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春巡る  作者: 伽倶夜咲良
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3. 北野神社

 北野神社は京急線を越えて反対側にある。


 国道15線の大きな道路沿いを真っ直ぐに進むと呑川(のみかわ)に掛かる夫婦橋の信号が見えてくる。

 その信号を右に曲がると呑川緑道の小道が真っ直ぐに続いている。

 道の両脇に咲き誇る白と赤のツツジ、新緑とのコントラストが鮮やかだ。


 呑川緑道に沿って夫婦橋親水公園が開けていて川から吹き込む風が気持ちよかった。時折少し強めの風が吹いて、着ていた膝下丈のワンピースの裾が少しはためくので軽く手で抑えることもあったが、何よりも風が気持ちいい。

 ここまで歩いて汗ばんでいる肌を撫でていく感じが心地良かった。


 ――なんだろう?この懐かしさみたいな感覚。郷愁っていうのかな、蒲田八幡神社から歩いていてずっと心の片隅で微かに感じているこの感じ。さっき見たアーケードの商店街のせいかな?うーん、それとは違うような……ノスタルジックなストーリーの小説を読んだ時のような感じ。蒲田に来るのは初めてのはずなんだけど……


 あれ?そういえばママが若いときに蒲田に住んでいたとか言ってたっけ?


 私の母は女優をやっていた。

 まあ、引退したわけではないのだけれど映画やテレビに出ることはほとんど無くなったし、今は一人田舎に移り住んで畑で野菜作ったりして、自由気ままに自然に囲まれた生活を満喫している。


 そんな母だが大学進学を口実にして女優を目指して東京に出てきて、そして初めて住んだのが蒲田だったらしい。かつて蒲田撮影所があった街、映画の街として賑わった街、そんな街で暮らすことに憧れていた少女時代。


 母は自分の昔のことを殆ど話さない。

「昔のこと考える時間があったらこれから先のこと考えてた方がよっぽど有意義でしょ!」そう公言して実際にそうやって生きてきたような人だ。だから蒲田で住んでいたという話も本人から聞いたわけではないかもしれない。たぶんどこかのインタビュー記事か何かで目にした話なのかも?


 十八で上京して蒲田に住んで、そこから大学に通い、劇団に入り、初めて映画に出たのは二十四歳、端役ではあったがそこから順調に仕事も増やして女優としての地位も落ち着き始めた三十一歳の時、私が生まれた。

 いわゆるできちゃった婚で入籍をしたが二年ばかりで離婚している。

 当時はそれなりにメディアでも取り沙汰されたらしい。


 離婚して思うところが何かあったのか、その頃まで住んでいた蒲田から引っ越しをした。

 だからかなりの年数をこの街蒲田で暮らしていたことになる。そういうことでは私も蒲田と少しは縁があるのだろうけど当時の私は二歳とか三歳ぐらいでその頃の記憶は全くなかった。初めて訪れた街だと思っていたのも当然のような気がする。


 それにしても今日はママのことをよく思い出す日だなあ。なんだろう一体……


 周りの景色を眺めながら少し進むと親水公園が終わるあたりで一段と道が細くなり鬱蒼とした緑の木々が道の上までせり出しているのが見えてきた。白い石の玉垣も見える。北野神社だ。


 天神橋のところまで来ると右手に北野神社入り口の階段があった。

 階段を下り鳥居をくぐると正面に拝殿がある。下り宮の造りが珍しい。


 菅原道真公をご祭神とする神社らしく『合格祈願』と大きく書かれた看板がある。

 拝殿でお参りを済ませてから、ここでも御朱印帳を左手で掲げて写真を何枚か撮らせて頂いた。

 北野神社の御朱印にはかわいらしい花が咲いた小枝がピンクの印で押されている。たぶん梅の花だろう。


 ここ北野神社は境内に咲く紅白の梅の花が美しいらしい。

 もう少し早い時期ならその風景が楽しめたのだろうと思うと少し残念な気もしたが仕方ない。

 見頃の季節に合わせてまた来てもいいし、蒲田八幡神社といい、北野神社といい、何度も訪れることになりそうだ。


 これから廻る予定の他の神社にもいろいろ見所があるかもしれないし、なんか更にワクワクしてきた。

 そんな思いに次に行く予定の女塚神社への気持ちも少し急いてきたが、まだちょっと早い!

 拝殿の左手には境内社のお稲荷様がある。そちらにもお参りをしなければ!




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