもレッシュならもう1つくらい飛び級できたでしょ?」


「ま、まあ……。でも、シアと同じクラスになって友達になって魔法教えてもらったりする方が成長できると思ったんだ。」


「買い被りすぎだよ。ぼくはそんな出来た人間じゃないよ。」


「今日は家に泊まり来いよ。」


「急に話変えるね。」


否定も肯定もできず、上手い返答が思い浮かばなかったのだろう。


「あの時のお礼がしたい。」


「どっちの意味?仕返し?」


「んなわけあるか!その……、ニシアールもあるから。」


「何でぼくがニシアール好きなの知ってるの?こわーい。やっぱりストーカー?」


「今日自己紹介で言ってただろ!」


「あ、そっか。」


てっきりショタコンお姉さんことエマさんと同じかと思った。


「明日も学校だし、休みの前の日なら良いよ。」


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