MPはごっそりです。
『課長やりますね。私がメテオを覚えたときは100mで買いましたよ!それをタダで手にいれるとは…』
伊万里達のプレイしたMMOの世界では、魔法を覚える時は魔法書を購入していた。
初期魔法はNPCから購入ができる。
しかし、高レベルの魔法になると、ボスからドロップする魔法書がなければ覚えられなかった。
そして…、数が少ないうえにとても高価だった。
それを思えば、イメージで再現できてしまう美澄は、まさに儲けもんだ。
「異世界万歳だな!」
『これでレベル上げは問題なさそうですね!』
しかしステータス画面を確認すると、MPはごっそり持っていかれていた。
「効率が悪いな…」
『ファイアーボールとかならMP消費は少なそうですね』
「試してみるか…」
美澄は再び宙へ手をかざした。
どうやら彼の魔法のイメージは、それらしい。
『おぉ…、ぉぉぉ……、ああぁぁ…』
ボッ、ボッと空には無数の火の玉が現れ、勢い良く降り注いだ。
それは、樹々も草原も燃やし尽くし、辺り一面は見事に禿げた。
『課長…環境破壊は良くないですよ…』
「加減が下手なのか、上手くいかないな」
『うーん、あ、課長!』
「ん?」
『マッチの火をイメージしてみてください』
美澄は再び宙へ手をかざした。
すると、巨大な炎が浮き上がり、禿げ野原に追い討ちをかけ更に焦がせた。
『…』
「…」
『仕様、でしょうか?』
「わからん…」
伊万里は焼けてしまった大地へ、そっと手を当てた。
『焦げ焦げにしてしまって、ごめんなさい』
すると、砂美澄を復元させた時と同じように、手には淡い光がまとっていた。
禿げた大地は形をそのままに、ゆっくりと緑が生い茂った。
「凄いな…、これが女神の言っていた聖女の奇跡か?」
『上手くいって良かった。でも、MPごっそりです…』
レベル上げは振り出しに戻った。