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魔法における詠唱とイメージと距離の影響③

【注意】少し品のないことを言います。

解析ターンが続きます。苦手な方は最後の結論だけを理解してもらえれば問題ないです。

「変なこと言ってないで、早くこれ終わらせちゃわなきゃ。そろそろ寝る時間よ。」


お母さんが魔石を差し出す。


え?どういうこと?ぼくが冗談を言ってそれに乗った構図?


「『生まれ変わった大賢者』の話でしょ?それより、さっきの話は理解できたの?」


「できた。」


何?なんかそういう本があるの?それをぼくがどこかで読んだと思われてる?


「じゃあ手をかざして、電子を動かすイメージをしてみて。近づけすぎると感電するかもしれないから、少し手を離してね。」


この反応は多分転生者じゃないな。ぼくがここに来たってことは、他に転生者がいないと考える方が不自然だ。だから他にもいると思ったのだが、お母さんは違うようだ。


「シア、聞いてる?」


「あっ、うん……。」


魔石に手を(かざ)す。どんなイメージをしよう。魔粒子に物質性はあるけれど、原子ではないので、電子と原子核には分けられない。


これまでの経験上、光子との互換は容易いようだ。限りなく振動しない電磁波、最早(もはや)波ではなく静電場に近いものを当てよう。


魔石だけに影響を及ぼせるように範囲を調節し、周りに悪影響がないようにする。


"極超低周波"


「え?今何て言ったの?」


魔力を注ぎ込み続ける。あれ?ふらふらしてきた。魔力切れ?まだ色が変わっていないのに。予想外すぎる。


「シア!もう止めなさい!」


倒れ込みそうになってお母さんに支えられる。低血糖のような低カリウム血症のような症状に見舞われる。(あまつさ)え眠気もあるのだ。


「おや……すみ。」



朝起きると寝すぎたときのような怠さがあった。


「あ、シア起きた?体調は大丈夫?」


「大丈夫。ちょっと疲れた感じするだけ。」


「なら良かった。顔洗って歯磨いて、ご飯食べなさい。魔力回復にはご飯を食べるのが一番よ。もう8時だから早くね。」


寝すぎたようなというか、寝すぎていたのか。この世界は一日20時間。だから8時と言うと前の世界の10時くらいだな。


それにしても魔石1つも充電できずに昏倒(こんとう)するとは思わなかった。


魔力の変換効率が悪かったというよりは、魔石の静電容量が大きかったのだろう。あんなもので機械が動かせるのだろうか。コンデンサーだとしたら一気に電気が流れるだろうし、そんなことしたら機械がショートしそうだけれど。


[水の比熱は1cal。つまり、水1gを1℃上げるのに1cal、約4.2Jのエネルギーが必要だ。ぼくはコップの水を沸騰させても何ともなかった。コップの水が200 mLだとして、80℃上げたとしよう。そうするとぼくが水に与えたエネルギーは16000cal 、約67000Jだ。]


[対してコンデンサーの静電容量なんで極(わず)か。普通は1Jも溜められない。]


魔石の大きさはぼくの手と同じくらいだし、そんなに大きなものではない。比誘電率がかなり高いとしてもおかしすぎるぶっ壊れ性能だ。


そんなこともあるか。だってここは異世界だもん。


思考放棄して、また何かの機会があれば調べることにした。


次は純粋なイメージのみが魔法威力へ与える影響を調べよう。昨日と同じくらいの時間帯で実験を行うが、気温や日の当たり具合が全く同じとは限らない。環境の影響を最小限にするために、今の状態で沸騰した水と氷水を作って温度-ピーク波長曲線を作り直す。


測定結果の魔粒子の並んだグラフ達はそのまま空中に留めておけるのだが、ずっと維持しているのは大変だ。だから昨日の結果は紙にメモしておいてグラフは消した。


条件は昨日と同じ。さあ、始めよう!


マイクロ波を水に当てるイメージ。


魔粒子を直接水分子にぶち当てるイメージ。


焚火で加熱するイメージ。


熱々の鉄板でたこ焼きをひっくり返すイメージ。


池の鯉に餌を撒くイメージ。


ノナックに押し倒されて強引にされるイメージ。


……


上から56度、28度、3度、他は変化なし。あ、いや、ノナックのイメージだけはぼくの体、特に下の方が熱を持ったような感じがした。これはなんだ!?新しい自然現象か!?


ノナックのは一先ず置いておこう。後で研究のためにイメージを具現化してもらわねば。


まず、イメージだけの結果ではマイクロ波を当てるものが最も変換効率が良かった。次に水分子の熱振動を直接激しくするイメージ。焚火のイメージは塵芥のようなものだ。他のイメージはそもそも温めようとも何ともしてないので、何も起こらない。これはやる意味がなかったな。魔力がどこかへ飛んで行っただけだ。


上2つの差異が重要だ。


多分だけれども、なんとなく原因が浮かぶ。マイクロ波の方は魔粒子を先に光子に変えるイメージをしている。魔粒子と光子は互換性がありそうな感じがする。魔力をマイクロ波に変えた後は、知っている原理だけで水を加熱している。


魔粒子を水分子に直接当てて加熱する方は、魔粒子という仮定上のものを直接使ってしまっている。つまり、いまいち原理がピンときていない。


自信を持って結論づけることはできないが、暫定(ざんてい)的な答えを持っておこう。


詠唱内容に比べて、イメージは威力というか変換効率に大きな影響を与えるようだ。


ここまでの結果を(まと)めよう。魔力のエネルギー変換効率を高めるには、前詠唱ではなるべく細かく理解しやすい原理を声に出し、詠唱核で格好良い厨二(ちゅうに)心の(あふ)れた決め科白(ぜりふ)をレオール語で言う。前詠唱中は声に出していることを詳らかにイメージする。詠唱姿勢は手を(かざ)すのが良い。


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