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8 テヘラン


アフマドが送ってくれた飛行場は小さかった。

国内線だけなので小さな飛行場。手荷物検査だけだ。待合室では待たずに、小さいエプロンを歩いてタラップまで行き、タラップを昇って小さい機内に入る。双発プロペラ機。

予定時刻前だが、乗客が全員入り、機体の準備もできていたようすで、コントロール側の許可も下りたのだろう。すぐに飛び立った。

飛行は数十分。飛び上がったと思ったら、すぐに着陸だ。

前の記憶があるから、実は飛行機もあまり好きではない。なのであの輸送機のときは特に嫌だった。

更に、プロペラ機は音がうるさい、、、



到着飛行場は、国内線なのでパスポートコントロールはない。

荷物を受け取って出口から出るだけ。

でも我々は機内持ち込みのボストンバッグだけなので、降機したらそのまま出口へ。



出口を出たら、身なりのいい品の良い男が声をかけてきた。

アフマドの依頼を受け、ホテルに案内するとのこと。


「アフマドに、どのように聞いている?」

と尋ねる

「ホテルの用意と、防衛隊のカシム司令へのアポイントメントをとるようにと。」

アフマドからの依頼というのは事実だろう。


「そうか、、よろしくお願いする」

男の名前はアブドラ。元防衛隊だという。今は「何でも屋ですかね」とのこと。

元傭兵でもこういうのはいたな、、良い者だとかなり出来る。だが、ピンからキリまでいる。

この彼はアフマドが使うだけあって、かなり良いのだろう。そうゆう雰囲気をまとっている。


昨日アフマドには、テヘランで宛があるのか?と聞かれたので、この手紙をみせていた。

見せたのは、宛名しか書かれていない手紙の表面だけだが、アフマドは即座に理解したようだ。

それだけでこの手配までしてくれるとは。


バスに乗り、30分もかからずにホテルに到着。

「あまり目立ちたくないようだ、とのことなので、内国人向けのホテルにしました。」

「ありがとう。助かる。事情が少々複雑でな、安全が確認されるまでここにいることを特定されたくない」


カシムとのアポイントは明日午前早くだという。

なので、部屋で茶を用意してもらい、少しアブドラと話をする。


感染の状況を聞いた。あまり芳しく無い様子。

この国や近隣各国では乗り物は乗り合いが一般的だ。そういう車が陸路で近隣から入ってくる。完全に停めるのは難しいと云う。東側はともかく、北の、アゼルバイジャンやアルメニアからだとのこと。


話してみることにした。

パリからココまでの経緯。

特に、輸送機がなぜアフガンに?


アブドラは

奴等はNATO軍に協力して少し兵を出していた。そしてなにより、アフガンから麻薬を持って帰る予定の飛行だったのだろう。奴等はイランにも麻薬を拡散している。

というようなことを言った。

イランにもアラブ系外国人は少なくない。そういった奴等がまぎれてやっているのだろう。


ただ、飛行中に外を確認しなかったことについては、失敗でしたね、と、暗に言われた。

「あと、重要なことですが、現時点であそこの輸送機だとC130あたりだと思うのですが、その航続距離、最も長くて6−7千キロほどです。なのでタイ国境までも届きません。アフガンまででも、積荷もあまりなかったのでは?」

は?たった6000? 確かに積荷は少しだけだった。


「貨物を積んだら国内移動しかできないじゃないか?!!」

「まぁそうですね。貨物満載だと半分しか飛べませんからね。」


俺の時代だと最大ペイロードの半分積載でも1万キロは飛べないと軍用輸送機扱いされなかった。国内のみ程度の航続距離しかないものは”短距離輸送機”と呼ばれていた。ペイロードの半分で1万キロを飛べないものはそう呼ばれた。

ないしろ国外になれば、その領空を迂回しなければならない国が多すぎた。

プロペラ機はなく全てジェットだったが、短距離離着陸機は基本だった。


あの頃は正規軍は無人戦に慣れ、ほぼ現場での実戦能力は無く、現場は傭兵に丸投げされていた。

だから傭兵の活躍の場は、小規模な作戦のみだった。世界至るところが現場だった。それが当たり前だった。


それらの、傭兵に丸投げした作戦は情報どころか作戦内容も曖昧なものばかりで、依頼側のほしい結果が提示されているだけだろう、というものばかりだった。よって、大まかな想定のみで現地にいってから、依頼の結果を得るために「さぁどうしよう?」と状況を確認しながら作戦を立てるのが当たり前だった。

 

なので「持ってきた装備でどうにかする」のが当たり前だった。だから困難もかなりあった。

そして、その現場まで傭兵を運ぶのは依頼主の責任だった。着陸場所がなくパラシュートで降りることも多々あり、民間用機体では使えない。だから民間向け機体並の航続距離は当たり前だったのだ。


俺がショックを受けた姿を気の毒に思ったのか、後は何も余計なことは言わず、アブドラは、明朝、朝食後あたりに迎えに来ると言った。俺一人でいいとのこと。パスポートだけ全員分用意しておいてくれと言われた。

飛行機を用意してもらえた場合はチケットのため、それができなくて待つしか無い場合も、滞在期限延長(ビザ延長)は必要になる。どちらにしてもパスポートは必要だ、ということだろう。



その晩は悔しくて眠れなかった。

俺の思い込みで、ここの世界の事実を確認しなかったのが、、

だが、あの時点で確認できるか?あんな場所、WiFi電波も無いだろう。

しかし、俺がここの今の常識的知識を持っていれば避けられた。最初からイランに緊急避難連絡し受け入れてもらえれば済んだのだ。イランからなら安全に日本に向かえただろう。

俺のイランの知識も元のものだが、幸いその知識と今ではほとんど変わりは無いようなのが助かった。


まぁ、今時点、我々は助かっているのだから、善しとするしかない。


くそっ!!

前のチームの時にこんな大ポカやらかしていたら、、

恐ろしくて考えたくもない。



ああ、だが、つまり、現時点の輸送機航続距離がその程度、ということは、各国軍が国外活動をしていない、少なくとも軍用輸送機でそれほど飛ぶような活動はしていない、ということか。

平和なのか、同盟国が多く使える国外軍事拠点が多いのか?

日本では海外の紛争状況のニュースはほとんどやらない。ネットで英語サイトを見ると、そこそこ目立ったが、特に気にしてみていたわけではなかった。

それほど記憶が戻っていたわけではなかったから。

パリのあの状況で急激に戻ってきたのだ。


何もなかったから、これでも仕方がなかった、と言える状況だが、もし一人でも欠けていたら任務失敗指揮官の烙印を自分に押していたろう。


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